日本の料理に使用される主な具材一覧
公開日: 2008年7月24日 | 最終更新日 2022年10月12日
多彩なる日本料理・日本各地の食べ物
食習慣・食生活は時代と共に変化してきた。島国である日本固有の食材で作られ、食されてきた「和」の食に、外来の食習慣(食材)がそれぞれの時代に流入し、交じりあい、今の「日本の料理」がある。今や「日本食」の定義自体が広範に渡り、厳密に定義すること自体が難しい。
そもそも「言語」と並び「食」は常に変化するものであり、さらには地球規模で東西南北ありとあらゆる文化交流が行われている現代においては、「なになに食」という括り分け自体があまり意味をなさなくなってきているのかも知れない。「寿司」は「Sushi」として単語になり、最早「日本食」の枠を越えて、世界の人々に愛されている。日本発ではあっても、海外の人々にとっては、それは既に一つの(美味しい)食事であり、スタイルなのだ。認知度が高まれば高まるほど、「日本の」という看板は薄れ、使用食材や調理法にも様々なアレンジが施され(カリフォルニアロールなど)、変化して人々に浸透していく。
家庭においてもそれは顕著だ。海外のメディアには、「寿司」から見ると随分と変わった「Sushi」レシピが紹介・掲載されている。それらを見た・読んだ人々は、さらに各人なりのアレンジを加え、「Sushi」を作るだろう。それは日本食「寿司」ではなく、料理の一品である「Sushi」なのだ。
日本においても、そのような変化は普通に起きている。コロッケをいちいちフランスやオランダ伝来などと意識して食べないだろうし、「ラーメン」も伝来時とはその様相を随分と変え、味噌味塩味しょうゆ味とんこつ味、今や立派な日本食だ。
外来の食材・料理が新たに入っては消えてゆく。定着したものも、次第に「日本風」にアレンジされ、食材の原産地の料理とは多少なり異なるものに変わっていく。「料理」というのは生身の人間が食するものであり、それは当然の変化なのだろう。「アスパラガス」の天ぷらは取り立てて珍しくもなく、「セロリ」の糠漬けも普通に食される。
そのようなわけで、ここに列挙した食材の中には外来のものも多いが、日本の食習慣の多様性を示すためにも厳密な「日本固有」にこだわらず、料理として食材として「日本風」にアレンジされてきたものも含め列記してご紹介。
Contents
- 1 出汁・だし
- 1.1 日本の料理に使用される主なダシ
- 1.2 昆布
- 1.3 真昆布
- 1.4 利尻昆布
- 1.5 羅臼昆布
- 1.6 日高昆布(三石(みついし)昆布)
- 1.7 長昆布
- 1.8 細目昆布
- 1.9 厚葉昆布
- 1.10 がごめ昆布(ガゴメ昆布・籠目昆布)
- 1.11 ねこあし昆布
- 1.12 ややん昆布
- 1.13 くきなが昆布(茎なが・首なが昆布)
- 1.14 棹前昆布
- 1.15 根昆布
- 1.16 ちがいそ
- 1.17 爪昆布
- 1.18 鰹節
- 1.19 鰹節(荒節)
- 1.20 鰹節(裸節)
- 1.21 鰹節(枯節・本枯節)
- 1.22 宗田節(目近節)
- 1.23 宗田枯節(かび付け宗田節)
- 1.24 本節と亀節
- 1.25 春節・夏節・秋節
- 1.26 サバ節
- 1.27 サバ枯節(かび付けサバ節)
- 1.28 圧搾鯖節
- 1.29 まぐろ節
- 1.30 ムロ節(アジ節)
- 1.31 鮭節
- 1.32 いわし節(ウルメ節)
- 1.33 いわし節(かたくちいわし節)
- 1.34 いわし節(まいわし節)
- 1.35 煮干
- 1.36 焼き干
- 1.37 干し椎茸
- 1.38 干しエビ
- 1.39 鶏
- 1.40 豚
- 1.41 牛
- 1.42 山羊
- 1.43 すっぽん
- 1.44 貝類
- 1.45 干し貝柱
- 1.46 野菜類
- 1.47 魚のアラ
- 1.48 干しヒラメ
- 1.49 カニ・エビ類
- 1.50 きのこ類
- 1.51 六条豆腐(六浄豆腐)
- 1.52 大豆
- 2 魚介類
- 3 野菜・根菜・穀類・豆類・他
- 4 果物・木の実類
- 5 肉類
- 6 調味料・薬味・香味・彩
- 7 山菜類・きのこ類・昆虫類・爬虫類・両生類・その他
- 8 番外編 | 毒を含むもの
出汁・だし
