三斗小屋温泉から朝日岳へ 三斗小屋温泉滞在記
公開日: 2023年9月22日 | 最終更新日 2024年4月21日
三斗小屋温泉「煙草屋」さんの2日目の朝は6時過ぎに起床。朝ごはんは6時半からなので、朝の露天風呂を楽しんでから朝食です。
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今日の朝食は、ご飯、お味噌汁、温泉卵、ハムとかにかま(マヨネーズ、ケチャップ付き)、タラコおろし(たらこと大根おろし)、味付け海苔、オレンジ一切れです。お味噌汁の具は白菜と油揚げでした。前日の夕食の所でも書きましたが、麓から二時間山歩きしてようやくたどり着いた山の中の「山小屋」といった趣でありながら、さすがはかつての会津中街道の宿という歴史を持つ旅館。決して高級旅館のような豪勢な朝食ではないけれども、きちんとした朝ごはんでした。むしろ山の中の朝食としてはタラコなんかもあったりして、ちょっと感動です。もちろん冷凍の状態で運び上げられたのだと思いますが、重たい荷物を持ってここまでやってきたであろう宿のスタッフ(もしくは歩荷さん)の苦労を思うととてもありがたく、美味しく朝食を頂きました。
朝食の後は一休みしてから、支度を整えて階下に降り、靴を履いて出発です。歩き始める前に装備を点検、ストレッチをしていざ!
朝日岳へ
写真・文 JAPAN WEB MAGAZINE登山部 Tomo Ohi
奥秩父の朝日岳(標高2579メートル)や、富山と新潟に跨って聳える朝日岳(標高2418メートル)など、全国に「朝日岳」の名で呼ばれる山はいくつもありますが、今日登るのは、茶臼岳、三本槍岳、南月山、黒尾谷岳と共に「那須連山(那須五岳・那須五峰)」を構成する山である朝日岳。標高は1896メートルとそれほど高くはないですし、行程も特に危なそうな場所もないので、気持ちは比較的のんびりです。
玄関を出て右手方向が登山道。建物の間を通り、石段を登っていきます。
歩き始めて少しすると鳥居が見えてきました。
鳥居をくぐるとその先にみえてくるのが、、、、
三斗小屋温泉神社
三斗小屋温泉神社です。那須塩原市の指定文化財。創建年は明らかになっていないそうですが、三斗小屋温泉が1142年に発見されたそうなので、創建はそれ以降のことでしょうか。主祭神として大己貴命が祀られています。外側の覆屋は、一見山の避難小屋かバンガロー風ですが、中を覗くと素晴らしい彫刻。神殿は一間四方の欅造り。上り龍、下り龍などが刻まれていて欄間の彫も精緻で素晴らしいもの。伝承によれば、日光東照宮の造営に関わった彫師たちが温泉保養にやってきた際に彫り上げたものだとか。休みの間にこれだけのものを作ってしまうのは流石というか、職業病というか、匠の技が光ります。
往路復路共にケガ無く、無事に戻ってこられるようにお参りしてから、登山再開です。
木漏れ日が差し込んでいい感じです。気温は高いですが、時折吹き抜ける風が涼しく爽快。さわさわとなる葉擦れの音も心地よいのです。
登り始めてしばらくは木々の中を歩いていましたが、15分ほどすると木々が開け、景色の良い場所が所々に出てきます。
そして現れる一つ目の絶景スポット。水蒸気が勢いよく吹き上げており、ここが火山帯であることを改めて教えてくれます。匂いは火山そのもの。地球の息吹を感じさせられる大迫力の光景で思わず目を奪われますが、硫黄臭が強く、有毒の二酸化硫黄や硫化水素を吸い込みそうなので早々に立ち去ります。
最初の休憩スポット「隠居倉」まで800メートル。
山歩きはどんなお天気でもそれなりに楽しく、たとえ大変な天候で苦労しても思い出に残りますが、やはりいいお天気の青空の登山は最高です。爽快この上なく、気分は上々。今日の行程がとても緩いこともあり、気分は軽やか晴れやか。足取り軽くハイキング気分。
