白石温麺
公開日: 2012年2月11日 | 最終更新日 2019年6月4日
しろいしうーめん
東京から東北新幹線で約2時間、宮城県白石市は県の南部、蔵王連峰の麓に位置する人口約36,500人ほどの町だ。町の中心部をめぐるようにして沢端川が流れ、さらにそれを取り囲むようにして白石川が流れている。小原温泉、鎌先温泉といった温泉も湧く、風情のある穏やか町だ。
白石は、関東から東北へ至る街道の入口にあり、古代から交通の要衝であった。鎌倉時代から室町時代までは土地の豪族であった白石氏が治め、戦国時代には伊達氏の支配下に入る。その後、幾度かの変遷を経て、明治維新までの260余年間、片倉氏の城下町として栄えた。今も町には城(白石城)が聳え、武家屋敷(片倉家中武家屋敷旧小関家)や商家の蔵など、歴史の香り漂うスポットが点在する。
そんな白石市で江戸時代より生産され、今も地域を代表する伝統的名産品として知られているのが、白石温麺(しろいしうーめん)だ。かつては、白石の特産品であった白石和紙、白石葛とあわせ「白石三白(しろいしさんぱく)」と呼ばれ、もてはやされた。このうち、現在、白石葛の生産はすたれ、白石和紙は、市内の工房・白石和紙工房の一箇所にて生産されるのみとなってしまったが、白石温麺は、現在もよく生産され、市内、近隣の人々のみならず、その存在を知る多くの人に親しまれている麺なのだ。
とはいえ、素麺ほどの生産量があるわけでもなく、食べられる場所、手に入れられる場所もまだ限定的なので、白石温麺をご存知ない方も多いだろう。
ということで、今回は白石の郷土グルメ「白石温麺」をご紹介しよう。
Contents
親孝行のさっぱり麺
白石温麺を知らない方は、その名前だけを見てもどんなものなのかイメージがわかないかもしれない。「温麺」というくらいだから、温かい麺なのかなと推測するだろう。音的に、中華っぽいものなのかなと思われるかもしれない。しかし、結論から述べると、白石温麺は一言でいってしまえば「素麺」なのだ。よって、温麺というその名に反して、冷たくして素麺のように食べることも出来るし、素麺の「にゅう麺」のように、温かい出汁と共に食べることも出来る。
では一般的な素麺と何が違うのか。それはその製法とサイズにある。まず、白石温麺はその製麺工程において素麺のように油を使用しない。一般的に、素麺は生地を伸ばして麺にする際に、乾燥を防ぐために油を塗る。生地に「より」をかけながら綿実油などの食用油(小麦粉やでん粉の場合もある)を塗って丁寧に伸ばしていくのだが、この白石温麺は生地を伸ばす際に一切油を使用しない。その為、湯掻いて食すときに、さっぱりと頂くことができる。さらに、約9~10cmというそのサイズも特徴的だ。一般的な素麺の半分ほどの長さで、茹でる際も絡まないので茹でやすく、さらに茹で上がった麺はツヤとコシがありながらも、さらりと上品で食べやすい麺となるのである。
そんな白石温麺は、今から400年ほど前に生まれた。時は元禄の頃、白石城下に大畑屋の鈴木浅右衛門という人がいた。彼の父親は胃を病み、数日間も絶食をしなくてはいけないような病状に苦しんでいた。そんな折、浅右衛門は一人の旅の僧に出会う。そして、その旅の僧から「油を使用しないで作る麺」の話を聞き、苦心の末、その「麺」を完成させたのだった。彼は早速その麺を温かい食事として父に食べさせた。すると、油を使用しないので消化に良く滋養もあった事から、父の症状はみるみるうちによくなり、ほどなくして快癒したのだという。人々は、浅右衛門の温かい孝行心のこもったこの麺を「温麺」と呼ぶようになったのだそうな。浅右衛門は城下にその製法を広めると共に、名を味右衛門と改め、温麺製造を生業としたという。
白石では、蔵王連峰に源を発する白石川の豊かな水を利用した水車の石臼で挽く粉屋が発達、さらに温麺の主たる原料の小麦が豊富で、気候も温和で乾燥していたことが、温麺製造が定着し、また広まった理由だ。この豊かで美しい環境が、上質の麺を生み出し、それは今に至るまで続いているのだ。
白石温麺の味
白石温麺は白石市内にある専門店で頂くことができる。製麺所が営業する店や、本格的な割烹料理店など、市内には白石温麺を食べさせる店が何軒もある。中華風の味付けの店もあるので、白石市を訪れた際には、何軒か食べ歩くのもオススメ。さっぱり上品な麺と醤油や味噌などで味付けされた出汁がマッチして、いつも食べている素麺とは一味も二味も違った味わいだ。白石市内の温麺を食べられる店を探すなら白石観光協会のHP(外部リンク)が便利。
また、大きめのスーパーなら乾麺のコーナーに置いてある場合もあるので、ご家庭でも手軽に楽しむことができる。
一把100g。手に取ると一把の量としては少なめに感じるが、太さがかなりあるので茹でると結構な量(一人前に丁度いい量)になる。
通常の乾麺の半分ほどの長さなので、取り扱いやすいのも特徴。茹でやすく、食べやすい。たっぷりの沸騰したお湯(一把に対して1リットル強)にパラパラといれる。
麺が太めなため、ゆで時間は3~4分程と一般的な素麺よりは長め。短いので絡みにくい。
温麺は、上述のようにその名前から受けるイメージとは違い、「温かいかけ温麺」「冷たいざる温麺」と、温かくしても冷たくしても美味しくいただける。その他、お吸い物や炒め物、サラダなどアイデア次第、お好み次第で様々な料理に活用可能だ。