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犬吠埼灯台

犬吠埼灯台

犬吠埼の夜の風景

正直どこをどう通ってきたのかよくわからないのだ。ナビのない車で青看板を頼りにやって来た。港町に迷い込み、狭い道を抜け、右に曲がり左に曲がり、坂を下り、坂を上り、光を目指して走って走って、気がついたらそこにたどり着いていた。朧な夢の中にいる様な不思議な気分だ。

海岸に車を止めて、一休みしてから歩き出す。海風は冷たいが、防寒着のおかげで心地よい。時刻はちょうど夜中の0時を過ぎた頃だ。

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犬吠埼灯台
犬吠埼の月

海の方を見ると、夜空に小舟のような半月が浮かんでいた。風に流れる雲の間にぽっかりと浮かんで、周囲の雲と夜の海を柔らかく照らしている。

犬吠埼の夜の風景

そんな月を左に見ながら、光の方向目指して歩いていく。暗くて所々足元が良く見えない。水溜りを辛くもよける。転ばないように倒木をさけ、石をまたぎ注意深く進んでいくとやがて斜面にさしかかった。

犬吠埼の夜の風景

一歩一歩注意深く上り始める。道はくねりながら続いている。どこかで季節はずれの虫が鳴いている。下草が足に絡む。

ふと、風が止んだ。何とはなしに、それまで地面を注視していた視線をずらし、頭を上にあげた。

犬吠埼灯台

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見上げると、そこにはまるでお伽噺の世界のような清冷な世界が広がっていた。「アズールとアスマール」の天井が開く美しいシーンさながら、まさに夢のような光景が広がっていた。左側に立つ灯台がまばゆい光の道を作り出しながら、右側にある電波塔と対をなして屹立している。その背景には宝石を散りばめたような星空がある。澄んだ闇夜に銀の穴。思わず知らず息を呑む。清か(さやか)な鈴の音さえ聞こえそうだ。それは幻想的な異世界の中に迷い込んだみたいに透明で美しい情景。身体が星空に吸い込まれるような感じさえするほどに。夢と現(うつつ)を行き来する。

犬吠埼灯台
犬吠埼灯台

しばし呆然と立ち止まった後、我にかえって歩き始めた。滑りやすい斜面を一気に上り詰める。

上りきったその先には、36キロ先まで照らすという犬吠埼の灯台が雄々しい姿で立っていた。幻想的な空気から一転、そこには逞しく世界を照らす光の塔が在った。青空ならば、よく映えるであろう白亜のレンガの建物は、夜空にぼうと浮かび上がりながら、規則正しく世界を照らしていた。それは月の光と交差して、闇夜に光の粒を撒き散らす。

この犬吠埼の灯台が出来る前、この岬のそばで座礁事故が起きた。幕府の軍艦が暴風雨に遭い、岩礁に乗り上げて沈没、乗組員がなくなったのだ。その痛ましい事故もきっかけの一つとなって、この灯台が出来たのだという。

1874年に光を放ち始めて以来140年近くの間、どれほどの数の船がこの光を頼りに、航行してきたことか。どれだけの船を命を護ってきたことか。でも本人は、そんなことは意に介さずに、今夜ももくもくと仕事をしている。与えられた使命を全うする。今日も明日も明後日も、ただ闇夜を照らし続けるのだ。

犬吠埼灯台
犬吠崎の夜の風景
犬吠埼の夜

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千葉県銚子市の犬吠埼の突端に立ち、毎夜船の安全を見守り続ける犬吠埼灯台。灯塔(地上から塔頂まで)高31.3 m、煉瓦製の建造物としては尻屋埼灯台に次ぐ、日本第2位の高さを誇る灯台だ。イギリス人設計士リチャード・ヘンリー・ブラントンの設計、施工監督のもと1872年10月4日(明治5年9月2日)に着工、1874年(明治7年)11月15日に完成し初点灯された。太平洋を一望できる最上階へのらせん階段は近くの九十九里浜にちなんで99段に設計されたと言われている。日の出が有名。

犬吠埼

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Japan Web Magazine 編集部

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