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静岡おでん みよしの

静岡おでん みよしの

隠れた名店を探す旅3

車で走っていると改めて気がつくのだが、静岡県は横に広い。静岡県内に入ってから、流れている東名高速を一時間以上走っても、まだ静岡県内なのだ。そんな横に広い静岡県の東西のほぼ中央に位置するのが、静岡市。人口70万人以上を抱え、政令都市にも指定されている静岡県の県庁所在地だ。町の中央には、徳川幕府の祖、徳川家康が秀忠に家督を譲った後、江戸から身を引いて晩年を過ごした駿府城があり、1616年に家康がこの駿府城で没するまでの「大御所政治時代」、江戸と並ぶ政治経済の中心地として大いに栄えたという場所でもある。今も町のそこかしこに往時の痕跡が残る歴史のある街、それが静岡だ。

そんな静岡市は知らない人にとっては些か意外な「あるもの」で有名だ。それは「おでん」である。B級ご当地グルメの大会、「B-1グランプリ」の第二回大会でも堂々第三位に輝いているので、その存在をご存知の方も少なくないと思うが、それでもご存じない方にしてみれば、なぜ静岡でおでん?と思うかもしれない。逆に、静岡人にしてみれば、あまりに身近すぎてことさら意識した事がない、というのが静岡おでんだという。地元静岡では「静岡おでん」と書いて、「しぞーかおでん」と呼ぶ、静岡グルメの魅力を探りに、静岡駅からすぐそばの、おでんの店が連なる「青葉おでん街」の中ほどにある店「みよしの」に行ってみた。

しぞーかおでんの目くるめく世界

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心湧き胸躍る「飲み」の時間が始まる夕暮れ。「青葉おでん街入り口」

日も暮れ、飲み屋の明かりが灯り始める午後18時、青葉おでん横丁の入り口にたどり着いた。静岡駅から歩くと10分ほどだろうか。東海道(国道1号線)から昭和通に折れ、青葉通りを左折するとすぐだ。暗くなり始めた空と、緑地に黄色の文字で大書された「青葉おでん街」の文字、そしてゆれる赤提灯のコントラストが美しい。気分は弥が上にも盛り上がっていく。

間口一間ほどの飲み屋が二十軒ほど軒を連ねているその中ほどに、目指す「みよしの」があった。18時を少し過ぎたばかりだというのに、中は満員である。しばし待っていると、先に飲んでいた方が会計をして席をゆずってくださった。この後、新幹線で家に帰るのだという。恐縮しながら礼を述べ、入り口近くの椅子に座らせてもらう。カウンターのみの席数8ほどのこじんまりとした店内。手書きのメニューがいい味を出している。魚介の並んだガラスケースとおでん調理器。カウンターの中では、「にこやかで頑固そう」な大将が忙しそうに立ち働いている。背中側の壁には、一面大将と常連さんらしき人々の写真やポスターなどが無造作に貼られている。ガタピシとなるガラス戸の隙間から抜けていく夜風が気持ちいい。

沼津沼津沼津

美味しい店、雰囲気のいい店は口コミで客が新たに客を呼ぶ。この「みよしの」も、近くに住む常連は勿論、仕事や休みを利用して、静岡県内は元より、東京や横浜、名古屋などからも評判を聞きつけたお客さんがくるという。さらっと飲んで、さくっと帰る。これもまた居酒屋飲みの楽しみ。勿論、開店から閉店まで居座って、出入りするお客さんと次々にだべりながら、つらつらと飲む。これもまた居酒屋の楽しみ。両方違和感なく愉しめる雰囲気の店だ。

とりあえず、かけつけ一杯ビールをお願いし、おでんのタネをいくつかお願いする。ちゃきちゃきっとした大将が、気持ちよく応えてくれ、程なくして目の前にビールと共に、皿に盛られたおでんが出てきた。うわさには聞いていたが、やはり「黒」い!すぐ眼前のおでん調理器の中でぐつぐつ煮えるおでんが、店に入ってきた時にまず目に飛び込んできて、その色の濃さに驚いたが、目の前に皿に盛られて出てきたのをじっくりと見るにつけ、改めてその色の濃さに目を見張る。

真っ黒な大根を箸で一口大に切り、おそるおそる口に運ぶ。「!!」「うまい!」見た目ほどに味が濃いわけではなく、むしろさっぱり、しっかりと滲みこんだダシは素材の味を引き出して、まろやかで馥郁としている。創業以来25年継ぎ足してきたという特製味噌に、さらにダシ粉と呼ばれる、富士宮焼きそばにもかける例の粉末のダシの味が、おでんのダシと具材にさらに旨みを足して、えもいわれぬ世界を作り出す。濃さで押し通す味ではなく、色のわりには繊細なバランスの味だ。

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「黒はんぺん」

静岡おでんといえば、コレは定番「黒はんぺん」。一般的に白いと思われている「はんぺん」も静岡の、特に中部の人々にとっては黒いのが当たり前。駿河湾近海で獲れた鯖や鰺、鰯などを原料に作られる「はんぺん」はしっかりとした風味が持ち味。濃厚な魚の旨みと滋味たっぷりでウマイ!