なんて、思っていたら突然出てくる険しい道。足元が悪く、ごつごつの凸凹です。傾斜が急で大雨が降ると石が流れてしまうのでしょうか、鉄の杭と太い針金で固定してあります。やはりどんな道でも、どんな行程でも山を舐めてはいけません。そういえば、標高500メートル程の山で遭難し、ヘリが二機捜索に出たという話を見かけたこともあります。どんな山でも気を付けて登るにこしたことはありません。
急登が終わると、絶景スポットが出てきます。どこまでも続く山々の一角に小さな池か湖のようなものも見えます。地図を見るに、「沼ッ原調整池」でしょうか。
ふと傍らを見ると可憐な薄紫色のイワシャジンの花がさいていました。すぐそばにはイワシモツケの花も咲いています。
気が付くと那須連山の主峰「茶臼岳」が見えていました。赤い屋根の峰の茶屋の避難小屋や三斗小屋方面への道も良く見えます。昨日歩いた道をこうして俯瞰してみると少し不思議な気分。昨日あそこを歩いていた時に、もう一人の自分がここからこうして見ていたら、、、などとSF映画か漫画のような妄想を楽しめるのも大パノラマを堪能できる那須の山ならでは。日常でこのスケール感で景色を見ることはないのでとても開放的で最高の気分です。
そうこうしているうちに隠居倉に到着。標高は1819メートル。環境庁と栃木県が設置したとても立派な碑が鎮座しています。
五分ほど休憩したら再び歩き始めます。夏の山は花がそこかしこに咲いていてなごみます。
登るにつれて木がなくなったので直射日光で暑いのですが、気持ちも景色も最高。山に映る雲の影を見ていると時間軸がずれてしまいそうです。
熊見曽根と呼ばれる尾根を歩いていきます。もはや急な上り下りもなく、足取りはひたすら軽いのです。
熊見曽根を過ぎ、朝日岳山頂まで200メートルのところまでやってきました。あと少しです。
ずるずると崩れやすい足元で歩きにくいのですが、それほど危険な感じはありません。
茶臼岳から幾筋もの道が伸びて続いているのが見えます。迫力の光景!
頂上まであと少し!がんばって!
登山道の端から見下ろすと、きゅっとなるような高度感。
ようやく山頂に到着です!
8時前に宿を出発してちょうど二時間ほど。写真を撮ったりしていたので少し時間はかかりましたが、標高1896メートルの朝日岳山頂にたどり着きました。
最後少しだけ登りにくい箇所がありましたが、とくに危険個所もなく、とてもいい山歩きでした。しばし絶景パノラマと素晴らしい空気を楽しみます。
途中の隠居倉あたりもそうですがトンボがとても多いのが目につきます。アブなどのように不快な感じは一切ありませんが、ちょっと驚くほどの数が飛んでいます。
トンボは昆虫の中でも屈指の飛行能力を持つそうですが、標高1900メートルくらいなら余裕で飛んでこられるんですね。あらためてびっくり。
ちょっと欠けてしまっていましたが年季の入った小さな鳥居があり、かたわらに栃木のお酒「天鷹」がお供えされていました。
15分ほどのんびりしたでしょうか。三斗小屋温泉にむけて下り始めます。到着した先に温泉が待っているというのは、それだけで素敵な気分。汗もかいたことですし、お風呂に入ってビールを飲んで、、、気持ちは宿に先走りそうですが、気を引き締めて下ります。
登山そのものはそれほど大変なルートではありませんが、山頂付近はそれなりに傾斜も急で、崩れやすい場所もあってなかなかのスリル感。
躓いたりしたらただではすみそうにありません。登山のケガの9割以上は下山時に起きるという話もあります。達成感と気のゆるみと疲れと、複合的な要因だとは思いますが気をつけなくては。
気持ちの余裕からなのか、登りの時には見えなかった風景やものなどが目に入るのも、下山時の楽しみの一つ。特に同じルートを往復するときなど、往路で全く見えていたかったものを発見したりして驚く時もあります。岩の陰に隠れている花もそんな発見のうちの一つ。
足元やルートに十分に気を配りながらも、
トンボを眺めたり、
景色を眺めたり、
花を眺めたりしながら、ゆっくり下りていきます。
少し雲行きが怪しくなってきました。あらためて山の天気は変わりやすいですね。
