静岡の郷土料理

静岡の食べ物

所変われば食べ物変わる。黒いはんぺん?家康が愛した金で出来た食べ物?日本の食べ物シリーズ静岡編。江戸幕府を開いた徳川家康ゆかりの場所が数多く残る駿河、遠州。そして伊豆。静岡には今やB級グルメとして全国的な知名度を誇る富士宮やきそばを筆頭に、数多くの名産品や名物がある。日本一の山「富士山」と日本一深い湾「駿河湾」のある静岡県のグルメをお届けしよう。

富士宮やきそば

富士宮やきそば

色鮮やかな、しゃっきり歯ごたえのキャベツに葱、もやし。そして豚肉。それに少し固めの麺。それらが渾然一体となって、「夏の暑い日にビールにぴったり」くるような調和を作り出す。肉かすとダシ粉(削り粉)が入るのが富士宮焼きそばの特徴だ。ソース味のほかに塩味も。元々は、東京下町のもんじゃ焼きのように駄菓子屋さんの片隅で店のおばちゃんが作っていたものを子供達が好んで食べていた。次第に専門店も出来、特に90年代以降は県外からも多くの人が町に訪れる人気グルメとなる。そう、子供達だけのおやつにしておくのは勿体無い。こんなにもビールとあうのだから。

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生しらす

生しらす

透き通った身体はその味の純粋さと甘みを現す。口に頬張った瞬間に広がる大陸棚の風。すべらかなる食感は、あえかな罪悪感を軽々と乗り越えて、喉元に滑り込んでゆく。新鮮さ命。網からそのまま手づかみで海水の塩辛さもそのままに食する機会にめぐり合ったなら、そのすぐ後に味わうことが出来るであろうこれまた美味なる釜揚げとの甘みのカノンを堪能すべし。

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黒はんぺん

黒はんぺん

はんぺんというと一般的に静岡県外の人は白くてふわふわのおでんダネのはんぺんを思い浮かべるだろう。しかし、静岡ではんぺんといえばこれ。いわしを骨ごとすりつぶして作った黒いはんぺんは、白いはんぺんとの見た目のギャップもさることながら、その味の違いにも驚く。しっかりとした食感に青魚の旨みがぎゅっと閉じ込められた逸品だ。静岡おでんのほか、さっと焼いて生姜醤油をつけて食べると美味。

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たたみいわし

たたみいわし

直火でさっと炙るとぱちぱちっと小さな粒が弾けるような音がして、芳ばしい煙が辺りに立ち込めた。香りが脳のスイッチを入れる。転瞬、甘い海風が吹く。軽やかな潮の香は鼻腔を暫しくすぐって中空に消えてゆく。薄い煎餅のような食感は、ふくよかな官能を纏って、体の中に進入してくる。それは、ぱりりと砕け、そしてはらはらと浸潤してゆく。二秒逡巡しながらも、300の目玉は吸い込まれてゆく。声の無い叫びは、目くるめく落日に繋がっていた。恋は残り香こそ狂おしい。部屋に微かに残る炙り香は、首の周りにまとわりつくようにたゆたい、海馬を撫でて、そして消えていった。

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天日干し桜えび

天日干し桜えび

富士山を望む富士川の河川敷に広げられ、天の恵みを燦々とその身に浴びて、乾燥された桜えび。命の源である身体の水分はお天道様に吸い上げられても、全身に宿る旨みは依然としてそこにある。透き通る桜色は今や淡い朱色と変わったが、その味もまた淡く、しかし濃い、という一見矛盾を孕む様な複雑な旨みへと変化する。

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生桜えび

生桜えび

生命体が持つ成体になる直前の脆さと柔らかさと優しさととげとげしさ。そんなものを全身に内包して、この小さな命は深海からあがって来る。透明な身は赤色の色素とおよそ150以上と言われる発光体で桜色に染まる。美しさと旨みが一つの個体内で絡み合い、ゆるやかに弾け、そして融解する。

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鯵の開き

鯵の開き

沼津といえば「アジの干物」といわれるほどに、沼津のアジの干物は知名度も生産量も全国区。その生産は江戸時代に始まっている。豆腐の味噌汁や油揚げの煮たのと共に食膳にのぼっている様子がかの十返舎一九のある日の記録にも出てくる。

丁寧に切り開かれ、内臓を抜かれ塩水に浸けられた鯵が整然と天日の下に並んでいる。じわりその身に旨みを蓄えながら。

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法林寺の浜納豆

法林寺の浜納豆

一瞥するとチョコチップのようにも見えるそれは、一粒つまんで口の中に入れると確かに納豆である。正確に言うと、納豆の記憶を後ろ頭の左隅に少しだけ残した塩辛いこげ茶色の粒。味噌になりたかった納豆といった風情。これが実にあとを引く。一粒口に入れたが最期やめられない。そして酒がすすむ。痛風まっしぐらである。でも美味い。やめられない。とまらない。こうして酒飲みの夜は更けてゆく。時折ほのかな山椒の香りが鼻の奥に抜けてゆくのを感じながら。

