階段国道
公開日: 2007年4月22日 | 最終更新日 2023年6月26日
車の通わぬ国道
上の写真、一体どこの風景だかおわかりになるでしょうか?
どこかのよく整備された山?大邸宅のお庭?
いえいえ、実はこれは歴とした日本の国道の写真なのです。その名も人呼んで「階段国道」。青森県の北の端にある「階段」にして「国道」なのです。
階段国道とは?
旅好きや日本の地理に詳しい人々の間では有名なこの「階段国道」は、青森県弘前市から東津軽郡外ヶ浜町に至る国道339号線上に在ります。地形やその他の理由で全通していない「分断国道」とよばれる国道は日本に何箇所も存在し、車や自動二輪の走行が事実上不能な区間はあちらこちらにあるのですが、国道として書類上では「全通」とありながら、その一部が階段になっていて車両走行が不能な国道は全国でもここだけです。
冬季はその雪の深さゆえに一部閉鎖されるという国道339号線。弘前から五所川原を抜け、十三湖を横目に見、さらに北上、海岸沿いに走り続け、雄乃湯温泉を過ぎ、七つ滝を通過したあたりから内陸部に入ります。傾斜のきついワインディングロード。背後に日本海を望みながら、さらに走り続けること数十分、ようやくたどり着くのが青森県の突端であり本州の北端でもある龍飛岬(竜飛岬)です。名曲「津軽海峡冬景色」の歌詞でもよく知られたこの北の岬、「階段国道」はまさにこの龍飛岬にあるのです。
国道なのに、階段である理由はいくつか説があるのですが、そのどれも確証はないといいます。一般的によく言われているのは、国道指定をする時に担当者が見ていた地図が詳細なものではなく、車両通行が不可であることに気がつかなかった、というもの。以前は急な坂道であったようですが、その頃にしても車両は通行できなかったようで、とにもかくにも国道でありながらも「車の通れない国道」となり、現在では日本で唯一の「階段国道」として観光客を集める存在になっている、というわけなのです。
傾斜はかなり急で、段数も360段余りと、階段としても中々の段数がある階段であるゆえに、一般的な観光客は階段上部にて記念写真を撮って去ってゆくケースが多いようです。階段上部から中ほどまでは緑に覆われて景観は特によくは無いのですが、途中から視界が開け、竜飛の港と日本海が見えてきます。緑のトンネルを抜けるとそこは広大な海。階段途中にも「国道339」の文字がかかれた青い標識がしっかりと設置されています。タイヤを再利用して作られたプランターも置いてあります。
曇り空の竜飛岬。
季節はずれだったのでしょうか、なにかのエアポケットのようなものだったのでしょうか、一時間ほどのんびりしていたのですが、観光客にも町の人にも出会うことがありませんでした。ただ一人、港の老翁を除いて。
その顔に深い皺の刻まれたその翁は、一人じっと海を眺めていました。
静かに佇んで、そうしていつまでもずっと海を眺めていました。
階段国道まとめ
青森県の二つの大きな半島のうちの一つ、西側の「津軽半島」の突端にある「階段国道」。この地へは、やはり「龍飛岬」の風景や「雰囲気」を主目的に来る人が多いようで、後日、観光の繁忙期に訪れた際にしばらく観察していたのですが、やはり景色を眺めたり灯台を見る人は多くとも、階段国道の看板を一瞥してもそのまま素通りする人も少なくありませんでした。確かに珍しいとはいえ、「国道」や「道」に関心のある人や、地理が大好きな人でもない限り、「階段国道」にそれほど興味はないのかもしれません。駐車場に車を止めて階段を下りたら、また車のところまで上っていかなくてはいけないというのもネックかもしれません。でも、少しでも旅程に時間の余裕があるのであれば、のんびりと階段を下りたり上ったりしてみて欲しいのです。
ただの階段と言ってしまえばそれまでなのですが、北の風や潮の香を浴びながら、のんびりゆっくり足を動かしていると、全身で龍飛岬の空気を感じることができるのです。その「空気感」こそが、旅の記憶を脳により深く定着させる気がします。美しい風景や北の地の風の音、空の色なんかが、体の奥の深いところにまで入ってきて、それがずっと浸透する気がするのです。特に一人旅でこの地を訪れる方にはおすすめです。色々なことに思いを巡らせながら階段を一段一段下りたり、上ったり。いつもの道、いつもの風景では出てこなかった想念、気持ち、感情、アイデア、ひらめき、インスピレーション、直観、そんなものがふと出てくるかもしれません。意外にもきっかけは、こういう所にあるのかもしれません。時間と気持ちと体力に余裕のある方は、ぜひ試してみてくださいね。
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階段国道(かいだんこくどう) DATA
- 場所:青森県東津軽郡外ヶ浜町字三厩龍浜字龍飛
- 交通(公共交通機関で): JR津軽線三厩駅から三厩地区循環バス龍飛埼灯台行きで30分、終点下車すぐ
- 交通(車で): 国道339号線五所川原より車で2時間20分
- 駐車場: あり
- 問い合わせ: 0174-31-1228
階段国道