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「牛すじ」

ダシを取るのにも使われる牛すじは、噛む程に味が出る。ビールにぴったり。

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「大根」

見よ!この色合い。大根の繊維が美しく浮き上がるほどにダシの滲みた大根は、ほろりと柔らかく、そしてたおやかに甘い。

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「ジャガイモ」

「みよしの」のおでんで是非試してみていただきたいネタがこのジャガイモ。今までのおでんのジャガイモの概念が覆されるような深みのある味わいはある意味衝撃的。

おでん以外の肴も味わう

大将や常連さんと四方山話をしながら、おでん以外の肴も注文する。コーナーになったカウンター席。右から左から話はクロスして、知らない客ともすぐ打ち解けてしまう雰囲気。不思議な一体感。といっても決して気持ちの悪いものではない。心地よい距離感のある一体感とでも言おうか。

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「つくね塩焼き」

鶏肉の旨みがじゅわーっとにじみ出てくるつくね。シンプルな味付けがまたいい。

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「アスパラ塩焼き」

カウンターの上の容器に入れられた立派なアスパラがさっと焼かれて出てくる。じんわり甘くてジューシー。

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「焼きレンコン」

      

お店の人気定番メニュー、「焼きレンコン」。レンコンの甘みと、ぴりっと甘辛のタレが絡み合って、今までに食べた事のないレンコンの風味をもたらしてくれる逸品。

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「和牛レバー刺」

      

新鮮つやつやな絶品、和牛レバー刺。臭みが全くなく、ぺろりと食べられてしまう。官能的な食感が口の中をくすぐりながら、旨みが喉を通り過ぎてゆく。

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九州出身の大将が、媚びず阿らず、しかし親しみと情たっぷりに客をあしらい、次々と肴を作りサーブする。まさに、これぞ飲み屋の親父!といった風情。常連に対しては時折べらんめぇ口調が混じりつつも、温かな人柄がにじみ出た風貌とそのしゃべり口に、初めは大人しかった一見の客も思わず相好を崩し、次第に店の雰囲気に打ち解けてゆく。その心地よさこそ、大将の人柄のなせる技。200人以上いるという、「みよしの」の常連さんで構成される後援会のようなものまであるというのも納得だ。

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「竹酔」

みよしのオリジナルの竹酒、「竹酔」。すっきりとしていて、飲みやすい。

しぞーかおでんの色の秘密

大正時代に生まれ、戦後の最盛期には青葉公園通りに200軒以上の屋台が連なったという「しぞーかおでん」。なぜこれほどまでに色が黒いのか?それは牛すじをメインにして取ったダシを毎日継ぎ足し継ぎ足し使っていることによって、ダシに様々な旨みなどが溶け込んで黒くなるから、だという。ただ単に、味が濃いから黒いわけではないのだ。ウナギや焼き鳥の一子相伝のタレの様に、継ぎ足し継ぎ足し大事に使われてきたダシには、一朝一夕では決して出す事のできない、深い深い旨みが閉じ込められている。ダシに溶け込んでいるのは、具材から染み出た成分旨みのみならず。人々の下を流れてきた長い長い時間。様々な人間模様、情や涙、思いや笑い、憂さや嘆き、喜びやときめき。そんなものだ。それを纏め上げるのが大将の度量と技。今夜も、小さくて大きな、ささやかで大切な時間がつらつらと流れていく。

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「青葉おでん街」の赤提灯。今夜も様々な思いが交錯する。

常連が幅を利かせていて、初めて入ると、どうも落ち着かない、そんな店も世の中には多い。新参者をまるで異邦人のように、値踏みする。そんな店もあるじや常連と仲良くなって、いつしか自分も常連になると案外居心地がよかったりするのだが、そうなる前に、居心地の悪さに辟易して、せっかくの旨い酒や肴にもかかわらず、二度と足が向かないなんて事も少なくない。しかし。初めて入って、入店後30分もすると居心地がよくなる「みよしの」。まるで、随分と昔から店に通っているような錯覚さえ覚えてしまう。こんな店が近所にあったら、一度足を運んだが最後、気がつけばいつのまにやら常連になる事間違いなし、そんな気にさせられる店だ。

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Japan Web Magazine 編集部

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