もんじゃ焼き
公開日: 2008年11月23日 | 最終更新日 2021年3月4日
魅惑の鉄板
お好み焼き、焼きそば、焼肉・・・。鉄板を使った料理はなぜあれほどまでに楽しくて美味しいのだろう。時に焦がしたり、時に火傷したりしながら、ハフハフとアツアツの焼きたてを食べる。煙と格闘したり、散らばる食材に難儀したりしながら、目の前で「材料」が「料理」へと変わっていく。そのワクワク感。この日ばかりは服や髪に匂いがつくのを気にしてはいけない。そんな事を気にして入られないくらい楽しくて美味しい食べ物が目の前に繰り広げられるのだから。
というわけで、今回は東京下町の鉄板で焼いて食べる食べ物、「もんじゃ焼き」を紹介しよう。
東京もんじゃ焼き
見知らぬ人が見たら、少々驚くかもしれない。何やら得体の知れぬ、「キャベツや干しエビやその他のものが雑多に入った液状のもの」が鉄板一杯に広げられ、じゅうじゅうと焼かれている。見ていると、皿に取り分けるわけでもなく、鉄板からそのままダイレクトに取って食べている。それも小さなヘラでこじんまりと取って口に運んでいる。熱くないのだろうか。いや、それ以前にあんな妙なものが美味しいのだろうか。お好み焼きでもない。もちろん焼きそばとも違う。端の方は少し焦げかかっている。調理に失敗して、分量以上に水分を入れすぎ、ぐずぐずどろどろになってしまっただけにも見えるそれ。なんとも不思議な食べ物。
それこそが、東京生まれの東京育ち、特に東京の下町育ちの人たちにとって、馴染み深い(であろう)食べ物、「もんじゃ焼き」だ。好きな方は勿論、一度でも食べた事のある方ならわかるだろう、液状のものは失敗作ではなく、小さなヘラで食べるのも正解なのだ。
もんじゃ焼きとは
もんじゃ焼きは、小麦粉を溶かしたタネにソースなどであらかじめ味をつけ、焼いて食べる料理。料理というより、軽食、間食といったほうが正しいだろう。子供の時分から食べている人には、はやりの「B級グルメ」という言葉やご当地料理、郷土料理などという呼び方よりも、「おやつ」というほうがしっくり来る。なんといっても「もんじゃ焼き」は江戸から続く庶民のおやつなのだ。
もんじゃ焼きは元々、屋台や駄菓子屋などで供されていたもの。見た目や食べ方そのままのざっかけで手軽な食べ物だ。焼きながら文字を書いて遊んだ事から、「もじやき」→「もんじやき」→「もんじゃやき」となったという名前の由来の説からも判るとおり、焼いてもお好み焼きの様にしっかりとした形にならないほどにどろっとしているのが特徴で、小さなヘラで端の方から各自好きな量をすくって食べる。上のほうのどろりとした食感と、鉄板に触れている部分のかりっと香ばしいお焦げが魅力で、焼け具合をそれぞれ調整しながら(時には遊びながら)、口に運んでいく。昨今ではすっかり酒のお供になってしまった感があるが、本来は子供心溢れる楽しい食べ物なのだ。
もんじゃ焼きの焼き方
もんじゃ焼きには、上記の様に食べ方にルールはないが、焼き方にはちょっとしたルールというかコツがある。大抵どこの店も頼めば焼いてくれるが、せっかくだから自分達で焼いて食べてみよう。失敗してもどうってことはないし、それほど難しいものではない。
上の写真は明太子ともちが入った「明太もちもんじゃ」だが、通常、もんじゃ焼きはこのようにどんぶりに具もタネも一緒に盛られて出てくる。それをいきなり鉄板の上に全部あけてしまってはいけない。タネをなるべく切ってどんぶりに残し、具材だけを熱して油をしいた鉄板に乗せるのだ。
それをヘラを使い手っ取り早くいためていく。この時、焼く人や店によってヘラで丁寧に細かく切るようにして焼く人もいるが、これは好み。とりあえず焦がさないように、ざっざと炒めていく。
ある程度具材に火が通ったら、具材をよせて真ん中に穴を開けて土手を作る。そして真ん中の穴に、先ほどどんぶりに残しておいたタネを注ぎ込むのだ。これこそがもんじゃ焼きの焼き方のコツ。この時土手をきちんと作らないと、タネが鉄板中に溢れ出てしまい、大変なことになる。具材で作った土手の中でタネに少し火を通したら、おもむろにヘラで全体を返すようにして、タネと具材を混ぜ込みながら炒め、平らに広げて出来上がりだ。あとは各自、専用の小さなヘラで食べるだけ。