夏の食べ物徳島県徳島県の特産品・名産品

スダチ

日本の香味

スダチ

上品で爽やかな香味

徳島県の特産物として、国内シェアの約96%を誇るのが、スダチ(酢橘・すだち)だ。知名度や流通量だけなら柚子の後塵を拝してしまうかもしれないが、高級料亭から一般家庭まで広く使われるその味や香りは柚子に勝るとも劣らないもの。スダチのその上品な酸味や清々しくも広がりのある独特の香りを愛する人も多い。

特に産地徳島では、柑橘系香味果実としては、柚子以上に身近な存在で、刺身を食べる時はわさび醤油ならぬスダチ醤油が当たり前という家庭もある。旬の時期には、食卓の真ん中に山盛り積んで、各自お好みで肉や魚、野菜、揚げ物にたっぷりと、なかには味噌汁にまでかけて食べるという話も。レモンのかわりに紅茶に入れたり、徳島の郷土料理「ぼうぜの姿寿司」を作る際には、酢飯にスダチを使ったりする。

ぼうぜの姿寿司

ぼうぜの姿寿司

呑兵衛のお父さんは焼酎を割るときにスダチを愛用。運動や散歩の後に、スダチの果汁を水や炭酸で割って飲んだりもする。県内のどこのスーパーでも豊富に売っていて、箱買いする人も少なくない、というように、スダチ愛好・愛用話の枚挙にいとまがない。それほどまでに身近で、愛されている香味果実、それがスダチなのだ。

というわけで、既にスダチを心から愛する人には勿論、今までスダチにはあまり縁がなかったという人にJWMがお送りする、魅惑の果実「スダチ」特集。魅力あふれるスダチの世界へご案内しよう。

スダチ

スダチとは

そもそもスダチとはなんだろう。子供の頃からスダチに接していた人や、よく和食を食べる人なら比較的親近感があると思うが、そうでない人にとっては、あまり身近でないのも事実。ポン酢などに入っていて知らぬ間に味わっていたとしても、直径3~4センチほどの緑色の果実を直接手にしたり、絞ったりしたことがない人も多いだろう。爽やかな柑橘系香味果実と言われれば、鍋や茶碗蒸しなどに欠かせない柚子の名を挙げる人の方が多いのではないだろうか。実際、出荷量で見てもスダチは柚子の3分の1程度なのだ。

とはいえ、実はスダチは柚子の近縁種。重さは3~40グラムほどで、柚子の半分から3分の1ほど。柚子のように、酸味が強いために果実をそのまま食するには向かない柑橘類を「香酸柑橘(こうさんかんきつ)(Citrus)」というが、スダチも香酸柑橘(Citrus sudachi)で、果皮や果汁が主に食材や料理の風味づけ、香りづけに使われる。熟すると黄色くなるが、緑のうちの方が風味が良く、黄色くなる前に収穫して利用する。ちなみにふぐ料理に欠かせないカボスも柚子の仲間でスダチと同じく緑色の時期に収穫される。

スダチ

スダチは、別名を「すたちばな(酢橘)」といい、それが変化してスダチと呼ばれるようになったといわれる。栽培が始まったのは江戸時代だ。

スダチを買う

スダチを購入するときは、しっかりとした緑の濃いものを選ぼう。果皮にハリとツヤがあり、傷や黒ずみがないものがいい。黄色がかってきているものは、熟してきているので、新鮮なスダチならではの生き生きとした爽やかな香りと酸味は少なくなってしまう。

スダチには露地物とハウスものがあり、露地物の方が比較的皮が厚く硬いものが多い。太陽光をたっぷりと浴びた露地物のスダチは、香りや味がハウスものと比べ強いものが多いが、皮が硬いので絞ったときに果汁が出にくいものも。一般的に、4月から8月頃まではハウスもの、8月中旬から9月下旬頃までは露地物、さらに翌3月までは露地物の長期保存されたものが出荷される。露地物とハウスもの、どちらが良いかは好みもあるが、旬の時期にはやはり露地物のすだちが値段もぐっとさがって求めやすくなる。

