江戸時代の美しい町並み 江戸の情緒を求めて中山道の宿場町 木曽「奈良井宿」へ
公開日: 2019年10月24日 | 最終更新日 2022年10月18日
奈良井宿
Contents
江戸時代の旅籠の雰囲気が今も残る 美しくて古い町並みへ
長野県塩尻市の山あいにある「奈良井宿」は、「中山道」の三十四番目の宿場町。山がちな「木曽エリア」に11あった宿場の中で最も標高が高く、また峠越えの難所として知られた標高1,197メートルの「鳥居峠」のそばにある為に、多くの旅人が今一度旅支度を整え英気を養うために、立ち寄ったり宿泊した場所で、最盛期には「奈良井千軒」と呼ばれるほど、多くの旅籠や茶屋などが軒を連ねました。
ちなみに「中山道」は、日本橋を起点に京都や日光などを結んだ主要な街道、「東海道」「日光街道」「奥州街道」「甲州街道」、そして「中山道」という、いわゆる江戸時代の「五街道」の一つであり、東海道と並行するように内陸部を通って、江戸の日本橋と京都の三条大橋を結んだ道です。
ご存じのように、本州の内陸部は木曽山脈をはじめとする大山脈が連なり、名だたる峰々が幾つも聳える山がちな地形。街道は極力、起伏の激しくないルートを通って(選んで)作られたのだとは思いますがそれでもやはり中山道は、幾つもの峠越え、山越えをしなくてはいけない、容易ではない街道の一つでした。さらには冬の寒さが厳しく、山間部は雪も深かったため、特に冬場は相当ハードなルートであったようです。そんな「中山道」のちょうど中ほどに位置している奈良井宿では、江戸や京都方面に向かう多くの旅人が足を止め、ほっと一息。しばし休息し、旅の疲れを癒したといいます。
というわけで今日は、木曽の宿場町「奈良井宿」をご案内しましょう。今も美しくて古い家々が残り、国の「重要伝統的建造物群保存地区」にも選ばれている、魅力あふれる宿場町です!
奈良井宿へのアクセス 東京や名古屋からの所要時間
奈良井宿へは車の場合、東京方面からなら高井戸から中央自動車道~塩尻IC~国道19号線経由で3時間くらいです。名古屋方面の場合は小牧から中央自動車道~中津川IC~国道19号線経由で2時間20分くらい、または中央自動車道~伊那IC~国道361号線経由で2時間40分ほど。中津川経由だと中央道を40分走り、インターからは国道19号線を1時間30分。伊那経由だと、中央道を2時間、インターから国道361号線を40分となるので、旅のスタイルに合わせて選んでくださいね。(編集部注:2019年10月に発生した台風19号の影響で現在権兵衛トンネルが全面通行止めとなっています。それに伴い、ルートが変更される場合もありますので最新情報をチェックしてください。→ 奈良井宿観光協会)
奈良井宿の駐車場は、「木曽の大橋」の東駐車場(国道側)に大型車3台、普通車12台、身障者用3台、「木曽の大橋」の西駐車場(線路側)に普通車51台、身障者用1台のスペースがあるほか、道の駅 奈良井宿駐車場(木曽の大橋の北側)に、大型車15台、中型車(マイクロバス)2台、普通車28台、身障者用2台を駐車することもできます。
電車だとJRの中央本線の奈良井宿駅から歩いてすぐなので、公共交通機関で行くのも便利です。東京・新宿から塩尻駅まで特急で2時間40分、塩尻から中央本線で25分で奈良井駅です。名古屋方面の場合は名古屋駅から特急で木曽福島駅まで1時間30分、木曽福島駅から中央本線で20分ほどです。電車の場合は家族や友人、知人、パートナーと飲んだり話したりしながら行かれるのがメリットですね。もちろん、一人旅にもおすすめです。車窓を流れゆく風景を見ながら、色々と考え事をし、気がつけば緑濃い、自然豊かな木曽エリアに到着です。
奈良井宿は大きい!
