
世は無常である。美しいものは殊更にその意を強くする。かつて秋田には平安期の歌人「能因」や「西行」が巡り、「松尾芭蕉」が「象潟や雨に西施がねぶの花」と詠んだ名勝・秋田象潟の「八十八潟」「九十九島」があった。1809年(文化6年)10月に刊行された「二十四輩順拝図絵 後篇 陸奥・出羽・下野」にも「日本を代表する景観」とまで記されたその象潟は、1804年に起きた大地震で土地が隆起し、島であった場所は小山となってしまったのである。現在では、水田にあたる夕日美しく、国の天然記念物にも指定されているが、芭蕉が愛でた当時の九十九と冠された、入り江に多くの小島が拝せられる風景はない。
さて、その西の象潟と並び称されたのが、現在も「天橋立」、「宮島」と共に日本三景として名高い「松島」である。大小実に250以上もの島々が湾内に浮かび、季節ごと、そして時間ごとに様々な装いを見せ、訪れた人々を楽しませる。かつて芭蕉が松島を訪れた際、あまりの絶景にいい句が浮かばず、「松島や ああ松島や 松島や」(実際は江戸中期の狂歌師の作とも言われる)と詠んだとまで伝えられるほどに、色々な形をした小島と波や風、そして太陽や月が一体となって織り成す風景はまことに美しい。特に月夜の晩に月光に照らし出されて浮かび上がる島々のシルエットと月明かりを受けて輝く静かなる海の光景は、言葉を失うほどに高貴で静謐な空気を湛え、氷水の上を滑り行くような透明な情を抱かせてくれる。
朝日を浴びて朱に染まる瑞巌寺五大堂。
東北地方とは言えども太平洋側の松島にはあまり雪は降らないが、たまの雪化粧でまたいつもとは違った趣をみせる。
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松島 (まつしま) DATA