
大和シジミのふるさと「十三湖」
青森県北西部。本州の地も北の海におちこまんとする少し手前ほどに、津軽を流れる川が全て注ぎ込むといわれる十三湖という湖がある。太宰治をして「気品はあるがはかない湖」といわしめた自然豊かな美しい湖だ。
かつてこのあたりには十三湊と呼ばれる中世商業都市、貿易港があったという。その当時この一体は豪族安東氏によって支配されており、この安東氏は「安東水軍」と呼ばれる強力な水軍をもっていた。安東水軍はその力をバックに広い行動勢力範囲を持ち、交易範囲も北はアイヌから西は日本海を挟んで中国にまで及んだという。十三湊があったと言われる場所は、現在は小さな村があるのみでその繁栄の面影はないが、13~14世紀ごろには中国からの船なども沢山集まる国際的な都市であったことが十三湊の北岸にある山王坊の僧、弘智(1363年没)が書いたと伝えられる「十三往来」に記されている。それによると中国の長安にもまさるともおとらない規模であったようで、それがまんざら誇張ではないことが1991年から始まった発掘調査でも徐々に明らかになってきている。
少し時代は遡るが中世の東北と言えば奥州平泉の藤原氏が栄華を誇っていた時代。その藤原氏と十三湊の関連性なども注目されている。文献で証明はされていないが、付近には源義経にまつわる場所や言い伝えもある。今は静かに水をたたえる十三湖、東北の一大歴史ロマンの生き証人であるのかもしれない。
青森県津軽半島北西部の岩木川河口にある十三湖は海水と淡水が混じりあった汽水湖。西側が僅かに日本海と繋がっており、そこから海水が流れ込んでいる。周囲約30km、最大水深約1.5mの浅い湖。一部、葦などが勢いよく生え、寒い季節の曇り空の下では荒涼とした面持ちを見せるが、夏の青空の下で眺めると平和でとても穏やかな北の湖である。幻の鳥といわれる「オオセッカ」や天然記念物の「大鷲」などが観察できるほか、スズキ、チヌ等の釣り場でもあり、その季節ごとに釣り人たちが訪れる。遠浅の湖ゆえ、夏には遊泳する人々で賑わう。また宍道湖や小川原湖と並ぶしじみの名産地で、白神山地のブナ林を流れ出た水がはぐくんだ大ぶりの大和シジミが特産となっている。
湖のほとりには、特産のしじみを使った品を出す店がいくつかある。シジミご飯や、シジミ汁などとともに人気があるのがこのシジミラーメン。透き通った上品なスープに溶け込んだシジミの芳醇な香り。細めの縮れ麺がとてもよく合う。十三湖に出かけた際には是非味わいたい一品。
現在の日本史には殆ど顔をだすことのない幻の都「十三湊」。
この北の地にかつて、中央都市をも凌駕する規模の都市が存在した。北海道や中国をも巻き込んだ、日本海一大文化圏がここにあったのである。
現実には、文献も少なくその真偽の程はわからない部分が多いという。その規模や存在時期等も含め詳細は、発掘調査をもってしても解明確証されたわけではないのだが、それでも、多くの人々がこの十三湖を中心に暮らし、外国をも含めた各所と広く交易を行い、賑やかな中世都市を形成していたことを想像するだけでわくわくしてくるのである。
往時の繁栄はどこ吹く風と、湖は静かにその姿を見せている。
沖合いの杭が一本、ななめになってこちらを向いている。
その杭にあたった水がさざれ波となって湖面に美しい模様を作り出す。
それは静かに広がって、そして静かに消えていく。
人の栄枯盛衰など、まるで興味がないとでも言わんばかりに。
十三湖(じゅうさんこ) DATA
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十三湖
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