美味しいものはやっぱり「旬」の時期に!こんなご時世だからこそ「旬」のものを味わおう!「山菜」編
公開日: 2021年4月27日 | 最終更新日 2022年10月24日
好きなものが好きな時に手に入るようになった現代。食べ物に関しても、流通・運搬・販売網の充実、ハウス栽培や水耕栽培など栽培方法の進化の恩恵、冷凍・フリーズドライなどの加工・保存技術の開発と発展、もちろんそれらに携わっている沢山の人々のおかげもあり、魚介類や肉類、野菜類、果物類、キノコ類などに至るまで、私達は実に様々な物を「季節を問わず」手に入れ、食べることができます。しかしそんな便利さの一方で、食べ物の「旬」「季節」が分かりにくくなっているのも事実。いつでも手に入る手軽さ、便利さは「旬の食べ物のありがたみ」を感じにくくさせる側面もありそうです。
とはいえ、果物などのようにハウス栽培はあるものの、「旬」といわれる時期が人々にまだまだ認識されているものもありますし、養殖ではない天然の魚介類も「季節ならではのモノ」が売られています。キノコ類も天然のモノは季節を感じますね。
そんな中で、ある意味最も季節を感じやすい食べ物・食材の一つが「山菜」ではないでしょうか。
その理由を考えるに、特徴的なものがいくつかありそうです。それはまず、山菜は天候などの影響を受けやすく栽培しにくいということ。
キノコ類も同じく天候の影響を受けやすいモノですが、シイタケを始めマイタケ、シメジ、ナメコ、エノキダケといったキノコは、栽培方法が確立しており、安定的に工場や生産農家で栽培され、スーパーマーケットなどで大量に売られています。(「天然もののキノコ類」の場合は収穫量や質が安定しにくいこともあって、高値のつきやすい「松茸」などを除いては、地元のスーパーマーケットや道の駅などで見かけることが多いようです。ゆえに山菜同様、天然の「キノコ類」も季節を感じやすいですね)
しかし、山菜の場合はタラの芽など一部の種類を除き、栽培は野菜などに比べるとあまり行われていないようです。栽培が多くは行われない理由としては、上述の通り天候などに左右されやすい事と、もう一つ、山菜類はメジャーなキノコ類ほどは需要が多くない、ということがあるでしょうか。(需要が少ないからこそ、栽培も少ししか行われず、コストもあがって価格も高くなりがちです。)
栽培があまりされないということは、天然ものが出回るということ。必然的に、山菜は「旬の時期限定」のイメージの強い食べ物となり、季節感を感じやすい食べ物になる、ということです。
それともう一つ。(天然の)キノコ類と違って、山菜類は一般的に春先から初夏にかけて出回ります。現代社会においては暖房機器も充実して温かい最新下着などもあり寒さ対策は万全ですが、やはり寒い冬を越えて「ようやく春が来た」「春になったなぁ」「春だなあ」と多くの人が思う時期に出回ることで、より「季節感」が強まるということ。厳しい季節を通り過ぎた後だからこそ、それだけ味や香りの印象が鮮烈で人々の記憶に残りやすいのかもしれません。新鮮な山菜を旬の時期に食べることに価値があるというわけです。
「山菜が季節感を感じやすい食べ物・食材である」理由はここらへんにありそうです。
前置きが長くなりましたが、山菜は今が旬!ということで、今日は山菜の色々をご紹介しましょう。大好きなモノ、慣れ親しんだもの、毎年召し上がるものがあるかもしれませんし、人によってはまったくなじみがない、聞いたこともない、というものもあるかもしれません。山菜は「地域に根差した食べ物」という側面も強いので、地元ならではの呼称があり、名前が違うこともあるかと思いますが、まだ「旬の山菜」を食べたことのない方は、是非一度チャレンジしてみて下さい。その際、お店で食べるのも勿論いいですが、ご家庭でもぜひ。天ぷらなどは準備と後片付けは多少面倒ではあるものの調理そのものは意外にシンプルで簡単ですし、実際に自分で作ってみると美味しさもひとしお!是非是非お試しくださいね。
注意点としては(栽培が少ないのも要因の一つだと思いますが)、野菜に比べて一部の山菜は輸入品が多い傾向にあり、ワラビやぜんまいなどは7割以上が輸入品です。それらの多くは塩蔵品や水煮などで、さらに業務用や一般向けの品(チェーン店の山菜うどんやソバ、瓶詰等の加工品など)に加工されることが多いようですが、生のモノを購入する時は産地を確かめましょう。当然、自分で採りに行く場合には大丈夫。その場合は私有地に入らない点は特にお気を付け下さい。
Contents
山菜の基礎知識
かんぞう
そもそも山菜ってなあに?