日本料理の基礎となる出汁(ダシ)。本格的な懐石・会席料理から、一般家庭料理の煮物や鍋、味噌汁まで、様々な料理のベースとなる。料理の味を左右する重要なものだ。昆布と鰹節をメインにそのほかにも、料理によって、使用する具材によって、季節によって、地方によって、出汁をとるために使われるものは多岐に渡る。主なものを見てみよう。
日本の料理に使用される主なダシ
昆布
日本料理には欠かせない昆布。旨みの成分であるグルタミン酸を多く含む。一見同じように見える昆布も、産地と種類でいくつかに分けられる。それぞれに特徴があり、ダシの風味や香りも違い、地域により好まれる品種も変わる。生産量は北海道が最も多く90%を占める。かつて北前船で北海道から本州へと運ばれた昆布。その北前船が経由した土地に、昆布食が今も深く根付いているのは興味深い。例えば、富山は昆布の消費量が多く、昆布〆めやととろのおにぎりなど、昆布を使った品も多い。真昆布
昆布の王様とも呼べる高級品。道南地方~津軽海峡でとれる。肉厚で幅広。渡島半島の先端右部分、亀田半島周辺が真昆布の主産地で、半島東側の南茅部近辺で産する、切ると断面の白い昆布「白口浜」、半島先端からぐるりと西に回りこんだエリア(恵山町周辺)で産する「黒口浜」(切ると断面が黒い)が上品として知られる。特に南茅部の白口浜は江戸時代には松前藩が朝廷や幕府に献上した「献上昆布」でその品質の高さを窺い知る事が出来る。真昆布はそのほか、津軽海峡の本場折、それ以外の海域で取れる場違折などの銘柄に分けられる。真昆布の出汁はほんのりと甘みのあるのが特徴で、澄んだ上品な出汁がとれる。出汁昆布の他おぼろ昆布、とろろこんぶ、塩昆布などにも加工される。大阪でだし昆布といえばこの真昆布が多く用いられる。利尻昆布
利尻昆布は利尻島、礼文島、稚内近辺でとれる昆布。真昆布や羅臼昆布に比べるとやや細身で固めの黒褐色をしている。真昆布に次ぐ高級品で、やや塩味のある澄んだ上品な出汁がとれる。京懐石には欠かせない。利尻昆布の上物は殆ど京都に送られるという話もあるほどだ。羅臼昆布
正式名称を利尻系エナガ鬼昆布という羅臼で取れる昆布。鬼昆布、羅臼鬼昆布ともいう。茶褐色をしており、濃厚で旨みが深く香りの高い出汁がとれる昆布。出汁の色は少々黄みがかる。真昆布と同格の高級品。関東ではこの羅臼昆布を使うことが多い。日高昆布(三石(みついし)昆布)
繊維質が柔らかく早く煮えるので、昆布巻きや佃煮など昆布をそのまま食べる料理に適している昆布。一方、真昆布や羅臼昆布に比べるとダシは薄め。長昆布
釧路から根室沿岸部でとれる昆布。その名の通り、長いのが特徴で6メートル以上に生育。最大で15メートル以上にもなる。最も生産量の多い昆布だが、旨み成分が少ないため、出汁用よりも、昆布巻やおでんなど煮て食べる昆布として流通する。特に沖縄で食べられている昆布はこの長昆布が多い。細目昆布
留萌~松前にかけて生育する昆布。幅が細いのが特徴で、切り口が白く、主におぼろ昆布やとろろ昆布に加工される。厚葉昆布
釧路以東、厚岸、根室にかけて生育する昆布で葉が厚いのが特徴。正式名称はガッガラコンブ。昆布巻き等煮て食べるのに適している。その他、酢昆布、塩昆布、佃煮、粉末などに加工される。がごめ昆布(ガゴメ昆布・籠目昆布)
渡島半島南東部から室蘭にかけて生育する昆布でねばりが強いのが特徴。昆布の表面がでこぼこしており、かごの目のように見えることからガゴメ昆布と呼ばれるようになったといわれる。採取の際、真昆布と共にかかるのでかつては雑海藻扱いだったが、その粘りの効能が注目されて以来美容・健康食品としても人気を呼ぶ。がもめ、がもなどとも呼ばれる。ねこあし昆布
北海道の北東部から千島で採れる昆布で甘みがあって非常にねばりが強い。通常の昆布の10倍の粘りがある。とろろ昆布、おぼろ昆布に加工されることが多い。新しい葉が出来る際に昆布の付け根の部分に耳状の突起が出来ることから耳昆布とも呼ばれる。ややん昆布
室蘭港近辺、地球岬から絵鞆岬周辺の波の静かな水深1~3メートル程の所に好んで生える昆布。やや磯臭さが強く、主に加工用に出荷される。栄養分であるフコイダンやアルギン酸、ヨードを多く含む。くきなが昆布(茎なが・首なが昆布)
主に根室半島の沿岸部北向きの岩場や海岸で採れる昆布で、幅広肉薄でヒダが多いのが特徴。通称バフラコンブ(ばふら昆布)、おおあつば昆布。種類としては羅臼昆布と同種の鬼昆布で、生育年数及び採取時期によって、「くきなが(茎なが・首なが)」(2年目秋のもの)、「春茎なが(ばふら)」(3年もので7月中旬以前に採取されたもの)、「大厚葉」(3年もので7月中旬以降に採取されたもの)、「湾内折(オニ折)」(根室湾内で採取されたもの)と呼称が変わる。棹前昆布
