大根寿司
公開日: 2013年3月22日 | 最終更新日 2022年10月30日
加賀の郷土の味
口の中に入れるとじんわりと沁み出るニシンの旨み。そこに糀の甘みと大根の甘み、シャキシャキっとした食感が絡まってくる。乳酸発酵の柔らかな酸味もやってくる。美味しいのみならず、身体にも優しそうな出で立ち。鮮やかな彩りも目を引く。そんな加賀の名物「大根寿し」は、加賀大根と身欠きにしんを糀で漬け込んだものだ。同じく加賀名物として知られる「かぶら寿司」と共に金沢の、そして北陸の郷土の味として伝えられてきた。かぶら寿司はかぶら(蕪)とブリを使用するのに対し、この大根寿司は、大根とニシンを使う。ニシンと言えば、北海道。北陸沿岸部はかつて北海道と大阪を結んだ北前船の往来で賑わった。まさに、この大根寿司は北前船の交易がもたらした伝統的な北陸の郷土料理なのだ。
大根寿司とかぶら寿司
一見、同じような見た目の大根寿司とかぶら寿司だが、使われる魚が違う他にも、大根寿司はかぶら寿司に比べ、熟成時間(漬け込み時間)に1週間~10日ほど差があるのも特徴だ。江戸時代にはブリを使って作られる「かぶら寿司」は身分の高い者の食べ物、保存性の高い身欠きにしんを使って作られるこの「大根寿司」は一般庶民の食べ物であったともいわれる。今も大根寿司の方がお値段もやや手頃で手に入りやすいが、どちらも同じように愛される、寒い季節の郷土の味だ。