長崎県長崎県の特産品・名産品

からすみ ~目くるめく究極の美味なる世界~

長崎の郷土料理・長崎ご当地グルメ からすみ

歴史を渡る素晴らしき肴

ところはスペインの南の町セビージャ。ある日、買い物に出かけるとスーパーの魚介加工品コーナーに見覚えあるものが売っているのを発見した。

手に取ってよく見るとそれは「からすみ」のようであった。

日本のからすみと比べると多少手頃な値段であったこともあり、早速購入、家に戻って食してみるとその味はまさしく日本のからすみそのものだった。塩加減や食感は多少違うものの、「うに」「このわた」と並び日本三大珍味にも数えられる「からすみ」がスペインにもある、これは少なからぬ驚きだった。

今や長崎の特産品として知られるこの酒飲み垂涎の食品は、その昔、遠くスペインから商人や宣教師と共に海を渡り、日本に伝えられたものなのだろうか。

「からすみ」とは

文献によれば、「からすみ」は安土桃山時代に中国(明)から伝えられたものであるという。彼の地では「鰆の卵」を使って作っていた「からすみ」は貿易商人を通して長崎に伝えられた。

創業以来330年の歴史を持つ「御鯔子(からすみ)」の製造販売の老舗「高野屋」の主、高野勇助が延宝3年(1675年)に長崎県の野母崎方面で捕れる鯔の卵を使って製造することを考案、それが好評を博し、次第に人々の間に広まっていく。それはいつしか、中国の墨(唐の墨)に形が似ている、ということで「からすみ」と呼ばれるようになった。(ちなみに、鰆の卵を使って作るからすみは今も香川県に伝えられている。)

ところで、中国伝来の「からすみ」もその元をたどると、余所から運ばれてきたものという。では、「からすみ」の原点、オリジンはどこなのであろうか。文献によると、古代フェニキア人が、初夏に取り出した魚卵を冬まで保存する方法として考え出したといわれ、古代ギリシアやエジプトで既に製造されていたという。冷蔵庫などもない時代、人々が食品、特に生の食品を保存する方法として考え出したのが、乾燥及び塩漬けであった。この「からすみ」もそんな当時の人々の、食品の保存作業の努力と工夫の中から生み出された食品なのだろう。

世界のからすみ

イタリア料理が好きで詳しい方ならご存知かも知れないが、イタリアにもボッタルガと呼ばれるからすみがあり、パスタなどに利用されている。その他、前述のスペイン、ポルトガル、フランス、ギリシャ等ヨーロッパの地中海沿岸諸国で製造され、パスタのほか、メッゼと呼ばれる軽食でパンやレモンなどと共に提供される。また、台湾などで製造されているものも知られる。使用される魚卵は地域によってさまざまで、ボラ、鰆のほか、マグロ、鱈の卵などが用いられる。

「からすみ」、この美味なる「魚卵加工品」は似たような姿と味で、世界の東と西に存在するのだ。日本、台湾、中国、そしてヨーロッパや中東にほぼ同じ様な食品がある、という事実は、古代から中世、そして現在に至るまでの東西の人々の交易と交流の歴史をまざまざと感じさせてくれるものではないだろうか。

日本の酒飲みが愛してやまないこの「素晴らしき肴」が、場所を変え、その形をかえ、世界の色々なところで食されているというのは、もちろん「魚卵の加工品」がいかに人々を惹きつけてやまないか、という証明でもあるが、それと同時に美味しい「食べ物」が、言葉も人種もイデオロギーも異なる世界の人々を、「舌」と「胃袋」をキーワードに結びつけることができる、という証明でもあるような気がするのだ。東西の「からすみ」が織りなす物語。古代から現代に至るまで、連綿と続く美味なるストーリー。それは、実に愉快で壮大で世界的な歴史ドラマにも思えてくるのだ。

からすみの製造

まず鯔(ボラ)の腹から卵を取り出し、丹念に洗い血抜きをしたあと、容器に並べて塩漬けにする。石のように固くなるまで塩漬けし、水分を抜く。真水に一昼夜ひたして塩抜きをしてから、板に並べてさらにその上に板を載せて加圧し、余分な水分を抜いた後、天日に干す。形を整えながら、時々押し、出てきた脂分を拭き取るという作業を繰り返す。状態を見ながら、10日間ほどの間、その作業を何度も繰り返し、手間隙をかけたからすみは完成する。

塩抜きの加減で、腐ったり、カビが生えたり、逆に塩辛くて食べられなくなったりと、塩梅が非常に難しいそうである。名人と呼ばれる作り手でさえ、常に満足のいく仕上がりとはいかないという。

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