湘南のトンビ
絶景を眺めながらビールを飲んでいると、目の前を数羽のトンビが飛び回っているのに気が付いた。優雅に滑空し、すうーっと下の方に舞い降りてはまた上昇する。音もなく、軽やかに大空を飛び回る。
日本で最も身近に見ることの出来る猛禽類「鳶(とび・とんび)」は、タカ目タカ科に属する鳥だ。そのほかの猛禽類もそうだが、大変視力が優れていることで知られる。人間の視力に換算すると8.0~10.0くらいになるという話もある。「鳶に油揚げを攫われる」という言葉もあるように、上空で優雅に飛んでいるように見えて、その実虎視眈々と獲物を狙っており、ひとたび狙いを定めると急降下し一気に獲物をキャッチして上空に運び去る。小動物は勿論、観光地などでは、観光客が広げたお弁当の唐揚げを持っていったり、サンドイッチを食べようとしたところを狙われて、横から持っていったりもする。実際に、自分や自分のすぐそばにいた人がトンビに食べ物を持っていかれた、なんて経験のある人もいるだろう。
攻撃し返したり、逆にわざわざ食べ物を上げたりする必要はないが、上空から食べ物を奪いに来るのも彼らの野生の習性と心得て、「ぴーひょろろ」という鳴き声が聞こえたら、背後に注意して、身を守りたい。大概彼らは後ろから突然やってきて食べ物を取っていく。勿論、可能性としてはありとあらゆる方向から飛んでくる。食べ物を取っていく際に、くちばしや爪があたり怪我をする事例もあるようなので、特に小さい子がいる場合などは周囲の大人が注意してあげてほしい。
しかし、考えようによっては、「野生」がなくなった今の時代に、私たち人間も「自然」の中で生きている、ということを実感させられる数少ない機会なのかもしれない。原始時代ならいざ知らず、現代において食べ物を横取りされるなど殆どないこと。普段、飽食の中に生きて、日々食べられることに感謝をする心を忘れがちな私たちに、何か大事なことを思い出すためのきっかけをくれているのかもしれないのだから。