いぶりがっこ

いぶりがっこ

漬物の燻製

雪深い山里の家で必須のものと言えば暖をとるための囲炉裏。今では囲炉裏のあるうちも少なくなってしまったが、この囲炉裏は暖かさのほかにも人々に様々な恩恵を与えてくれる。その火を使っての煮炊きは勿論だが、燃やした炭や薪から出る煙が家の柱を丈夫にし、吊るしたりして保存している食べ物に独特の香りをつけ、なおかつ保存期間まで延ばしてくれるのだ。これは煙に殺菌作用がある成分が含まれるからで、例えば意図的にこの殺菌作用と香りを利用する食べ物に燻製がある。燻製というと西洋発祥のイメージがあるが、日本にも昔かられっきとした燻製がある。鰹節がそうであり、このいぶりがっこもそうだ。

いぶりがっことは大根を囲炉裏のある場所に吊るしていぶって燻製にした後、糠漬けにしたもの。秋田の伝統的漬物だ。燻製にすることでつく香りがいぶりがっこを通常の糠漬けとは一線を画すものにする。ぽりぽりと噛むとふわりと鼻に抜けていく香ばしい薫香は、懐かしさを覚えさせる。その皺は、囲炉裏端で優しく微笑む翁(おきな)、嫗(おうな)の顔に刻まれた深い皺に似て、一朝一夕には出来上がらない、暖かくて味わいのあるものなのだ。

Japan Web Magazine 編集部

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