桜のある風景

春, 桜, 美, 美しい, 美しい風景, 花のある風景, 風物詩 Japan Web Magazine 編集部

公開日: 2010年3月30日 | 最終更新日 2024年10月28日

桜降る桜色の世界

皆さんは、今年はもう花見には行かれただろうか。地域によっては、既に葉っぱが出始めてきたところも、まだまだ桜はこれからだよ、という所もあるだろう。仕事やその他の事情でそんな余裕もないよ、という方もいらっしゃるかもしれない。
桜の花の下で、気の置けない人たちとわいわいやっていると、はらはらと舞い落ちてきた桜の花びらが手に持ったコップ酒にふわりと浮かぶ。実にいいものです。

ところで、海外の人々が驚くものの一つに、日本のテレビの天気予報コーナーで流れる桜の開花予報があるという。春になると連日、様々な濃さの桜色に塗り分けられた日本列島の地図や、つぼみから満開状態に至るまでの様々な桜のマークが点在する地図が映し出され、天気予報士がにこやかに桜の開花予報とその北上の様子を伝える。日本人にとっては、梅雨前線の移動や、紅葉の南下情報などと同じく、それは毎年繰り返される季節の風物詩であり、至極当たり前のように目にしている光景だが、海外の人たちにとってはそれは驚きの光景であるという。日々、色やマークが変わっていく日本地図。さしはさまれる各地の桜の様子を映し出した映像。さながら、日本列島が徐々に桜色に染まっていくかのようで、美しくもびっくりするような光景であるらしい。「日本では毎年春になるとピンク色の地図が映し出される！」「なんと優雅で風流なのだろう！」と。

実際にその開花予報を見ている我々にとっては、それは、首を長くして待っていた「どんちゃん騒ぎ」の予定をたてるための情報の一つだったとしても、海外の人から見れば、「花の開花情報」を国中が毎年注目し、それが連日テレビで放映される、その事実は驚嘆することなのかもしれない。

そして、実際に桜の季節に日本を訪れた人々は、改めてその美しさに感動するという。そこかしこで繰り広げられる大宴会に初めは驚きつつも、桜の咲き乱れる光景に感動し、桜の花で、一つの文化が出来上がっている日本に驚く。もちろん、機会があれば、中に入って桜の花を楽しみ、宴会も楽しむ。人種も国籍も国のイデオロギーも関係ない。桜の花の下では、しばしの間、憂いは消える。様々なしがらみや、束縛も解け、悩みや苦しみも薄れ、笑顔が増える。

考えてみれば、桜の美しさに喜びを見出し、ときに人生の儚さを感じる。こんなにも優しくて、繊細で、温かな感覚はどこから生まれるのだろう。ご先祖様は一体どこで、そのような感覚を身に着けたのだろうか。もちろん、桜に限った話ではない。日本には、「自然」全般に美しさを見出し、感謝と共に称え、巧みに取り入れ、生活の一部とするような繊細で優雅で豊かな文化が沢山あるが、こと桜に関する愛と感覚、その深さには日本人でさえも驚くばかりだ。桜の花にまつわる豊かな文化、桜に対する日本人の無条件な愛。根底に流れる深い慈愛に満ちた感情。

そして、今では日本人のみならず、桜の季節に日本に滞在している海外の人々も時間と感覚の一部を共有する。素敵なことではないか。

一生懸命働き、がむしゃらに動き、時に何かに追われ、何かに焦がれ、迷い、惑い、立ち止まり、泣き、笑いしつつも、春のひと時ふと歩みを止めて、桜の木を見上げ、その美しさに感動する。散る花びらに、何をか思う。その感覚を持てうることに、四季があることに、今があることに。そして、勿論美味しい日本酒があること（！）に感謝しつつ。
「日本っていいなぁ」

皆さんの春のひと時が、素敵な素敵な時間になりますように。 JWMセレクション美しい日本の春の一ページ。「桜のある風景」をお届けします。