月光
公開日: 2008年11月21日 | 最終更新日 2015年5月27日
月の光のある風景
地球からの距離およそ38万4000キロ。表面積にして僅か地球の7%強しかない小さな衛星、「月」。しかし、太陽を除いてこれほどまでに私達の生活に影響を及ぼす星もない。潮の干満を始め、自然界の様々なリズムが月の満ち欠けに連動している。サンゴの産卵が月夜に行われるというのをご存知の方も多いだろう。何年も水族館の中の水槽に入れられていて、人工光しか浴びせられていないサンゴが、自然界のサンゴが産卵する月の晩に一斉に産卵したという記録もある。私達には図り知ることの出来ない大いなる自然界のリズム、月と連動する神秘的な生態系がそこにはあるのだ。
科学的に全てが解明されているわけではないが、生命体の心や身体に月が影響を与える、というのも古くから言われている事。特に満月が生命体に及ぼす影響に関しては古来より世界各地で様々なことが言われている。月を表す「Luna」という単語には、別に「狂気」という意味もある。統計によると、満月や新月の夜は救急車や警察の出動も多いという。自然環境のみならず、私達の健康や精神(感情)に深く関わっている月。美しく儚く、ときに妖艶で神秘的。そんな月の光のある風景をお届けしよう。
月見
古くから満月を拝する風習のあった日本では、信仰の対象として、また縁起物として月を見る「観月」が昔から行われてきた。満月は五穀豊穣のシンボルであり、月の光には神性が宿るものと信じられていたのである。特に稲のたわわに実る頃に見る十五夜の月は特別なものであった。この十五夜の観月の風習は元々、大陸から渡ってきたものといわれている。大陸で観月の際に作られる「月餅」が、日本伝来と共に「月見団子」に変わっていき、次第に団子(感謝の意と翌年の豊穣の願い・・・関東では丸型の団子、関西では先細りの餅に餡を巻いたもの)とススキ(ススキには魔よけの力があるとされた)、御神酒などを「お月様」に供える風習が出来上がっていく。渡来人や大陸から帰朝した人々により宮中に伝わった雅な観月の行事はこうして一般の人々にも広まっていった。
さらに日本独特の風習として「十三夜」がある。これは旧暦の九月十三日に観月をする風習で、栗や豆を供える事も多く「栗名月」や「豆名月」などとも呼ばれるもの。由来には諸説あるが、有力なのが平安時代の天皇である宇多天皇が旧暦九月十三日の月を愛でこれを賞したことが始まりというもの。また、もう少し後の醍醐天皇の時代に開かれた「観月の宴」が次第に風習化したものだという説もある。
月の様々な呼び名
望月(ぼうげつ・もちづき)・・・満月の事。藤原道長の「この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしとおもえば」は有名。
盈月(えいげつ)・・・盈とは、「みちる・みたす・いっぱいになる。」の意。すなわち満月の事。
新月(しんげつ)1日頃・・・太陽と月が同じ方向になって見えない状態。
繊月(せんげつ)2日頃・・・線の様に細い月。日没後の残照淡い西空に見える。
三日月 (みかづき)3日頃・・・一般的に最初に見える月。始めに見えることから、初月(ういづき)・若月 (わかづき)などの名も。また眉月 (まゆづき)・蛾眉(がび)などとも呼ばれる。古来信仰の対象であった。
上弦の月(じょうげんのつき)7日頃・・・その形から、弓に見立てて弦が上に来るというので上弦の月。夕方西の空に見える。その他、七日月 (なのかづき)・弦月 (ゆみはりづき)とも。
十日夜の月(とおかんやのつき)10日頃・・・上弦の月よりも若干ふくらんだ状態の月。
十三夜月(じゅうさんやづき)13日頃・・・後の月 (のちのつき)。満月に次いで美しいとされる。特に旧暦の十三夜を栗名月 (くりめいげつ)・豆名月 (まめめいげつ)と呼ぶ。
小望月(こもちづき)14日頃・・・満月の前の夜の月。十四日月 (じゅうよっかづき)。幾望(きぼう)ともいう。
満月(まんげつ)15日頃・・・三五の月 (さんごのつき)。十五夜 (じゅうごや)。太陽とちょうど反対の位置にいる状態。影ができずに丸く見える。特に旧暦の八月十五夜 を、芋(里芋)を供えたことから芋名月とも。中秋の名月の「中秋」は旧暦九月が、旧暦の暦の上での秋である七月、八月、九月の真ん中であることから。
十六夜(いざよい)16日頃・・・不知夜月(いざよいづき)などともいう。一晩中月が出ているので、夜を知らないことから名づけられたとも。また「いざよい」とは、迷いためらうの意味も。満月よりも遅い月の出から、月がためらっているとして名づけられたといわれる。
立待月(たちまちづき)17日頃・・・月の出を立って待った事から。
居待月(いまちづき)18日頃・・・この「居」は座るの意。立って待つには遅い月の出を座って待った事から。
寝待月(ねまちづき)19日頃・・・臥待月(ふしまちづき)とも。さらに遅い月の出は寝て待たなくてはいけないことから。
更待月(ふけまちづき)20日頃・・・亥中の月 (いなかのつき)。夜更けに出てくることから。現在の午後22時頃。
下弦の月(かげんのつき)23日頃・・・上弦の月と反対の状態。二十三夜 (にじゅうさんや)。三日月待ち、十三夜待ち、十六夜待ちなどと並ぶ月待ち信仰の対象。月待ちとは、ある形の月が出てくるのを待つ風習で、供え物をしたり、拝んだりする。子宝を願ったり、子育ての無事を願う女性が集うことが多いという。
有明月(ありあけづき)26日頃・・・夜が明ける頃(有明)に出る月。残月 (ざんげつ)。
三十日月(みそかづき)30日頃・・晦日の月 (みそかのつき)。その月の最後の月の事。新月の頃。月が姿を見せず隠れることを月がこもるとし、「つきごもり」。それが転じて晦日(つごもり)となった。
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日本各地の月見の名所 DATA
- 信州姨捨: 長野県千曲市
- 松島: 宮城県宮城郡松島町
- 九段坂: 東京都千代田区
- 十六夜観月殿: 長野県埴科郡坂城町網掛区
- 月見堂: 長野県阿智村園原
- 松本城の月見櫓: 長野県松本市
- 伊賀上野城: 三重県伊賀上野
- 玄宮園: 滋賀県彦根市
- 石山寺: 滋賀県大津市石山寺1丁目
- 月見の森: 岐阜県海津市
- 桂離宮: 京都市西京区桂
- 大覚寺大沢池: 京都府京都市
- 渡月橋: 京都府京都市嵐山
- 姫路城: 兵庫県姫路市
- 岩国城と吉香公園: 山口県岩国市
- 満願寺: 島根県松江市
- 桂浜: 高知県高知市