通常の昆布漁が始まるより早い時期に採取する若昆布で、肉薄で柔らかく水で戻してそのまま刺身にしたりサラダにして食べることが出来る。根昆布
昆布の付け根の部分。昆布が成長していく上での起点となる部分なので栄養分が集中しており、よい出汁がとれるほか、薬などにも利用されている。ちがいそ
宮城から北海道太平洋側沿岸部に生えるコンブ目の海藻。エゾワカメ。爪昆布
とろろ昆布を作る際に残った両側の硬い部分。爪に似ていることからこう呼ばれる。出汁はそれほどでないが、煮込んでも煮崩れず、余分なぬめりや色が出にくいので、他の出汁の補助的に使用されることが多い。
鰹節
昆布と並び、日本の料理のダシを取るのに欠かせない鰹節。旨み成分イノシン酸を多く含む。鰹節は一般的にカツオの頭と内臓を取り除き(生切り)、籠立て、煮熟(しゃじゅく)、骨抜き(ほねぬき)、焙乾(ばいかん)、削り(けずり)、カビ付け等の工程を経て作られるが、一口に鰹節といっても呼び名は様々。製造方法やサイズ、獲れる季節、原料の種類、そして節の産地などによって、その呼び名が変わる。荒節、裸節、枯節、本節、亀節、本枯れ節、春節、秋節、宗田節、薩摩節、土佐節、焼津節、伊豆節などなど。削り節として使われる際の、削る厚さなどにも違いがある。うどんやソバのかけ汁や付け汁、おでんや煮物など、目的の料理によってまた地方によって、それぞれ使い分けられる。鰹節(荒節)
かつおの頭と内臓を取り除いて、60分~100分ほど煮た後、煙で何度もいぶして作る。水分量は20%ほど。燻されることで黒っぽく見えることから鬼節とも呼ばれる。荒々しくもコクがあって力強い香りのダシに。一般的に市販されている「花かつお」はこの荒節を削ったものが多い。鰹節(裸節)
燻される事で節の表面についたタール分を「削り包丁」や「グラインダー」を使って削り取り除いたもの。この作業はカビ付けをする前に行われる大事な作業で、防腐効果のある=カビが付き難い表面のタールを削ることでカビがつきやすくなる。その見た目から赤剥き(あかむき)や赤裸(あかはだか)とも呼ばれる。鰹節(枯節・本枯節)
荒節にさらに何度かカビ付けと天日干をし、水分をしっかりと抜いたもの。水分量は15%ほど。通常は100日以上、中には二年以上長期熟成したものも。この工程で魚くささといぶし臭が取れて、豊かな風味が加わる。上品でまろやかなダシがとれる。宗田節(目近節)
主にマルソウダ(丸宗田)を原料として作られる。ヒラソウダやスマソウダも使われるが、大半がマルソウダ。宗田節としては土佐清水産のものが有名。関西ではマルソウダを目近(メヂカ)と呼び、宗田節も目近節と呼ばれることも多い。マルソウダは血合いが多く、多少生臭みもあるので鮮魚としての食用にはあまり向かないが、節にする事で濃い味わいをもったものになる。じっくりと煮出すことによって、味、香り共にしっかりとしたコクのあるダシが取れる。関東では主にソバのダシにこの宗田節が使われる。宗田節にサバ節や鰹節をあわせ、それぞれの長所を引き出してダシを取ることが多い。取れる季節により、寒目近(1月~3月末)、ツユ目近(5月末~7月初旬の梅雨時期)、笹目近(9月~10月中旬・・・魚体が小型で笹の葉に似ていることから)、秋目近(11~12月中旬)とも呼ばれる。中でも脂の少ない笹目近と寒目近は重宝され、特に寒目近はその質・サイズ共に極上とされる。宗田枯節(かび付け宗田節)
宗田節にかび付けを行ったもの。本節と亀節
基本的に2.5kg(または3.5kg)を越えるカツオは「本節」に、それ以下のサイズのものは「亀節」となる。
「本節」は三枚におろした後、身をそれぞれ血合いの部分でさらに二つに分けたもの。一尾のカツオから四本の本節の鰹節が出来る。この際、背中にあたる部分を背節(または雄節)、腹にあたる部分を腹節(または雌節)と呼ぶ。背節(雄節)は腹節(雌節)に比べると、比較的脂肪分が少ない場合が多い。
「亀節」は三枚におろした身をそのまま使用して作る。一尾から二本の亀節が出来る。この亀の名の由来は、形が亀の甲羅の様に見えることからとか。春節・夏節・秋節
4~7月にかけてとれたカツオで作られるものを春節・夏節と呼び、8~10月に取れたカツオで作られるものを秋節と呼ぶ。脂肪分の少ない春のカツオは鰹節に最も適しており、天日干しの時期も~夏となるために上質の鰹節が出来る。一方、産卵を控えて脂ののった秋のカツオは春物に比べると質が落ちる傾向にある。
