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国の宝物 「国宝」の建物を見に行こう!

国宝の石上神宮拝殿
国宝 石上神宮拝殿

皆さんには「宝物」と呼べるものがありますか?もちろん、人や思い出など所有したり手に持つことが出来ない「宝物」もあると思いますが、特に「モノ」としての宝物を想像してみてください。もしあるとすると、それは例えば、大切な人にもらったものだったり、思い出の品だったり、頑張ったご褒美に自分で奮発して買ったアクセサリーや時計だったりするかもしれません。または、長い年月をかけて作り上げてきたもの、自分の「作品」とも呼べるものかもしれません。

いずれにしても、それは簡単にどこかで買ったりできるような、「すぐに手に入るものではない」のではないでしょうか。大事に保管しているか、飾っているか、日常的に身に着けているかなどの違いはあるかもしれませんが、とても大切にしていて、いつまでも持ち続けたいもの、場合によってはずっと後世に受け継いでいきたいものでもあるかと思います。

そうした「宝物」は当然、国にも存在します。

いわゆる「国宝」と呼ばれるものです。個人の宝物はそれがお金で買えるかどうかは別としても、個人的な思い入れの強い(だからこそかけがえのない)ものですが、国の宝物の場合は、ある程度以上の年月や高い技術、文化や学術的な観点での価値の高さ、歴史的なストーリーなどが重要となってきます。

法的に国宝指定のものを見てみると「類ない国民の宝として国が指定したもの」「重要文化財の一種であり、重要文化財の中から特に価値の高いものとして指定された建築物や工芸品、美術品など」となっており、やはり「国」としての「宝物」はそれ相応の、文化的、学術的な価値が高く、貴重なものであることがわかります。

羽黒山五重塔国宝 羽黒山五重塔

日本の国宝にはどんなものがあるの?

現在、日本国が国宝に指定しているものは、神社や寺院、住宅、城などの「建造物」、古墳壁画、仏教絵画、大和絵、絵巻物、水墨画、近世絵画などの「絵画」、木造や銅造の釈迦如来、阿弥陀如来、薬師如来、弥勒菩薩等の坐像・立像などの「彫刻」、陶磁、金工、漆工、染織、甲冑、刀剣などの「工芸品」、仏教経典や和書、漢籍などの「書跡・典籍」、文書や勅書、日記、目録などの「古文書」、土偶や金印などの「考古資料」、それに遣欧使節関係資料や伊能忠敬関係資料、琉球国王尚家関係資料といった「歴史資料」があり、その総数は数万点に及びます。

そのうち、「醍醐寺文書聖教 69,393点」や「島津家文書 15,133通」「称名寺聖教16,692点」といった一件で数千点~数万点を数えるものもある仏教関連書や文書類、資料関係を除いた(これらの一件あたりの数が多いものも当然各々が貴重なものですが)、絵画、彫刻、刀剣等は一点ものが多く、特に建造物はその大きさもあって、その存在が醸し出す雰囲気や重厚感などは特別感があり、規模の分だけ管理・維持・保存なども大変重要になってくるのです。

「国宝」に指定されているものの多くはそれを所有、または所蔵している神社仏閣や博物館、美術館などに行けば見られるものも多いですが、そうした場所に足を運んでも、保存や防犯などの観点から必ずしも本物が見られるとも限らず、特別展などで限られた期間だけ目にすることができたり、精巧な模写や模造品が展示されていたりします。一般的に博物館や美術館などは所蔵品の数が多く、所蔵しているからと全て展示しているというわけではないので、見たいと思っても中々目にすることができないものも数多くあるのです。国立博物館などで「国宝展」が開催されるとニュースにもなりますし、人が多く訪れ、大行列が出来るのを身をもって体験されてご存じの方も多いでしょう。

