蜂の子
公開日: 2009年10月12日 | 最終更新日 2015年6月23日
信州の珍味
蜂の子は「蜂の幼虫(主にクロスズメバチなどの幼虫)」を調理したもの。醤油と酒、みりんなどで佃煮や甘露煮にするほか、炒ったり、蒸し焼き、素揚げ、炊き込みご飯(スガレ飯・蜂の子飯)などにして食べる。海産物の手に入りにくかった地域で、貴重なタンパク源として昔から食べられてきた郷土食だ。信州では「すがら」「すがる」「すがれ」等とも呼ばれ、町のスーパーなどで、瓶詰めや缶詰の甘露煮や佃煮が売られている。かつては、集落の人々が協力して、蜂の巣を探し出し、蜂の子を取ったというが、環境の変化による蜂の減少や、参加する若者の減少などで、次第に捕獲数も減ってきているとか。それに伴って、価格も高騰、市販の瓶詰めや缶詰も、売られている場所やサイズによっては数千円するものも珍しくない。地元の人でも食す機会が減ってきているといい、まさに珍味と呼ぶに相応しい存在の食材なのだ。
蜂の子の栄養分
山間部での貴重なタンパク源だった蜂の子は、中国では古くから漢方の生薬として利用されてきた歴史があり、実は、大変栄養価に優れた食材でもあるのだ。その栄養価は、栄養食品としてよく知られるローヤルゼリーを凌ぐもので、上質な必須アミノ酸がローヤルゼリーの約3倍。ビタミンに加え、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、セレン等のミネラル分なども豊富で、疲労回復、風邪や糖尿病、癌、痴呆症の予防、肝機能の向上、味覚障害や花粉症、耳鳴りの予防、精力アップも期待できるという極上の栄養食品。また抗酸化作用もあり美容効果も期待できるというスーパーなものなのだ。また、蜂の子を食べると「性格が前向きになる」なんていう話もある。成長した蜂は、一日に200km~3、400kmも飛翔するという。小さな体に凝縮されたパワーの源。栄養価が高いのも頷けよう。
蜂の子の味
馴染みの無い人にとっては、まずそのビジュアルからインパクトのある存在だが、好きな人にとっては堪らない存在である蜂の子。そのお味はというと、家庭や店によって味付けの濃さなどが違うので、多少の違いはあるが、少々のクセ(馴れるとこれが旨みとなる)がありつつも、濃厚でむっちりとしていてほのかに甘い小エビのような固茹で卵の白身のようなトウモロコシのような感じだろうか。初めて食べる前になんとなく想像していた蜂蜜のような感じはない。食べ方としてのおススメは素揚げ。甘露煮や佃煮は醤油や砂糖の濃さが目立ってしまい、肝心の蜂の子の味が薄れてしまうのだが、素揚げにするとその味は引き立つ。塩をぱらりと振ったものを口に運ぶと、ぷちっとした食感も味わいもどことなくエビのようだ。
信州以外での蜂の子食文化
蜂の子は、長野以外では、岐阜、静岡、山梨、栃木、宮崎などでも食べられている。特に長野の隣県・岐阜では蜂の子はへぼと呼ばれ、ご飯と一緒に炊き込んだ「へぼご飯(へぼ飯)」や、すりつぶして味噌に混ぜて五平餅に塗った「へぼ五平餅(へぼ五平)」などが郷土料理として知られている。