いぶりがっこ
公開日: 2010年1月12日 | 最終更新日 2023年10月8日
漬物の燻製
雪深い山里の家で必須のものと言えば暖をとるための「囲炉裏(いろり)」。今では囲炉裏のあるうちも少なくなってしまいましたが、この囲炉裏は暖かさのほかにも人々に様々な恩恵を与えてくれるのです。
その火を使っての煮炊きは勿論ですが、燃やした炭や薪から出る煙が家の柱を丈夫にし、梁などに吊るしたりして保存している食べ物に独特の香りをつけ、なおかつ保存期間まで延ばしてくれるのです。これは煙に殺菌作用がある成分が含まれるからで、例えば意図的にこの殺菌作用と香りを利用する食べ物に「燻製」があります。「燻製」というと西洋発祥のイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、日本にも昔かられっきとした燻製があるのです。例えば「鰹節」がそうであり、この「いぶりがっこ」もそう。
「いぶりがっこ」とは、大根を囲炉裏のある場所に吊るしていぶって燻製にした後、糠漬けにしたもの。秋田の伝統的漬物の一つであり秋田の郷土食です。燻製にすることでつく香りが「いぶりがっこ」を通常の糠漬けとは一線を画すものにするのです。
ぽりぽりと噛むとふわりと鼻に抜けていく香ばしい薫香は、懐かしさを覚えさせるもの。その皺は、囲炉裏端で優しく微笑む翁(おきな)、嫗(おうな)の顔に刻まれた深い皺に似て、一朝一夕には出来上がらない、暖かくて味わいのあるものなのです。