もちろん、そうしたいわゆる「モノ」の「国宝」は、特別展などでは一度に何点も目にすることができるのは素晴らしいことですし、開催される都市部であれば、わざわざ日本各地の本来の所蔵場所・所有者のある現地まで足を運ばなくても、比較的気軽に目にすることができるメリットもありますが、「建造物」の「国宝」は動かすことが出来ない以上、やはり現地に足を運んで鑑賞することになります。その分、手間暇とコストはかかりますが、大きさや存在感も相まって、国宝建築をじかに目で見たときの感動はやはり特別なものがあるのです。特に、お城や神社仏閣などの建物では、実際に中に入ったり、すぐ近くまで行かれる所もあり、国宝建築の中に抱かれているような感覚、内側からもその素晴らしさを体験できることは、とても崇高で至福な時間だったりするのです。数百年、時に1000年を超えるような建物の圧倒的な存在感と、その殆どが木造であるにも関わらず、幾多の天災や人災などの被害を免れ、よくぞこれだけの長い時間にわたり、ここに在り続けたものだ、という感嘆、感心。「それ」を造るために要したであろう費用もさることながら、建造当時の技術の高さに目を見張り、また当時の職人の想いであったり、完成後も長年に渡りその場所に住まい、そこで働き、修行をし、維持し、修繕し、守り、戦ってきたであろう数え切れぬほどの人たちの人生を想像するに、時に魂が打ち震えるほどの感動や興奮に包まれるのです。

というわけで今日は、実際にその場所に足を運んで見てみたい、日本の国宝建造物、国宝建築をご紹介しましょう。大前提として、国宝に指定されているほどの建物であれば、いずれも素晴らしいのは確かだと思いますが、(すべては直に目にしていないながらも)幾つも実際に見てきた経験から、おススメの場所を挙げてみます。

法隆寺

法隆寺

(国宝指定は法隆寺金堂、法隆寺五重塔、法隆寺中門、法隆寺廻廊 2棟、法隆寺経蔵、法隆寺鐘楼、法隆寺大講堂、法隆寺綱封蔵、法隆寺三経院及び西室(1棟)、法隆寺食堂、法隆寺聖霊院、法隆寺東室、法隆寺西円堂、法隆寺東大門、法隆寺東院鐘楼、法隆寺東院伝法堂、法隆寺東院夢殿)

修学旅行や団体旅行などで実際に行かれた方も多いであろう、法隆寺。まさに国宝と呼ぶにふさわしい建物群が点在しており、圧倒的な迫力と存在感を目の当たりにすることができます。修学旅行などで訪れた際には、グループでワイワイと見学するだけなので、ことさら「国宝」であることを意識して見学しなかった人も多いかもしれませんが、出来れば改めて一人か少人数で訪れて、ゆっくり滞在し、じっくりと堪能してみることをおススメします。法隆寺に限らずどこの国宝建築にも大抵当てはまりますが、解説を読んだり音声案内を聞いたりと、建物の詳細を理解し、細部を知ることももちろん大事ですが、「建物」ならではのおススメの体感方法・体験方法として、(他の人の邪魔にならない場所の)一か所にしばらく佇んで建物の「声」を聞くような気持ちで、じっくりと建物を見て感じるという方法。実際にそうされている方も多いと思いますが、歩きながらではなく立ち止まって静かに建物全体を眺め、「聞く」ことで感じられるものがあるのです。特に、築後数百年を経ているような木造の建物は、木の温もりや鼓動さえ感じられる気もして(あくまでそんな「気」がするという話しですが)、建物の素晴らしさをより深く身体全体で感じることができるような気がするのです。

東大寺

東大寺

(国宝指定は東大寺南大門、東大寺金堂(大仏殿)、東大寺鐘楼、東大寺転害門、東大寺二月堂、東大寺法華堂(三月堂)、東大寺開山堂、東大寺本坊経庫)

ここも修学旅行の一大訪問スポットではありますが、やはり修学旅行などの団体で訪れたときには気づかなかった素晴らしさに出会えるので一人または少人数で訪れるのがいいと思います。特に一人で訪れると、大仏の大きさに興奮して友達とはしゃいだ時間とはまた異なる、静かな興奮や感動の時間を過ごせる可能性が高まります。大きさと古さ(時間)、そして当時の高い技術という複数の興奮ポイントがあるのも東大寺をおすすめする理由です。