サバ節
脂の少ないゴマサバで作られる。春に獲れる春サバと秋に獲れる秋サバを使ったものがあり、春サバは小ぶりなのでうす削り用に、ダシも澄んだ物になる。一方秋サバは大ぶりで脂ものっており、香りが強くコクのあるダシがとれる。業務用のサバ節は節として出回ることはそれ程多くなく、大方が削り節として出荷される。サバ枯節(かび付けサバ節)
サバ節にカビ付けをし、「蒸し庫」と呼ばれる部屋にいれて熟成させる。独特の甘みを持ち、風味豊かでしっかりとしながらも品のあるダシがとれる。関東ではかけソバ用のダシに用いられる事も多い。圧搾鯖節
脂を搾り出して除去してから作った鯖節。フリカケや佃煮の原料にもなる。まぐろ節
主にキハダ(キハダマグロ)、特に幼魚キメジ(木目地)で作られる。メジ節、シビ節とも。上品でクセがなく、ほんのりと甘みのあるさっぱりとしたダシが取れる。節類の中ではもっとも生産量が少ない。ムロ節(アジ節)
ムロ節はムロアジで作られたもの。アジ節とも呼ばれる。ムロアジの頭と内臓を取り除いて一時間ほど煮たあと、骨を外し、燻して作る。熊本や鹿児島、八丈島などで生産される。サバ節と比較するとまろやかでさっぱりとしている。昔の江戸前のソバのダシに使われていたという。名古屋のきしめんはこのムロ節でダシを取ることが多い。鮭節
原料に鮭を用いて作られたもの。鮭独特の甘くてまろやかな強い旨みを持つ。いわし節(ウルメ節)
いわし節の中でも脂の少ないウルメイワシで作ったものは、比較的臭みやクセが少なく甘み香りが強い。関西のダシには欠かせない節の一つ。いわし節(かたくちいわし節)
カタクチイワシで作られるもの。イワシ節の中では最も多く出回っている。カタクチイワシ節でとったダシは黄色っぽい色をしている。いわし節(まいわし節)
ウルメいわしやカタクチいわしと比べ、ややあっさりとした味わいのダシがとれる。また、同じまいわしでも煮干でとったものに比べると魚くささが少なく、淡白な味わいのダシになる。煮干
カタクチイワシ、マイワシ、ウルメイワシなどを煮てから干したもの。関西以西では特にカタクチイワシで作られた煮干をイリコと呼ぶ。炒り子(いりこ)、ダシじゃこなどとも。讃岐の伊吹島産のものは最上級のイリコとして名高い。キビナゴ、コウナゴ、アジ、サバ、トビウオ(あご)などの魚で作られるものもある。焼き干
内臓を取り除き、素焼きにした魚を天日干しして乾燥させて作る。製造過程で湯に旨みがどうしても溶け出てしまう煮干と比べ、旨み成分をあまり逃さずに余分な脂分のみを取り除くことが出来、芳ばしい香りも加えられるのが特徴。トビウオ(あご)、ハゼ、イワシ等海水魚の他、鮎やイワナなども焼き干しにされる。出汁を取るほか、そのままほぐして食べたり、惣菜の具としたり、酒の風味付けに使ったりもする。干し椎茸
乾燥させることにより、旨み成分(グアニル酸)や香りが増したシイタケを水やぬるま湯で戻して出汁とする。古くから精進料理のダシとして重用されてきた。麺類や煮物などにも使われる。肉厚でかさが開ききっていないものがドンコ(冬菇)。戻す前に20分ほど日光に当てるとビタミンDが100倍近く増えるという。また、冷水で戻すほうが、旨み成分であるグアニル酸がより引き出されるという科学的な報告もあり。干しエビ
干しえびで取った出汁。瀬戸内、四国でそうめんの出汁にとして使われることが多い。あっさりとして品がありながらも旨みのある出汁。鶏
鶏ガラや鶏肉から取る出汁。キリタンポや水炊き、雑炊などに使われる。豚
豚肉で取る出汁。カツオの出汁などと共に沖縄ソバに使用される。牛
牛の骨や肉から取る出汁。それほど広く用いられないが、牛骨ラーメンや牛汁などがある。しゃぶしゃぶの〆に食べる雑炊やうどんも、昆布ダシ+牛の出汁だ。山羊
主に南西諸島、奄美大島や沖縄地方で食べられているヤギ汁(ヒージャ汁)に使われる。ヤギのガラ(肉をとった後の骨)や肉を煮出して出汁を取る。すっぽん
すっぽんの甲羅と骨で取る。主に、まる鍋(マル鍋)と呼ばれるスッポン鍋に使われる。貝類
アサリやシジミ、ハマグリ、ホッキ貝、つぶ貝などから取る出汁。味噌汁や吸物、炊き込みご飯、ラーメン等。干し貝柱
干したホタテの貝柱を水で戻して取る出汁。野菜類
野菜類で取る出汁。精進料理などに使われる。魚のアラ