「山菜」とは、山や野原、川岸などに自生する食用となる植物の総称です。スーパーマーケットなどがなく、野菜が簡単に手に入らなかった時代には、貴重な食材の一つとして珍重されていました。
現在は、山間部や里山など山菜をよく採って食べてきた習慣のある地域以外でも「旬の味覚」として親しまれているほか、季節になると道の駅などでも売られています。また、昨今では都市部の大手スーパーマーケットなどで少し珍しい山菜を見かけることも増えてきています。
山菜の主な種類
フキノトウ(蕗の薹)、ワラビ、葉ワサビ、ヨモギ、カンゾウ、トリアシショウマ、コゴミ、ゴマナ、シオデ、タラの芽(タラノメ、タランボ、オニノカナボウ 、タラッペ)、イタドリ、コシアブラ、アザミ、山うど、山フキ、根曲り竹(姫竹)、タケノコ、ツクシ、行者にんにく、シシウド、リョウブ、ニリンソウ、ミツバアケビ、十文字シダ、ニワトコ、ユキツバキ、ユキノシタ、ウバユリ、カタクリ、セイヨウタンポポ、ウルイ(ウリッパ、アマナ、ギンボ、山かんぴょう)等。地域、地方によって様々な呼び名があるのも特徴です。
山菜の主な調理法、山菜料理
山菜の天ぷら、山菜のおひたし、山菜の胡麻和え、山菜の白和え、山菜の味噌汁、山菜の酢の物、山菜飯・山菜おこわ、山菜そば・山菜うどん、卵とじなど。山菜の香りやほろ苦さを楽しめる料理。中でも特に天ぷらは、「山菜」といえば「天ぷら」という人も多い定番の料理。アク抜きをする必要もなく、油で揚げることによって、衣の中にぎゅっと閉じ込められた山菜の香りと味が口の中一杯に広がります。
鰹節とふきの煮物
山菜の下準備・下ごしらえ
山菜の種類によってもことなりますが、水に浸けてアクを抜く場合と、塩を入れた湯で湯搔く場合、重曹や灰を振り掛けてからお湯をかけてアクを抜く場合があります。また、モノによってはアクを抜かずにそのまま調理する場合もあります。特に新鮮なものは、アクが少なく、また苦味そのものも味わいの一つとして、そのまま油で揚げるなどの調理をします。本来の味を楽しめると共に、苦味も少しまろやかになり食べやすくなるというのも、山菜を天ぷらにして食べることが多い理由です。
◇水に浸してアク抜き・・・ふきのとう、フキ、たらの芽、うど、うるい、こごみなど
◇重曹や灰を掛けた後お湯をかけてアク抜き・・・ワラビ、ぜんまいなど
◇塩を入れた湯で湯搔いてアク抜き・・・コシアブラ、イタドリなど
(地域や家庭により、異なるアク抜きの方法を用いる場合もあります。)
おすすめの山菜・人気の山菜
コシアブラ
昔から食べてきた地域を除いて、まだまだ希少性のある山菜の一つ。その名前や存在を知らない人も少なくありません。しかし、一度でもこの(新鮮採れたての)コシアブラの天ぷらを食べたことがある人ならば、その美味しさと芳醇な香りをご存知でしょう。ほろ苦さと豊かな味わい。最高の状態に揚がったものであれば、至福の香りが「すーっ」と鼻に抜けていきます。「山菜の女王」とも称されるのも納得の「山菜らしい」魅力に溢れた山菜です。
フキノトウ
「山菜といえばコレ」という人も多いであろうフキノトウ。漢字で書くと「蕗の薹」となるように、キク科フキ属の多年草「フキ」の薹(花茎・花軸)の部分です。「薹が立つ」という言い回しで使われる「薹」ですね。つぼみの状態のモノを採って、特徴的な香りと苦みを活かしてそのまま天ぷらにすることが多いほか、ふき味噌(ふきのとう味噌)や味噌汁、煮物などで食べられます。東北地方では「ばっけ」「ばんけ」などと呼ばれ、味噌、砂糖、みりん、さらにクルミなども用いた「ばっけ味噌」「ばんけ味噌」がごはんのお供やお酒の肴として好まれています。
タラの芽
山菜の中でも人気の「タラの芽」。「タラノキ」の新芽の部分です。天ぷらにして食べることが多く、春になるとお蕎麦屋さんの天ぷらのネタとなっていることもしばしば。バランスの良いほろ苦さと香りと旨味。人気があるためか、山菜の中でも比較的栽培物が出回っており、スーパーマーケットなどでもときどき見かけます。タラの芽は美味しいだけではなく、下処理が簡単なのも魅力。とげがあるので、そこだけは注意!家庭でぜひ天ぷらにして食べてみて下さい。天ぷら以外にも白和えなども美味。味噌を乗せて焼いても美味しいです。
イタドリ
タデ科ソバカズラ属の植物の若芽を食べる山菜。特に高知県で親しまれている山菜で、県内では栽培もされています。そのままだと独特の酸味があるのでアク抜きをしてから炒めものなどに用いられるのが高知では一般的。(イタドリの炒煮)そのほか、卵綴じや天ぷら、白和えなどでも食べられています。