法隆寺などもそうですが、朝から開いているので、一番乗りを目指して訪れると、雑踏と喧騒から逃れることが出来て、建物の声をより身近に感じられるような気がしておススメです。特に冬の朝の、凛とした寒さの中、手がかじかみ凍えそうになりながらも建物と対峙すると、ひと際美しい光景を目にすることが出来たりもして素敵です。混雑している時には中々感じることのできない素晴らしさに気づくこともあります。

唐招提寺

唐招提寺

(国宝指定は金堂、唐招提寺講堂、唐招提寺経蔵、唐招提寺鼓楼、唐招提寺宝蔵)

中国の高僧である鑑真和上が日本にやってきて開いたお寺である唐招提寺。東大寺と同様、ユネスコの世界遺産にも登録されている国宝です。国宝指定されているのは金堂や講堂などがありますが、とくに南大門を入ってすぐ目に飛び込んでくる金堂の素晴らしさは印象的。天気の良い日であれば、青空と周囲の緑の木々とのコントラストが、より一層建物を素晴らしく見せてくれます。奈良時代に建立されて以来、1200年以上という歴史を持つこの建物(金堂)は現存する奈良時代の金堂(本堂・本尊を安置してあるお堂)としては唯一のものといい、その唯一無二の存在感は特別なものながら、さりとて近寄りがたいというわけでもなく、とても穏やかな気持ちさえ抱かされるような素敵な場所なのです。この唐招提寺が素晴らしいポイントの一つは、東大寺などの大人気スポットと比べると(訪れる日時にもよるかもしれませんが)比較的静かで落ち着いていること。静かに建物の素晴らしさをストレートに感じることができます。

松江城

松江城

(国宝指定は天守)

2015年に国宝指定された際には大きなニュースにもなった松江城。島根の名城であるこの城は、地元の人々の至宝であるとともに、いまや国の宝となりました。なんでも国宝に指定された城跡の天守は63年ぶりであったとか。日本には同じく国宝である姫路城や松本城をはじめとして、現存天守12天守などを含め、数多くの名城がありますが、その中で国宝指定されているのはわずかに5城。そのうちの一つとなったこの松江城は、宍道湖の東側、松江の町の中心部にそびえるお城です。「日本さくら名所100選」や「都市景観100選」にも選ばれている、松江を代表する観光地であり、元々「松江」といえばここというほどメジャーな観光スポットではありましたが、「建造物」として見たときにも貴重で素晴らしい、というお墨付きを得たことになります。天守に上がることもでき、その素晴らしい眺望は勿論ですが、内部の木材の、長い年月を経て艶々と輝く美しさを目と肌で堪能することができます。城好き、歴史好きならずとも、是非訪れてみたい城の一つです。

住吉神社

住吉神社

(国宝指定は本殿)

関門海峡から車で15分ほどの場所に位置する住吉神社は、創建仲哀天皇9年(西暦200年頃)と伝えられる古社。大阪の住吉大社、博多の住吉神社と共に「三大住吉神社」に数えられる神社であり、長門国の一宮です。室町時代の1370年(応安3年)に、南北朝時代の大名で周防や長門の守護であった大内弘世の命により建立されたという檜皮葺流造の本殿が国宝に指定されています。この本殿の建築様式は「九間社流造(きゅうけんしゃながれづくり)」と呼ばれる珍しいもの(※)で、楼門をくぐったその先、拝殿の後ろに見える、千鳥破風がいくつも並んだ流麗で瀟洒な本殿のその見た目は、とても目を引く印象的なものです。(※ 一般的によく見られる流造の神社は三間社流造。小さな社だと一間社流造も多い)

本殿の手前にある拝殿も室町時代の1539年(天文8年)に築かれたもので国の重要文化財、朱色の鮮やかな楼門や、唐門、透塀が登録有形文化財と、本殿以外にも境内に貴重な建築物が点在しており、神社としての素晴らしさはもちろん、建築的な観点からも是非訪れたい神社です。