魚の骨や頭をそのままで、もしくは素焼きしてから煮出して出汁を取る。潮汁や味噌汁などに、昆布出汁などと共に使用される。干しヒラメ
干したヒラメで取る出汁。濃厚で旨みの強い出汁が取れる。カニ・エビ類
毛蟹、ずわいガニ、タラバガニ、ワタリガニ、もずく蟹、伊勢えび等から取れる出汁。味噌汁や鍋物など。きのこ類
きのこから取れるダシ。ボリボリ(ナラタケ)、ホンシメジ、マイタケ、ナメタケ、シャカシメジ、ヌメリササタケ、アミタケ、クリフウセンタケ、ムラサキニセアブラシメジ、タモギタケ、チチタケなどなど。六条豆腐(六浄豆腐)
塩をふり乾燥させた豆腐。「精進節」と呼ばれ、薄切りにして吸物のダシとするなど、主に精進料理で使われる。大豆
大豆を煎ってから水出しして取る出汁。昆布やシイタケの出汁とあわせて精進料理に用いられる。
真昆布
鰹節
煮干
干しエビ
魚介類
四方を海に囲まれている日本。各地で様々な種類の魚介類が色々な形で食されている。生で、干して、焼いて、煮て、燻製にして。塩辛や漬物、酢の物。そして魚介を原料に作られる調味料まで。それぞれの素材の持ち味をいかした調理法、加工法、保存法。本物は時代を越え、世代を越え受け継がれてゆく。
日本の料理に使用される主な魚介類一覧
- アイゴ
- アイナメ
- アオサ
- アオノリ
- アオヤギ
- アオリイカ
- アオウオ
- アオブダイ
- アオメエソ
- アカマンボウ
- アカメ
- アカウオ
- アカグツ
- アカタチ
- アカナマダ
- アカハタ
- アカヒレ
- アカムツ
- アコウダイ
- アコヤガイ
- アサクサノリ
- アサリ
- 鯵
- 穴子
- アマゴ
- アマ鯛
- アメマス
- アジメドジョウ
- アシロ
- アデヤッコ
- アナハゼ
- アブラハヤ
- アブラヒガイ
- アブラボウズ
- アラ
- 鮎
- 鮑
- 鮟鱇
- イイダコ
- イカ
- いかなご
- イケカツオ
- イサザ
- イサキ
- イシガキダイ
- イシガレイ
- イシフエダイ
- イシダイ
- イシモチ
- イスズミ
- 伊勢海老
- イセゴイ
- イソギンポ
- イソマグロ
- イトウ
- イトヨ
- イトヨリダイ
- イボダイ
- イラ
- イワシ
- 岩魚
- 岩海苔
- ウグイ
- 鰻
- ウニ
- ウケクチウグイ
- ウスバハギ
- ウチワザメ
- ウツボ
- ウマヅラハギ
- ウミタナゴ
- ウミヒゴイ
- ウルメイワシ
- エソ
- エツ
- エボシダイ
- エボダイ
- オイカワ
- オオウナギ
- オオセ
- オオタナゴ
- オオニベ
- オキエソ
- オコゼ
- オショロコマ
- オヒョウ
- カサゴ
- ガザミ
- カジカ
- カジキ
- 牡蠣(カキ)
- カタクチイワシ
- 鰹
- カンパチ
- カマス
- 鰈
- カワハギ
- 川エビ
- 川海苔
- カワムツ
- キス
- キダイ
- 銀ダラ
- キントキダイ
- キンメダイ
- キンキダイ
- クエ
- クジラ
- クラゲ
- クルマエビ
- クロダイ
- クロムツ
- 毛蟹
- 鯉
- コチ
- コノシロ
- ゴリ
- ゴンズイ
- サクラエビ
- サクラダイ
- 鮭
- サザエ
- 鯖
- 鮫
- サヨリ
- 鰆
- 沢蟹
- 秋刀魚
- 芝エビ
- 蝦蛄
- 白魚
- シシャモ
- シジミ
- シロギス
- スガイ
- スクガラス(アイゴの稚魚)
- スケソウダラ
- スズキ
- スルメイカ
- ズワイガニ
- タカベ
- タコ
- タニシ
- タラ
- タラバガニ
- 螺貝
- ち鯛
- 天草
- 泥鰌
- 飛び魚
- トリガイ
- ナマコ
- ナマズ
- ニジマス
- ニシン
- のり(海苔)
- バカガイ
- ハゼ
- ハタハタ
- ハナサキガニ
- ハマグリ
- ハマチ
- ハモ
- ひじき
- ヒラマサ
- ヒラメ
- フカ
- ふじつぼ
- フグ
- フノリ
- 鰤
- 鮒
- ホウボウ
- ホタルイカ
- ホッキ貝
- ホッケ
- ホタテ貝
- ボラ
- ホヤ
- マグロ
- マス
- マダイ
- マダコ
- ミル貝
- ムツ
- ムツゴロウ
- メジナ
- メバル
- ムロアジ
- モズク
- ヤガラ
- ヤシガニ
- ヤツメウナギ
- ワカサギ
- ワカメ
- ワラスボ
野菜・根菜・穀類・豆類・他
