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こけし

こけし

日光や蛍光灯の光で色落ちしたのだろう、少し色あせてはいるが、ちょっと不思議な顔をした愛らしいこけしが並ぶ。

元々は、ブナやケヤキなどの木を削り、お椀やお盆などを作っていた木地師が副業として子供のおもちゃを作ったのがその始まりといわれるこけしは、主に東北地方の青森県、岩手県、秋田県、山形県、宮城県、福島県などで作られている木製の人形玩具。中でも昔からの伝統的な様式を受け継いでいる「伝統こけし」は、温泉地と切っても切れない存在で、土湯、弥治郎、遠刈田、鳴子、作並、山形、木地山、南部、津軽、蔵王高湯、肘折という、姿、形などで大きく11に分類される主な伝統こけしの生産地域の多くが、名湯、秘湯にも挙げられる温泉地周辺に位置しているのだ。

これは、温泉地で土産物として売られたため、周辺に生産者が集まってきたためでもあり、また昭和以前のデパートなどがまだあまりなかった時代、お土産物や工芸品といえば、温泉地や観光地などで主に売買されたためでもあるという。特に、東北地方の農民は、農閑期や寒さの厳しい冬などに湯治の為に温泉地へ出かける人も沢山居て、帰りに子供や孫の為に土産物として、また五穀豊穣を願う縁起物として、こけしを買っていく人が多かったとか。

木材選びから、裁断、ろくろ回し、絵付けといった工程で作られるこけしは、一人前の工人となるためには10年以上を要するといわれ、工人の高齢化と後継ぎ不足で、各地のこけしが消滅の危機に瀕しているという。

可愛らしくて素朴な子供用のおもちゃとしては勿論、大人の観賞用にも十分耐えうるだけの「作品」としてのクオリティをもったこけしも少なくない。伝統技術と工人の思いのみならず、縁起物として、逞しい生命力を宿しているともいわれるこけし。東北地方の温泉地に出かけた際には、一度手に取ってじっくり眺めてみてはいかがだろう。

Japan Web Magazine 編集部

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