旧閑谷学校

旧閑谷学校

(国宝指定は講堂)

岡山のひっそりとした山の中にあるこの素晴らしい建物は、かつて水戸藩主・徳川光圀、会津藩主・保科正之とならんで、名君とうたわれた備前岡山藩主・池田光政が作った庶民のための学校であった場所。豊かな自然の中に、静かに佇む幾つか古い建物の中でもやはり特に目を引く講堂は、江戸中期の1701年築といわれ、入母屋造、本瓦葺が特徴の建物です。特徴的な朱色がかった屋根瓦の美しさも目を引きますが、講堂内部の床の美しさも素晴らしく、外からの明かりが柔らかく入ってくる光景はとても素敵です。日本の観光地としては知名度で見ればまだまだメジャーな場所に入らないかもしれませんが、建物の素晴らしさや全体の雰囲気の素敵さとしては上位に入るであろう、おススメの場所です。

旧開智学校

旧開智学校

(国宝指定は旧開智学校校舎1棟)

長野県松本市の中心部にほど近い場所にある旧開智学校は、明治維新後、県最初(当時は筑摩県)の小学校として1873年(明治6年)に創立された学校。校舎は、近代の学校建築としては初の国宝指定を受けた建物となっています。

現在の建物は、廃寺となった寺の建物を転用した仮校舎の後、新校舎として1876年(明治9年)に現在とは別の場所に建てられたもので、当時としては斬新で珍しかった「擬洋風建築(西洋建築を学んだ大工の棟梁が設計施工した建築物で、日本建築と西洋建築が融合したもの)」の建物でした。松本生まれの大工棟梁・立石清重が東京や横浜の当時の最新の建物(開成学校、大蔵省など)を参考に設計、施工。建築費は約1万1千円(現在の貨幣価値でおよそ2~3億円)で、その半分以上を松本の人々の寄付によったといいます。教育熱の高いことで知られる長野県の中でも特に教育に力を入れることで知られる松本ならではのエピソードでしょう。1963年(昭和37年)3月までの約90年間に渡り、校舎として使用された後、現在の場所に移築されました。

全体の見た目は西洋風の建築でありながらも、細部に目を凝らすと随所に和風の文様が刻まれた彫刻があったり、漆喰塗りの外壁や唐破風屋根など、和と洋が不思議なバランスで見事に融合した建物は、とても興味深いだけでなく、独特の美しさを放っています。内部の見学もできるので、さらに細かく詳しく明治初期の建物を鑑賞・体感することができます。

まとめ

国宝に指定されている日本の建造物の中で特におススメの建物をご紹介しました。今回ご紹介した建物以外にも日本国内には彦根城、犬山城、銀閣、二条城、興福寺、仁和寺、延暦寺、宇治上神社、日吉大社、東照宮といった超メジャーどころから、あまりその名を知られていない所まで、200件以上もの国宝指定の建造物があります。

大変有名な所も多いので「今までそうと知らないうちにすでに訪れていた」という国宝建築もあるかもしれませんが、あらためて「国宝」という認識をしながらその場所に赴いてみると、また異なる発見があるかもしれません。

「国宝」に指定されている時点で、「権威が認めた、お墨付きの建物」であり、歴史的価値や学術的価値などはもちろん、様々な面で貴重な建物であることには違いありませんが、「価値」云々は別としても純粋に見た目も素晴らしく、細部においても見れば見るほどに心が込められているような細やかな意匠が見られる建物が多かったりと、一定以上の「感動クオリティ」を約束されたような建物が大部分であると思います。

人が一生の間に訪れることができる建物の数は限られていることを考えると、「国宝指定されている建物をコンプリートする旅」という旅のコンセプトも良いかもしれません。次の旅の目的地に悩んだら、ぜひ参考にしてみてくださいね。

Japan Web Magazine 編集部

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