奈良井宿に足を踏み入れてまず驚くのがその町の規模です。古い町並み、昔の家屋が残っている「宿場町」は日本各地にまだまだありますが、これほどまでの規模感で現存している所もほかにあまりないのではないでしょうか。それもただ規模が大きいというだけではなく、伝統的な建築物が美しい状態で整然と並んでいるのです。そして、古い町並みが保存されている地区でときどき見かけるような、一ヶ所だけ場違いな、雰囲気の違う建物が建っている、ということがないのです。奈良や飛騨高山などと違い、山の中の道沿いに出来上がった町であるため、横に広がっているのではなく、細長く続いているのも特徴的。どこまでも続く家並みはただただ美しく、思わず見とれてしまいます。さらには一軒一軒よく見てみると、建物が美しいのみならず、花や装飾品で軒先や玄関が綺麗に可愛らしく飾ってあるのです。
奈良井宿を訪れる際は、是非ゆったりとしたスケジュールを組むことをお勧めします。そばやおやきをはじめ、地元の料理、郷土食、郷土菓子など、美味しいものが食べられるお店が幾つも有りますし、江戸時代からの名産品でもある木の工芸品などが売られているお店も点在しています。
写真を撮ったり、建築物を細かに観察したり、角に立って昔の雰囲気を想像してみたり。気がつくとあっという間に時間が経ってしまいます。端から端まですべてを見る必要はないかもしれませんが、短時間に駆け足でざっと見るだけ、というのは少し勿体ないかもしれません。
宿駅から宿場町へ
さて、ここでちょっと奈良井宿の歴史と町割りについて、簡単にご説明しましょう。戦国時代には武田氏の定めた宿駅であったという奈良井は、江戸幕府が整備した伝馬制度により中山道六十七宿が定められた際に宿場町の一つとなりました。
中山道沿いに南北1キロメートルにわたり続く宿場町は、その両端に神社があり、山側に寺院が5つ。街道に沿って南側から上町、中町、下町とわかれ、中心に当たる中町に、参勤交代などの際に大名や旗本などが宿泊する場所である本陣やそれに次ぐ格式の脇本陣、問屋などが置かれていました。
奈良井宿の見どころ
1キロメートルに渡って続く奈良井宿は見所も沢山!そのいくつかをご紹介しましょう。
建物
奈良井宿の建物は一軒一軒、それぞれ見ごたえがあります。江戸時代の生活を想像できる美しい格子や、梁、蔀(しとみ)、框(かまち)、袖壁、小屋根といった建物の外見や構造が、建物好きならずとも見ているだけで興味深くドキドキします。都会的な生活の中ではなかなかお目にかかることのない、昔ながらの木造の建物のシンプルでいて丁寧で美しい作り、意匠は一見の価値ありです。
水場
かつての人々の生活、往来の雰囲気を感じられるものの一つとして、宿場町内に幾つか設けられた水場があります。現在も綺麗な水がとうとうと流れており、江戸時代の旅人や町の人々が喉を潤していた光景を容易に想像することができます。
上問屋史料館
上問屋手塚家は、幕末まで問屋を営み、庄屋も務めていた家柄。現在は、資料館となり、かつて使われていた道具類や、古文書などが展示されています。建物は国指定重要文化財。入場料大人300円 子供200円(12月~2月は休館。その他不定休あり)
「鍵の手」と「桝形」
江戸時代、またはそれ以前に作られた町、集落には、大勢の兵が容易に通り抜けできないような構造がよく見られます。奈良井宿で見られる「鍵の手」と「枡形」もそんな宿場町を守るための構造。あえて道をクランク状にした「鍵の手」、四方に土塁や石垣を築いた「枡形」があることにより、大勢の兵が容易に直進したり、先を見通すことができないようになっています。「鍵の手」は上町と中町の境に、「桝形」は下町にあります。
鎮神社
1618年(元和4年)に奈良井宿で疫病がはやった際に、下総国(現在の千葉県)の香取神宮から経津主神(ふつぬしのかみ)を勧請し祀ったのが発祥といわれる神社。奈良井宿の鎮守様として町の人々に崇敬され、親しまれています。
奈良井宿の食べ物・おやつ
奈良井宿には食事処もあり、美味しい蕎麦や五平餅、おやきなどの郷土料理、郷土のおやつを頂くことができます。散策しながら食べることのできる「おやき」の食べ比べはもちろん、ゆっくり席に座って味わう信州の蕎麦の味は、思い出に残ること間違いなし。
まとめ
中山道には「馬籠宿」や「妻籠宿」など、美しくて雰囲気がある宿場町が残っていますが、ここ奈良井宿も古き良き時代の雰囲気が随所に残る素晴らしい宿場町です。お天気が良い爽やかな日は最高に気持ちが良いですが、雨の日や曇りの日もそれなりに雰囲気があって素敵。特に雨の日は、足元や服が濡れて少し不快かもしれませんが、それを補って有り余るくらいのシックで落ち着いた雰囲気に包まれます。木造の建物の良さは、雨の日にこそ真価を発揮するのかもしれません。シトシトと降る雨と趣のある建物。艶のある町並み。観光客も少なく静かな通り。まさに江戸時代の雨の宿場町にワープしたかのような感覚を楽しむことができます。
雨の奈良井宿
家族連れにはもちろん、友人や知人と、好きな人と、もしくはのんびり一人旅で訪れるのに、おすすめの場所「奈良井宿」。老若男女、様々な旅のスタイルでもゆったりと受け入れてくれる懐の深さは、さすがは江戸時代から続く「旅人のオアシス」だからこそなせる技、といったところでしょうか。各人各様、思い思いに楽しむことができると思います。是非、お出かけになってみて下さいね。
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奈良井宿(ならいじゅく) DATA
- 場所: 長野県塩尻市奈良井
- 交通(公共交通機関で): JR中央本線奈良井駅から歩いてすぐ
- 交通(車で): 長野道塩尻ICよりR19経由、名古屋方面へ30分ほか
- 駐車場: あり 一回500円~。無料Pもあり
- 期間: 通年
- 問い合わせ: 0264-34-3048