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安倍川もち

安倍川もち

江戸時代、東海道の美味いもの名物番付においても上位に座していたという安倍川餅。その歴史は江戸の初期にさかのぼる。その頃、安倍川上流では金が産出しており、徳川家康はそれを幕府の御用金山に指定。大量の人足坑夫を用いて金を掘り出していた。そんなある日、安倍川上流まで検分にやって来た家康が茶店で休憩した折のこと。茶店の主が、搗き立ての餅にきな粉を砂糖と共にまぶして献上したところ、家康がこれをいたく気に入り、主を呼び出して、餅の製法を尋ねた。主はとっさに気転を利かせ、「安倍川の砂金を餅にまぶしまして御座います。名を金粉餅(きなこ餅)と申します。」と答えたという。家康は餅の味と主の気転に感心し、褒美を取らせ、「安倍川餅」と名づけ褒め称えたという。そんな伝承の残る安倍川餅は、当初は「きな粉」餅のみであったが、江戸中期には「あんこ」餅もお目見え、現在では抹茶をまぶしたものも。

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わさび

わさび

新鮮なワサビは摩り下ろして、そのまま食べられる。「サメ皮のわさびおろし」で、丁寧かつ適度なスピードで摩り下ろした鶯色の美しいワサビ。一点の曇りも無い辛味と共に、そこにはふくよかなまろみがあるのだ。清らかなる水の元でしか生育しない山葵(ワサビ)は、ある種ピュアの極みの様なその味で、今や日本のみならず、世界の人々の舌を刺激し、愉しませる。刺身や寿司はもちろん蕎麦、ウナギの白焼き、お茶漬けなどに無くてはならないこの和の辛味の現形は、清冽な流れの常に滞らぬ沢沿いの地にて、大切に栽培される。「純粋」は澱みでは生きては行かれぬのである。

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まだまだある魅惑の静岡の郷土料理・静岡の食べ物

静岡の郷土料理・静岡の郷土菓子

静岡おでん

静岡おでん

知る人ぞ知る静岡のご当地グルメであり、地元の人々には「しぞーかおでん」と愛着とともに呼ばれ親しまれているのが、「静岡おでん」だ。大正時代に静岡市内で生まれ、戦後の最盛期には青葉公園通りに200軒以上の屋台が連なったという。現在も、静岡駅から程近い青葉公園周辺の青葉おでん街青葉横丁を中心に70軒あまりのお店が立ち並び、連日酔客でにぎわっている。

「しぞーかおでん」の特徴は、一本一本おでんのタネが串に刺さっていること。そして、出汁の色の黒さだ。牛すじをメインに取ったダシを毎日継ぎ足し継ぎ足し使っていることによって、ダシに様々な旨みなどが溶け込んで色が黒くなる。定番のネタは魚を骨や皮ごとすりつぶして作る黒はんぺん。「すじ」と呼ばれる練りものも。皿に盛られたおでん、(駄菓子屋などではセルフで、好きなタネを自分で皿に盛る)に、青海苔、削り粉をふりかけ、味噌やカラシをつけていただくのが地元のスタイルだ。串を持って、好みのネタを口に運びながら、酒を飲み、静岡の楽しく夜は更けてゆく。

静岡おでん

ドウマンガニ(どうまん蟹)

浜名湖で捕れるドウマンガニ(ノコギリガザミ)はその希少さから「幻の蟹」とも呼ばれるカニ。上海ガニや毛ガニを彷彿とさせる濃厚な旨みとむっちりとした身、スイートコーンを思わせるような独特の香りと甘味がクセになる。国内では浜名湖の庄内湾ほか、高知県の浦戸湾(えがに・本がに・真がに)と沖縄県八重山諸島でのみ商業捕獲されている。

遠州焼き

一見普通のお好み焼きに見える遠州焼き。実際に地元では「お好み焼き」と呼ばれていたものだが、通常のお好み焼きとは少し違う。それは食べてみるとわかる。ひと切れ箸で持って口にほおばると、ソースや鰹節やネギ、紅しょうがの味と香りが広がる中に、パリポリっとした食感が入り交じっている。よく見ると断片に黄色いものが見え隠れしている。そう、たくあん漬けのみじん切りが入っているのだ。終戦後、物資が不足していた時代、浜松近郊の三方原特産の大根で漬けたたくあん漬けが比較的手に入りやすかったことから、そのたくあん漬けを細かく切って、昭和初期から各地で食べられていた一銭洋食(生地にネギを入れて焼いてソースを塗ったもの)に、一緒に混ぜて焼くようになったのが始まりという。お好み焼きの美味しさに、たくあん漬けの旨みと塩味、そして食感が加わった浜松のご当地グルメだ。