季節を楽しみ色を楽しみ香りを楽しむ。四季のある日本ならではの色とりどりの野菜・山菜たち。環境の変化で手に入りにくくなってきたものもある一方、ハウス栽培などで季節を問わず年中手に入るようになったものもあるが、それでも季節をより感じることが出来る食材、それが野菜類ではないだろうか。今日では多種多様な野菜が八百屋やスーパーに並ぶが、現在日本料理に普通に用いられ、食卓にも日常的に並ぶ野菜類の中でも白菜やオクラなど明治維新や戦後に入ってきたものも少なくない。
日本の料理に使用される主な野菜・根菜・穀類・豆類一覧
(草本性のイチゴやスイカなども含む。)
- アシタバ
- アブラナ(菜の花)
- アスパラガス(江戸後期~明治初期)
- アワ
- 小豆
- 苺
- インゲン豆
- ウコン
- ウズラマメ
- エビイモ
- えんどう豆
- オカヒジキ
- オクラ
- 大麦
- カリフラワー(明治初期渡来、戦後普及)
- カラシナ
- カラシ
- カイワレ大根
- 蕪
- カボチャ
- キクイモ
- キクナ
- キビ
- キャベツ
- キュウリ
- キョウナ
- キンシウリ
- 葛
- 黒豆
- クワイ
- ケシ
- ゴボウ
- 胡麻
- 小松菜
- 米
- コンニャク芋
- 小麦
- ササゲ
- 桜(葉・花)
- サツマイモ
- 里芋
- さやえんどう
- シロ瓜
- シカクマメ
- ししとう(獅子唐辛子)
- シソ(大葉)
- 春菊
- ジャガイモ
- 食用菊
- ジュンサイ
- スイカ
- ずいき(里芋・ハスイモの葉柄)
- セリ
- セロリ(オランダミツバ)
(江戸渡来、戦後普及) - ソバ
- 空豆
- 大豆(枝豆・だだちゃ豆)
- 大根
- 筍(たけのこ)
- 高菜
- チシャ(レタス)
- タマネギ (江戸渡来、明治以後普及)
- チョロギ
- テンサイ
- トウモロコシ
- とんぶり(ホウキギの実)
- 冬瓜
- トマト(江戸~明治)
- 茄子
- ナタ豆
- 長芋
- ニガウリ(ゴーヤ)
- ニラ
- ニンジン
- ニンニク(明治以降普及)
- 野沢菜
- ネギ
- 白菜
- ハツカダイコン
- ハトムギ
- ピーマン(1950年代以降普及)
- ヘチマ
- ヒヨコマメ
- フキ
- フダンソウ
- ブナシメジ
- ブロッコリー(明治初期渡来、戦後普及)
- ホウレンソウ
- マクワウリ
- 万願寺とうがらし
- ミズナ
- ミツバ
- ミブナ
- 緑豆
- むかご (山芋のむかご)
- メロン(大正時代)
- モヤシ
- ユウガオ(干瓢)
- 山芋
- 百合根
- ヨモギ
- ラッキョウ
- 落花生
- 蓮根
- ワサビ
果物・木の実類
魚介などと比較すると労せずして獲れる果物や木の実は、古くから人々に食されてきたものの一つ。縄文時代には既に、椎の実を灰汁抜きをして餅のようなものを作っていたような痕跡もあるという。また砂糖がまだ一般的ではない時代、糖分として用いられたり(柿など)もしていた。また梅を始めとして、杏や桃など、その木々が観賞用に植えられるものも多く、その花が人々の目を楽しませ、そしてそれらが実を結ぶと食べられるといったような、一人二役的役目を担うものもある。
そのままは勿論、あるものは餅に、あるものは酒にもなる。現在の私達の食卓の彩(いろどり)として、欠かせない大切な食材だ。
日本の食卓を彩る主な果物・木の実類一覧
肉類
山間部の人々は昔から、野生のイノシシや鹿、熊などを食べてきたが、飛鳥時代以降、一般的に日本には肉類を食する習慣はそれ程なかったと言われている。一つには、海に囲まれている日本は海産物には恵まれているが、逆に動物を飼育する上で必要になる平野部が少なく、山がちな地形であることがあげられるだろう。また肉類摂食をよしとしない仏教の影響も大きいといわれる。特に、675年に天武天皇が「牛、馬、犬、鶏、猿」類の肉食禁止令を発令したこともあって、以後おおっぴらに肉類を食す習慣は一部の人々を除いてなかったといっていい。それでも、勿論山の人々は必要に迫られて食べていただろうし、禁忌にあまり囚われない人たちも、食べていただろう。
中世以降、ポルトガルやオランダなどから伝わり次第に広まった肉食もまだ一般的ではなく、「肉」は依然ごく限られた人々の口に入る食べ物であった。とはいえ、昔から山里の人々が食べていたものも、美味しければ次第に口伝に広まっていく。獣肉を「穢れたもの」としながらも、やはり人間美味しいものには目が無いのである。元々山間部の人々が食べていた鹿や猪などが、旅人などにより少しずつ広まっていき、表向きは「薬食い」などと言って誤魔化しながら、当時の食通たちはこっそり食べていたという。酒を「般若湯」などと呼ぶのと同じ類である。
