富士と藤
公開日: 2013年5月14日 | 最終更新日 2015年7月22日
藤と富士
藤と富士。洒落のような奇跡のような組み合わせ。淡くて美しい色をした花々が雄大な富士山をバックに咲き誇っている。日本の固有種である藤の花は古(いにしえ)の時代から、その美しさを愛でられてきた。「古事記」や「万葉集」にも登場するなど、その美しさに魅了された詠み人たちの、沢山の歌に詠まれているのだ。花の美しさだけではなく、その垂れ下がった姿が実った稲穂=豊作を予感させるものとして、神聖な扱いもされていたのだという。また、その丈夫でしなやかな蔓は、様々な道具に用いられてきた。まさに、日本人の生活と共にある花。そんな藤の花と、日本の心といえる富士の山。やっぱり素敵な組み合わせだ。
雲はゆっくり流れていく。富士の高嶺に輝く雪が嘘のように辺りは暖かだ。太宰は富士には月見草が似合うと言ったが、いやいや、どうして。富士には藤の花もよく似合う。(静岡県富士宮市)