反対側は抜けるような青空が見えています。
可憐な百合の花が咲いていました。
ようやくここまで下りてきました。宿まであと少しです。
神社までやってきました。何事もなく、無事に下山できたことに感謝です。
神社を過ぎて、鳥居をくぐり、煙草屋さんに到着です。
先にビールを飲むか、先にお風呂に入るか、一瞬だけ悩みます。まずはさっぱり汗を流して、ということで館内の共同浴場へ。汗を流してさっぱりし、ビールをで乾杯!お疲れさまでした。
ビールを飲んだ後は昼食を食べ、露天風呂へ。露天風呂に入っていたら、雨が降ってきました。本当に山のお天気は変わりやすいですね。夕食は17時15分からなので、のんびり本を読んだり考え事をしたりしながら過ごします。
二日目の三斗小屋温泉煙草屋旅館の夕ご飯はこんな感じでした。お肉がとても美味しかったです。ご飯のお代わりをしたのはいうまでもありません。
朝日岳登山まとめ
三斗小屋温泉煙草屋旅館に宿泊し、朝から朝日岳登山を楽しむのは中々素敵な体験でした。山を歩いて風景を楽しんで、美味しい空気を味わって下山したらすぐに温泉、そしてビールで乾杯と、もうこれ以上ないほどの幸せなひと時です。
北アルプスや南アルプス、奥多摩などを数日掛けて縦走する「がっつり」登山、山歩きも楽しいですが、荷物も軽く、気分も軽やかな山歩きもとても楽しいものです。午後になって雨が降りましたが、歩いている最中はお天気も良く、とても気持ちの良い山歩きでした。何より景色が最高でした。ある程度手軽とはいえ、もちろん山登りであることには変わりないので、安全に登って戻ってくるためには、それなりの装備と経験が必要なのは当然ですが、アルプスなどと比較するとハードルは低めです。機会があったら、ぜひ足を運んでみてくださいね。
宿の方やロープウェイの方にお話を伺うと、普段は比較的空いている日もあるようですが、行楽シーズンの休日などは混雑するようです。特にこれからの紅葉の時期(那須の紅葉は素晴らしいです)は、駐車場もロープウェイも混み合いますので、きちんと計画を立てておでかけください。
三斗小屋温泉の煙草屋旅館や大黒屋旅館に宿泊する場合は、必ず予約の上、時間にたっぷり余裕を持って到着するようにお気を付けくださいね。万が一、キャンセルする場合は必ず早めに連絡をすることも忘れずに。人の手(人力)で運び上げている食料が無駄になってしまいますし、宿の方もとても困るそうです。連絡がない場合、万が一の遭難の可能性を考慮して警察に連絡するとのことです。
また、三日目に茶臼岳の山頂に行った際に途中で遭遇したのですが、那須ロープウェイで山頂駅までは気軽に行くことができるため、ごつごつとした岩だらけの茶臼岳登山道をヒールとスカートで歩いている方がいました。パートナーか友人と一緒に来ていた雰囲気でしたがご本人はとても大変そうな様子。麓の北温泉や大丸温泉などに行く予定で、ついでにロープウェイに乗って茶臼岳に行こうかなと計画を立てている方は、ロープウェイ山頂駅~那須岳の登山道は思いのほか岩だらけで歩きにくい上に滑りやすく、靴の表面も傷つきやすいので、出来るだけ動きやすい服装としっかりした足元で行かれることをおすすめします。(三斗小屋温泉まで歩かれる方は服装、靴、荷物いずれも登山装備が望ましいです。)
那須岳の紅葉の見ごろは?
朝日岳を含む、那須岳の紅葉の見ごろは例年10月初旬~10月下旬頃まで。早い年だと9月下旬頃から紅葉が楽しめる年もあるようです。特に「紅葉スポット」「紅葉のフォトスポット」として知られるのは姥ヶ平。那須岳とのコントラストはまさに絶景。タイミングがいいと山頂付近に雪を抱いた那須岳と紅葉を楽しむこともできます。
秋の姥ヶ平 紅葉風景 (写真提供:那須町)
那須連山 朝日岳詳細データ
朝日岳(あさひだけ) DATA
- 場所: 栃木県那須郡那須町
- 標高: 1896メートル
- アクセス: 三斗小屋温泉から徒歩で約2時間
- 登山シーズン: 春から秋(冬季は積雪有)