江戸時代も中期に入ると、山くじら(注)と称してシシ肉を提供する店も現れ、次第に一般の人も口にするようになっていく。幕末から明治維新後、それまで食べる習慣のあまりなかった牛肉などが世間にひろまり、「スキヤキ」を始めとした「しゃぶしゃぶ」「テリヤキ」などなど、今や日本料理として世界に有名な肉料理が作り出されていくのである。
注:)おおっぴらに肉食を公言することを憚り、また鯨(肉食とされていなかった)と食感が似ていたところから、名づけられた。他にも皿に並べた様子が牡丹の花に似ているというので「牡丹鍋」とも(「牡丹に唐獅子 竹に虎」から来ているという説もある。)。いずれにしても粋な隠語だ。その他、現在も使われている隠語として、桜(馬肉、)もみじ(鹿肉)など。
日本の料理に使用される主な肉類一覧
調味料・薬味・香味・彩
出汁と共に料理を「日本料理」「和風料理」たらしめる上で重要な各種調味料。全国各地で様々なものが用いられる。また、醤油や味噌など、全国的に用いられる調味料でも、甘みが強かったり、淡白であったりと土地柄お国柄がある。それと共に風味を決める上で欠かせない香味薬味、そしてツマなどが、繊細な日本料理を演出する。
- 砂糖
- (黒砂糖)
- (和三盆糖)
- (三温糖)
- 塩
- 酢
- 醤油
- 酒
- 酒粕
- こうじ
- 麦(麹)
- 米(糀)
- 片栗粉
- 水飴
- 味噌
- みりん
- 魚醤
- しょっつる
- いしる・よしる
- いかなご醤油
- 蜂蜜
- アサツキ
- 山椒
- 木の芽
- シソ
- 蓼(たで)
- ミョウガ
- 生姜
山菜類・きのこ類・昆虫類・爬虫類・両生類・その他
食料が身の回りに溢れかえる今日では忘れられがちなことだが、ついぞ一昔前までは食べることは生きることであった。流通事情も悪く、保存技術も現在ほどよくなかった時代(冷蔵庫が家庭に普及したのは1950年代になってからである)、特に山間部の人々は身近なものを捕獲し、鍋や塩漬け、干物などにして食していた。獣類、山菜類は勿論のこと、茸類、昆虫類やそれらの卵も貴重な栄養源、たんぱく源であった。現在でも各地方に、先祖伝来の方法及びレシピとして、その地方独自の風習として、脈々と受け継がれている。マスコミなどで取り上げられて比較的知られているものもある一方で、地元の人々以外には馴染みの薄いものもあるが、先入観を抜きにして実際味わってみると美味なるものも多く、決していかもの食い、悪食ではないのがよく判る。夫婦間、親子間でも秘密の収穫場所を教えないという話も多々あり、その魅力の一端を窺い知ることが出来るだろう。地元の人々はそれぞれの収穫季節になるといさんで収穫場所に赴く。例えばクロスズメバチの巣探しなど、地域によってはそれが成人への通過儀式でもあるのだ。
- 山菜類
- ウド
- ウコギ
- ミズ
- カンゾウ
- コゴミ
- コシアブラ
- クサギ
- ゼンマイ
- たらの芽
- つくし
- ハマボウフウ
- ハンゴンソウ
- フキノトウ
- マタタビ
- モミジガサ(シドケ)
- ヤチブキ
- ワラビ
- ギョウジャニンニク
- ノビル
- キノコ類
- アミガサタケ
- アラゲキクラゲ
- アワビタケ
- アンズタケ
- イモタケ
- ウラベニホテイシメジ
- エノキタケ
- オニフスベ
- カンゾウタケ
- キクラゲ
- キシメジ
- キヌガサタケ
- クリタケ
- コノミタケ
- シイタケ
- シメジ
- ショウゲンジ
- ショウロ
- シロキクラゲ
- スギヒラタケ
- セイヨウショウロ
- セイヨウタマゴタケ
- タマキクラゲ
- タマゴタケ
- タモギタケ
- チチタケ
- ナメコ
- ナラタケ(ボリボリ)
- ヌメリイグチ
- ノボリリュウ
- ハエトリシメジ
- バカマツタケ
- ハタケシメジ
- ハナイグチ
- ハルシメジ
- ヒラタケ
- ブナシメジ
- ホンシメジ
- マイタケ
- マツタケ
- 昆虫類
- クロスズメバチ(蜂の子)
- イナゴ
- タガメ
- カイコガ
- ゲンゴロウ(金蛾虫)
- ボクトウガの幼虫
- カミキリムシの幼虫
(ごとうむし・とっこむし・鉄砲虫) - ブドウスカシバの幼虫
- ガムシ
- 柳の虫
- その他
- ウシガエル
- トド
- モクズガニ
- 沢蟹
- シオマネキ(ガン漬)