こす煮

こす煮とはマグロの卵を醤油や砂糖などを入れて煮つけたもの。ツブツブとした食感と濃いめの味わいは日本酒によくあう。この卵一粒一粒が全部成長したら海がマグロで埋まっちゃうかな、などと考えながらお酒を傾けるのも楽しい。

金山寺みそ(金山寺味噌)

金山寺こうじ

金山寺味噌

炒った大麦、米、そして大豆に麹菌をつけて発酵させた金山寺麹(金山寺こうじ)。その金山寺麹を使い、きゅうりや茄子、生姜などを漬け込み作るのが金山寺味噌だ。味噌といっても調理用の味噌というより、なめ味噌、おかず味噌で、そのままで、またはきゅうりなどにつけていただく。素朴ながらも奥深い、まさに自然の味わいそのままの美味しさ。昔から伝わる知恵と発酵食品の偉大さに感じ入る。

たまごふわふわ

江戸時代、袋井宿の本陣や脇本陣の朝食のお膳に出されていたというたまごふわふわは、その名のとおり「たまご」が「ふわふわ」した料理。もう少し正確にいうと、ふわふわに泡立てた卵を、熱した出汁の中に流し入れ、蓋をして蒸らしたものだ。海苔や青海苔を散らして供される。かつては袋井のみならず各地で食されており「仙台下向日記」や「東海道中膝栗毛」にも、この料理に触れた記述がある。とはいえ、一般の庶民の口に入るものではなく、もっぱら大名や豪商の食べ物であったという。幕末には、新撰組の近藤勇が好んで食べたという話も。その後、時代を経て一度は廃れてしまったものの、袋井市観光協会が町おこしの一環として、市内の飲食店主の協力のもと、江戸時代の料理本を参考に再現、現在、袋井の名物として注目されている。

山葵漬け(わさび漬け)

寿司や蕎麦には欠かせないわさびは静岡の特産品。そのわさびを酒粕に漬けて作られるのがわさび漬けだ。まったりとした酒粕の豊かな風味とピリリとした鮮烈なわさびの香味が融合した、まさに大人の味のひと品。そのままを少量、箸の先につけながら日本酒を煽れば、思わず「わさび万歳、酒飲み万歳」と叫びたくなる。カマボコとの相性もバッチリだ。駿府城にはわさび漬け発祥の地の碑がある。

つけナポリタン

つけナポリタンは富士市吉原地区発祥のご当地グルメ。トマトソースをベースに、鶏がらやブイヨン、コンソメなどが加えられたWスープに、パスタの麺をつけて、「つけ麺風」に食べるという、ありそうでなかったアイデアがヒット。もちろん、アイデアだけではない、この食べ方「ならでは」の美味しさで、うわさを聞きつけやってきた多くの人をひきつけている。現在では富士市の内外に50店を超えるつけナポリタンを提供する店がある。知名度、人気ともに上昇中のご当地グルメだ。

浜松餃子

浜松の地元っこに愛され、そして浜松を訪れる人々を虜にする浜松餃子は、宇都宮を抜いて餃子の消費量全国一位になったことでも有名な浜松のご当地グルメ。
そのルーツは昭和二十年代に遡る。戦後、浜松駅周辺には屋台で食べ物を出す店が多く出ていたが、その中で餃子を出す屋台があった。その美味しさが次第に評判になり、市民に広まっていったという。これが様々な形で伝えられ、今のような形になったのが、浜松餃子といわれている。現在浜松市内におよそ80軒もあるという浜松餃子を出す専門店。居酒屋などでも浜松餃子を提供しているので、それらをあわせると実に300店以上になるという人気ぶりなのだ。

浜松餃子の一番の特徴はなんといっても茹でたもやしがつけあわせとして皿に(もしく餃子の上に)添えられていること。この、餃子に茹でもやしを付けるようになった理由は諸説あるが、中でも信憑性が高いのが、かつての餃子の焼き方によるというもの。今のように専用の四角い餃子焼き器がない時代には、丸いフライパンで餃子を焼いていたが、フライパンの中にぐるっと円を描くようにして餃子を並べるとどうしても真ん中に隙間が出来てしまう。皿に盛ったときにそれでは見栄えが悪いので、茹でたもやしをサービスとして真ん中に添えたという訳だ。

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孫茶(なめろう茶漬け)

アジなどの魚を三枚におろし、シソや生姜、ネギなどと混ぜてたたいた「なめろう」に出汁をかけたもの。元々は漁師が船の上で作っていた料理だが、孫に食べさせたいほど美味しいので、この名が付いたとか。

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