いちご煮
公開日: 2014年9月25日 | 最終更新日 2016年7月1日
北三陸の名物料理
贅沢にもウニとアワビをお吸い物にしたもの、それが八戸から岩手にかけての三陸海岸の名物料理、郷土料理として知られる「いちご煮」だ。
もちろん実際のいちごが入っているわけではなく、透き通った出汁の中に浮かぶ火の通ったウニが、まるで野イチゴのように見えることからその名がついたという。
かつて八戸近辺の漁村では、海女のように素潜りでウニやアワビを採る「かづき」と呼ばれる人たちがいた。「かづく(潜く)」とは「潜水すること」「潜水して魚介類を採取すること」を意味する古語で、文字通り、彼らは海に潜り、ウニ(かぜ)やアワビ(あんび)などを採っていた。漁の後は浜辺に戻り、海に潜って冷えた体を温める為にたき火をして鍋にお湯を沸かし、ウニやアワビを煮て食したという。これが「いちご煮」の発祥といわれている。
その後、大正時代に入り、八戸市鮫町の老舗料亭旅館「石田家」の二代目主・石田多吉によって、それまで豪快でざっかけな漁師料理・浜料理であったものが、洗練されたお吸い物仕立ての料理へと工夫され「いちご煮」と名づけられた。ウニやアワビといった高級な素材と、シンプルながらも旨味が深い出汁の味わいは多くの人に好まれ、今では結婚式や祝い事、正月などの「ハレ」の日の食事として供される、三陸沿岸部を代表する料理の一つとなっているのだ。
いちご煮を食べられる場所
いちご煮は、青森県八戸や岩手県久慈などの旅館や料亭で食べられるほか、居酒屋や道の駅などでも提供されている。また青森や岩手県内の都市部の郷土料理を売りにするお店などで見かけることも多い。いずれにしても、純粋にウニとアワビだけで作られたものは、素材が素材だけに決して安くはないが、上品な海の香り漂う一品は北三陸を訪れたらぜひ試してみたいもの。ホタテやつぶ貝などが入ったリーズナブルなものや、缶詰などもある。缶詰は、そのまま炊き込みご飯の具として使っても美味。