- ヤシガニ
- マムシ
- ハブ
- エラブウミヘビ(イラブー)
- スッポン
- ウミガメ
番外編 | 毒を含むもの
特に発酵食品など、先人達の試行錯誤の繰り返しとそれによって得られてきた智慧と知識の結晶には目を見張るものがあるが、そうして作られ食されてきた食品の原材料の中には、驚くべきことに猛毒であるものも含まれる。そのまま食べると、意識混濁または意識不明、果ては命を落とてしまうような毒性の高い素材を、一定の加工工程を経ることによって無毒化してしまうのだ。それがまた、好きな人々に取ってはやめられない味だというのである。例えば、猛毒のテングタケ。毎年のように犠牲者が出る毒性の高いキノコだが、信州菅平地方ではこのテングダケを一冬乾燥させ、毒性がなくなってから食べるという。それがまたすこぶる美味だというのだ。中には毒が完全に抜け切っていない、舌が麻痺して痺れるくらいのがいい、という猛者もいるという。
また石川県の輪島市、金沢市金石、大野、白山市美川地区では猛毒(注1)であるゴマフグの卵巣の糠漬けが生産されている。卵巣を塩漬けした後一年半~二年以上糠漬けにすることで、毒が消え美味しさのみが残るという。元は保存食品であったが、その癖のある旨みゆえ、現在では通好みの嗜好食品となって地元のみならず、全国にそのファンはいるという。
「美しい花には棘がある」。毒をもった美味なるもの。好きな人にとっては最早美味なる毒とさえいえるのかもしれない。そこにはいかんともしがたい、抗いがたい妖しい誘いがあるのだろうか。
毒性のあるものさえ、試行錯誤と勇気と経験と知識で美味なる食物に変えてしまう情熱。そのモチベーション。食べることは生きること。生きることは食べること。本来の目的は、いつのまにか別の衝動を伴って高みへとのぼっていく。地面に足の着いた爆発的で野生的な欲望は、熱い息遣いを依然持ちつつも官能に直結した素晴らしい芸術へと昇華する。ある時代には、食料が少なく、止むに止まれぬ理由もあったのだろう。しかし食の豊富な現代にあってなお、ごく一部の地域でとはいえ今も加工、生産され多くの人に愛され食されているということは、大げさに言えば「そこには多少危険を冒してでも食したくなる理由がある」からにほかならない。本人達でさえ気がつかない潜在的な綱渡り感覚、もしくはある種の背徳感が、それらを"より"美味なるものとして、認識受容し、愛させてしまうのかもしれない。脳の指令部のどこかで発せられた「これは元々毒があったものだ。」という示唆が注意信号として神経系に警乗されるその一方で、「その毒はすべて消え、今は素晴らしい旨味のみが残っている。」という自己確認が行われ、そのすぐ後ろにある甘美なる誘惑が、「美味界」という名の目くるめく世界への扉を開いてくれる。幽玄の世界へ連れて行ってくれる。ある瞬間に命をかけてでも、本能は奔走するのだ。「毒を食らわば皿まで」というのは自暴自棄的投げやりな諦めではなく、「皿まで」食べてしまうほどにその毒は美味なるものという意味なのかも知れぬ。絶佳の隣にはシウテクトリ(注2)が静かに微笑んでいる。万物は何らかの形で生と死を媒介しながら巡っている。熱を貰い、血を通わせ、気を受け継いでいく。個体は単体では存在することは出来ない。他者の存在ゆえに存在することが出来るのだ。いかなる生命体も何かを摂取して生きている。他者の命を受け継ぐということでもある。それは時に他者の生命を奪うということを意味する。「命」を頂くのだ。例え対象に毒があっても、無毒化してまで体内に取り込んでしまう。存在理由は行動原理になる。シンプルで原始的で高尚で崇高で野蛮な行為。「食」。まさに「生命」は「生命」を「食らう」。これぞ「食」の根源であり奥深さである。
注1:フグの毒は「テトロドトキシン」と呼ばれ青酸カリの約千倍とも言われる猛毒。体内に入れば呼吸困難を引き起こし、致死率も高い。またテングダケはイボテン酸という下痢や嘔吐、幻覚などの症状を引き起こす毒をもち、意識不明に至ることもある。いずれにしても、害なく食するには高度な専門的知識と技術が必要。それ以外は決して食べないこと。またきちんとした場所で製造され市販されているものは行政の安全基準をクリアしており、特に問題なく食することが出来る。
注2:アステカの火の神。死の中の生命を司る。巨大な火柱として描かれる。それは、ミクトラン(我々の下にある場所」=自然死したものが行く地下の世界)の炉から始まり、天界までの全宇宙を貫くという。