弘前城
公開日: 2010年3月29日 | 最終更新日 2019年3月15日
津軽の名城
別名「鷹岡城」(高岡城)と呼ばれる弘前城は、弘前藩主であった津軽氏が代々居城としてきた城だ。二代目藩主「津軽信枚」(のぶひら)が1611年に入城した頃には五層の立派な天守があったが、1627年(寛永4年)に落雷で焼失してしまう。一説には三層目にあった釣鐘が熱せられ、二層目の天井を突き破って落下、備蓄してあった火薬に火がついて大爆発を起こし、天守もろとも炎上焼失してしまったという。世は徳川時代、「武家諸法度」で新たな天守の建築は厳しく制限されており、それがゆえに天守の再建はならなかった。その後、1800年代に入り、北方から来航したロシア船に備え、幕府の許可を得た上で本丸にあった辰巳櫓を改築、三層三階式となった櫓を事実上天守の代用とした。1949年(昭和24年)に松前城の天守が焼失してしまったことにより、日本に現存する12の天守の中では最も北に位置する天守となる。三重の堀、五つの門、三つの櫓が残り、現在では「弘前公園」として管理される広大な敷地面積(約四十九万平方メートル)を誇る城内には様々な種類の木々が植えられ、花や月、楓、そして雪と四季折々の装いで訪れるものの目を楽しませる。特にソメイヨシノを中心に約50種2600本を数えるという桜は圧巻。「弘前城」は、かの司馬遼太郎をして「日本七名城の一つ」とまで言わしめた北の名城なのだ。
弘前城の桜の美しさの秘密
その美しさは日本一と言う人も少なくない弘前城の桜。満開の桜はどこで見ても美しいものだが、確かに弘前城の桜は特に美しいように思える。実は、それには秘密があるのだ。
弘前城の桜は、津軽藩士が正徳5年(1715年)、カスミザクラなど25本の苗木を京都から持ち込み城内に植えたのが始まりと言われる。明治維新の後、全国に吹き荒れた廃城の気運は弘前城にも及び、城内は廃れ、桜もまた心無い人々に伐採されたりしていた。それに心を痛めた元藩士を中心に1000本ものソメイヨシノが植えられたのが、明治15年(1882年)。大正5年(1916年)にはアーク燈による夜桜のライトアップも始まる。それから市民などの手によって次第に増えた桜は現在2600本を数えるまでになったのである。
ところで、桜はりんごと同じバラ科の植物だというのをご存知だろうか。そう、津軽といえば全国にその名が知れ渡るりんごの名産地。実はこのりんご栽培で培われた剪定技術こそが、弘前城の桜の美しさの秘密なのだ。
一般的に、「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」といわれ、桜の枝は切ってはいけないものとされてきた。これはソメイヨシノを始めとした桜が、病気に弱く、切り口から雑菌が入って弱ってしまうからとも言われる。ところが、りんご農家を営む者が多かった弘前城の桜の管理人たちは、ある時弱った桜の古木をりんごの木の剪定法を用いてばっさりと剪定してしまった。丸裸になってしまった桜だが、翌年には樹勢を取り戻し、より美しく花を咲かせて見事によみがえったという。以来、積極的に剪定を行い、さらにはより沢山の花芽が付くような方法を取った結果、現在見られるようなボリュームのある桜となったのだ。
一般的に3~4個と言われる桜の花芽が、弘前城の桜の花芽の場合は、5~7個とほぼ二倍。ゆえに、見た目にもこんもりとボリュームがあり、ゴージャスな様相を呈する。さらに花の重みで枝を垂れた桜は堀の水につかんばかりの樹形になり、それもまた美しい。りんごの木は手入れがしやすいように、そして日がまんべんなく良くあたるように、上部の枝を切り、横に枝が張るように低く樹形を作るように剪定を行うが、その剪定法が生かされた弘前城の桜も枝を横一杯に広げ、華やかな雰囲気を漲らせる。
棟方志功命名の「御滝桜」
まるで滝のように桜の花が堀に降る様子が美しい。
冬の弘前城
雪を纏った冬の弘前城もまた美しい。ゴールデンウィークのものすごい人出に比べて、ほとんど人の居ないひっそりとした城内は、華やかな美しさは無いながらも、凛とした静謐な美しさに占められている。ただし、建物内は見ることが出来ないので注意が必要。(弘前城天守閣(弘前城史料館)は11月24日より翌年3月31日まで閉館)
青森県の桜の名所・開花情報
青森県の桜の名所と開花情報。外部リンク。
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弘前城(ひろさきじょう) DATA
- 場所: 青森県弘前市下白銀町1
- 交通(電車で):JR奥羽本線弘前駅から弘南バス市役所方面行きで15分、市役所前下車すぐ
- 入城時間:9:00~17:00(閉門)
- 駐車場: 有り
- 期間: 4月上旬~11月下旬
- 休業日:期間中無休
- 料金:入場料 大人310円、小人100円・弘前城植物園との共通入場券 大人510円、小人160円
- クレジットカード: 利用不可
- 問い合わせ: 0172-33-8739
弘前城
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