スダチ

しっかりと濃い緑色をしたスダチは糖度がまだ上がっていないので、フレッシュで爽やかな酸味と香りがある。

スダチ
スダチ

スダチ

都市部のスーパーなら高いものだと2個で150円~250円ほどすることもあるスダチも旬の時期に産地で買うとこんなに入って150円(場所や時期によって変動あり)。
新鮮な魚や野菜などの旬の食べ物に、旬のスダチを惜しげもなく何個も絞り、たっぷりとかけてスダチの香りと味を食材にまとわせて頂く、産地ならではの贅沢で豪快な食べ方も、地元スーパーや道の駅などでスダチを購入することで可能に。多少お高くなってしまうが、通販で買うことも出来る。

スダチの保存方法

そのまま冷蔵庫に入れておくと黄色くなってしまうスダチはプロでも長期の保存は容易ではないという。特に、上述の通り10月以降3月までのスダチは貯蔵物と呼ばれる8月後半から9月に収穫したものを専門農家が温度や酸素量を厳密に管理して貯蔵したもので、一般家庭に着いたあとの長期保存はほぼ無理。その時期に手に入れたものは、なるべく早いうちに使い切りたい。旬の時期に収穫された露地物なら、少数(5~6個)に小分けして、鮮度保持剤と共に袋にいれ密封、冷蔵庫で保管するといい。

スダチ

写真のように黄色がかってきているものは熟してきている証拠。買ったものがこうなってきたら、早いうちに使ってしまおう。

スダチを頂く

スダチを絞るときは横半分に切ること。そうすることにより、たっぷりと果汁を絞ることができる。スダチには種が多く、種は苦いので注意。

スダチ
スダチ

スダチは、サンマやちりめんに添えた大根おろしにぎゅと絞って醤油を垂らして頂くと最高に美味。焼き魚に直接絞ったり、刺身、肉、冷奴、焼きナス、ワカメにもよく合う。上品で爽やかな酸味が、素材の味をぐっと引き立ててくれるのだ。さらに、地元の人は漬物や納豆、味噌汁にかけたりもする。果汁だけではなく、すりおろした皮も薬味に。わさびと混ぜるといつもと違った風味が楽しめるだろう。また、レモンなどと同じように、焼酎に絞り入れるのも美味しい。スダチの果皮と果汁には、たっぷりのビタミンとカルシウム、カリウム、クエン酸が含まれるので、疲労回復や食欲増進にも効果がある。スダチの果汁を炭酸水などで割って摂取すると夏バテ予防にも。

スダチ

大根おろしと相性抜群のスダチ

スダチ

大根のなます

酢のかわりにスダチ果汁をたっぷり入れて作った大根のなます。角や刺のない、上品で香り高い一品。まろみのある風味、酸味が絶妙。

スダチ

醤油にスダチの果汁を絞り入れることで、簡単で美味しいポン酢を作ることができる。その日に使うポン酢をその日の分だけ新鮮なスダチの果汁で作る、シンプルながらも風味溢れる贅沢なポン酢だ。昆布や鰹節を混ぜ、一晩置くとさらに本格的で美味しいポン酢の出来上がり。

スダチ

Japan Web Magazineがおすすめするスダチの楽しみ方はなんといっても、素麺と共に頂く事。市販のめんつゆも、スダチを絞り入れるだけで、一気に爽やかさアップ、美味しさ倍増だ。もちろん、きちんと自分で出汁をとってめんつゆを作り、そこにスダチを絞れば、もういうことはない。その際、つけ汁ではなく、かけ汁として塩分を少し抑え目(飲めるくらい)にして、素麺にかけて頂くのがいい。美味しい出汁と共に、スダチの恵みも余すことなく飲み干すことができる。一度試したらやみつきになる味だ。

すだちの関連商品・すだち商品・すだち製品

徳島県内のスーパーや土産物店、道の駅、都市部にある徳島のアンテナショップ等ですだちを使った様々な商品、製品が売られている。すだちを使った焼酎「すだち酎」やすだちワイン、すだちのジャム、スダチドリンク、すだち調味料などなど、様々な形ですだちの魅力の片鱗に触れることができる。

すだち酎

すだち酎

ザ・すだち

すだち果汁の入った「ザ・すだち」

スダチサイダー

スダチサイダー

JAPAN WEB MAGAZINE Tomo Oi

浅草在住。ウニとホヤと山と日本酒をこよなく愛しています。落語好き。

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