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文豪ゆかりの絶景シリーズ 伊豆・天城の名瀑「浄蓮の滝」へ

文豪ゆかりの風景を探しに、伊豆半島の「浄蓮の滝」を訪れます。「日本の滝百選」の一つにも選ばれている、迫力ある美しい滝は圧巻!清らかな水と壮観なワサビ田も印象的です。

浄蓮の滝

伊豆の踊子を探しに!川端康成ゆかりの地・天城の「浄蓮の滝」へ

~名作と共に行く旅「伊豆の踊子」と浄蓮の滝~

「日本的な美」を感じさせる「雪国」「山の音」「眠れる美女」「古都」など、数々の抒情的な作品を書き、多くの名作を残した文豪・川端康成。1899年生まれの近現代の日本文学を代表する作家の一人であり、ノーベル賞作家でもある川端は、19歳の頃、1人で伊豆半島を旅しています。

幼少時に両親を立て続けに亡くし、さらに7歳で祖母、10歳で姉、15歳で祖父もなくして、常に背中に張り付くような孤独の感情を抱えていたといわれる川端康成。当時、一高生(一高は、現在の東大の教養学部などにあたる旧制の高等学校)だった彼は、「孤児」となった自らの境遇、自身の孤独にゆがんだ性質、息苦しい憂鬱な日々に、ある日どうにも耐えられなくなって、ふと一人旅に出たのでした。

1918年(大正7年)の10月30日に東京を出発した川端康成は、伊豆半島の修善寺に向かいました。そして修善寺から下田街道を南下し、湯ヶ島を通り、天城峠を越え、下田方面へ、11月7日までの8日間にわたり旅をするのですが、その道中に巡り合った、大島から来ていた旅の芸人一座との心の触れ合いを元に描かれたのが名作「伊豆の踊子」。

無邪気で可愛らしい踊り子らとのやりとり。
日常生活では出会わないタイプの人達との交流。

人々との出会いと別れの中で川端康成の孤独は少しずつ癒されていきます。

今まで感じたことのなかった温かなぬくもり。
人の優しさに触れて、安らぐ心。純粋無垢な踊り子への淡い恋心。

そして訪れる切ない結末。

繊細な若者の心を丁寧に描いた、まさに名作と呼ぶにふさわしい物語。

天城を旅する主人公(川端康成)と登場人物たちのやりとりを読んでいるうちに、いつしか物語に引き込まれ、一緒に旅をしているような気持にさせられるお話です。世界各国の言葉にも翻訳された、この優しくて美しくてせつない物語は、今も人々を惹きつけてやみません。教科書にも掲載されていましたし、映画やドラマ、舞台、漫画などにもなっているので、そのストーリーをご存知の方も多いでしょう。

天城の風景
天城の山の中、道端に小さな黄色の花が咲いていた

天城と伊豆の踊子

今でこそ、沿岸部にも道路が通り伊豆半島は身近な存在。高速道路や橋なども架けられ、天城も幾分か行きやすい場所になりましたが、川端康成が旅をした当時は、東京から見れば随分と隔絶された山深い地であったそうで、まだまだ容易にはたどり着けない場所でした。

沿岸部の下田港は、江戸時代から重要な寄港地として、年間3千艘もの千石船が往来するほど栄えていましたが、険しい天城の山々を超えていかねばならない半島中央部の陸路は人の往来を大いに阻みました。年間3000ミリメートルを越える雨が降るといわれる多雨地帯であり、標高こそ、さほどではないものの険しい山々が連なる山岳地帯。

川端康成の旅の13年ほど前の1905年(明治38年)にようやく天城隧道(天城トンネル)が開通、川端康成が旅に出る、つい2年ほど前の1916年(大正5年)にやっとバス運行が開始されたばかり。

全国平均の二倍近い雨の多い地域、うっそうと茂る木々の中を往きながら、川端康成は様々な事に思いめぐらし、旅をしたことでしょう。

 

というわkで、今日はそんな川端康成ゆかりの地であり、「伊豆の踊子」の舞台となった天城にある名瀑「浄蓮の滝」をご案内します。

浄蓮の滝へのアクセス

浄蓮の滝へは、公共交通機関を使う場合は修善寺駅から東海バスで。約35分ほどで「浄蓮の滝」につきます。下車後、徒歩で約200段の階段を下りて行きます。少し時間はかかりますが行きはまだ大丈夫。(帰りはちょっと大変です)

車の場合は、東名沼津I.Cから国道136号線、国道414号線を経由して約1時間~1時間半ほどです。駐車場に車を止めたら、滝への道を下って行きます。

浄蓮の滝
浄蓮の滝
「水しぶきを上げる滝」

滝に近づくにつれ、轟々という音はさらに増し、真っ白な水煙をもうもうとあげる大迫力の姿が目に飛び込んできます。水はあくまで清らかで美しい。そして滝の大迫力!

今から約1万7000年前、数多くの火山の集まりである伊豆東部火山群の鉢窪山と丸山が噴火、その麓から流れ出た溶岩が川に流れ込み、なだらかな溶岩台地と滝を作りだしました。その時に作られたのがこの「浄蓮の滝」です。溶岩が冷えて固まった際に出来る「柱状節理」の崖(滝の後ろの斜めの崖)が美しい。そう、柱状節理は福井県の東尋坊などでも有名ですね。火山は一度噴火すると甚大な被害をもたらしますが、その一方でこのような美しい滝も作りだします。

また、噴火によって流れた溶岩で、なだらかな溶岩台地が作りだされ、湧き水も豊富となるので、ここ浄蓮の滝ではそれらを利用したわさび田が名物となっているのです。

浄蓮の滝とわさび田

浄蓮の滝の近くにあるわさび田
浄蓮の滝のすぐ近くに広がるわさび田

浄蓮の滝と共に目を引くのが、川沿いに広がるわさび田。目にとても鮮やかなワサビの緑色の葉。清流でなければ育たないワサビがこんなに!水の清らかさを窺い知ることができます。

浄蓮の滝のすぐ近くに広がるわさび田

このワサビは近くの売店で購入可能。新鮮なワサビを家でおろして、ご飯に鰹節、おろしたてのわさびを上にのせ、醤油をかけたら、「ワサビ丼」の出来上がり!合羽橋道具街かデパートで鮫皮おろしを買ってきておろすとさらに最高です。是非お試しあれ!生のわさびのほか、名産のワサビ漬けから、わさび団子やわさびラムネ、ワサビアイスなんかもあるので、そちらも試してみて下さいね。

まとめ

康成が来たころには、もちろんわさびのスイーツなんかはなかったでしょう。道も風景も随分と変わってしまったところもあるかもしれません。でも、きっとこの「浄蓮の滝」は当時とさほど変わらない姿を見せていることでしょう。そんな滝を目の前にして、伊豆の踊子のお話を思い浮かべてみるのも一興。ただただ、滝の気持ち良さ、水と木々の柔らかな空気を堪能するのもおすすめです。

というわけで、今回ご紹介した「浄蓮の滝」をはじめ、天城隧道や湯ヶ島などを訪れる際は、あらかじめ「伊豆の踊子」を読んでから出かけてみて下さいね。旅が二倍も三倍も面白くなること請け合いです。「名作と共に行く旅」是非おためしください。

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