日本の食べ物

きってもぶたっ!

きってもぶたっ!

きってもきっても

不肖、この世に生を受けて幾星霜、風に吹かれ、波にもまれ、艱難辛苦を通過して、心は乙女のそれではない。当然、芋が煮えたのは知っているし、箸が転んでも可笑しくなんかない。黄色い声を上げることも、些細なことで初々しくトキメク事も最早ない・・・。

と、思っていました。が、しかし!!ああ、なんてキュートなんでしょう。それをスーパーの棚に発見した瞬間、思わず顔がほころんでしまった。ほかの客の手前、あくまで冷静を装っていた(つもり)が、それでもあまりの可愛さに、ニンマリにこにこ。即買決定。

そして。家に帰っていそいそと封を開けて、直接のご対面。

きってもぶたっ!

こんなん出ました。

「むー!可愛すぎる~~」ピンク色の鼻と耳。ぽってりとした顔に、茶色のつぶらな瞳。あぁ。可愛くて可愛くて悶え死ぬーー。

多分、その瞬間を傍から見たら、とっても怪しかったでしょう。三十を疾うの昔に過ぎたいい大人が、ブタさんの蒲鉾を手に持ってそのあまりの可愛さに身をよじらせている姿。

あやしすぎる。でも、実際にこの蒲鉾を前にしたら、きっとあなたもそうなります。ああ、今思い出しても可愛い。

さて、一通り身悶えたら、早速切ってみます。三枚ほど。縦に切れ目を入れ、板つきの蒲鉾なので、最後に板に沿って包丁を入れると、三匹の、いえいえ、三枚のブタさんの出来上がり。

それをお皿に置いてみます。

きってもぶたっ!

重ねてみたり。

きってもぶたっ!

並べてみたり。

食べ物で遊んではいけないと、子供の頃に怒られましたけど。三匹の、もとい三枚のこんな可愛いブタさんを前に、色々せずにおれましょうか。

正面から見ると、わかりませんが、下から見ると鼻の仕組みがちょっとわかったりして。でも理屈で分かっても、やっぱりすごいなぁ。きってもきってもブタさんなんです。実際、どうやって作るんだろう。可愛さへの興奮が、感心にかわります。伸ばしたところで初めて顔になるのを想定して作る金太郎飴の存在があるのだから、蒲鉾は意外と簡単なのかな。いやいや、鼻の位置や、目の位置がちょっとでもずれたら台無しだから、容易ではないに違いない・・・。などとつらつら考えながら、「こんな可愛い奴を食べれるかー」という気持ちを隅に追いやって、ひと切れ、パクっ。あら、美味しい。よい意味で普通の蒲鉾です。見た目の可愛らしさを追求したがばかりに、味が犠牲になっているということは全くなく。むしろ美味しい。暗闇で、わさび醤油にちょんとつけて食べたら、お父さんだって、「板わさはやっぱりうまいね。てへっ」なんてことになるに違いありません。

食欲って正直なものですね。お腹すいていたのもあって、ぺろりと平らげてしまいました。気分は、オオカミ。

でも、こんなキュートなのがお弁当に入っていたら、子供たちは大喜びですね。お弁当箱開けたら、正面にどんって入っていたり、隅の方にこそっと居たり。お弁当が楽しくなること間違いない。子供も大人も笑顔にするなんて、素晴らしい!

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Japan Web Magazine 編集部

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