日本の夜景風景

月光

月光

月の光のある風景

地球からの距離およそ38万4000キロ。表面積にして僅か地球の7%強しかない小さな衛星、「月」。しかし、太陽を除いてこれほどまでに私達の生活に影響を及ぼす星もない。潮の干満を始め、自然界の様々なリズムが月の満ち欠けに連動している。サンゴの産卵が月夜に行われるというのをご存知の方も多いだろう。何年も水族館の中の水槽に入れられていて、人工光しか浴びせられていないサンゴが、自然界のサンゴが産卵する月の晩に一斉に産卵したという記録もある。私達には図り知ることの出来ない大いなる自然界のリズム、月と連動する神秘的な生態系がそこにはあるのだ。

科学的に全てが解明されているわけではないが、生命体の心や身体に月が影響を与える、というのも古くから言われている事。特に満月が生命体に及ぼす影響に関しては古来より世界各地で様々なことが言われている。月を表す「Luna」という単語には、別に「狂気」という意味もある。統計によると、満月や新月の夜は救急車や警察の出動も多いという。自然環境のみならず、私達の健康や精神(感情)に深く関わっている月。美しく儚く、ときに妖艶で神秘的。そんな月の光のある風景をお届けしよう。

月光

午前4時。山の向こうに月が沈んでいく。
湖面を漂う霧が月光に照らし出されて幻想的に浮かび上がる。

月見

古くから満月を拝する風習のあった日本では、信仰の対象として、また縁起物として月を見る「観月」が昔から行われてきた。満月は五穀豊穣のシンボルであり、月の光には神性が宿るものと信じられていたのである。特に稲のたわわに実る頃に見る十五夜の月は特別なものであった。この十五夜の観月の風習は元々、大陸から渡ってきたものといわれている。大陸で観月の際に作られる「月餅」が、日本伝来と共に「月見団子」に変わっていき、次第に団子(感謝の意と翌年の豊穣の願い・・・関東では丸型の団子、関西では先細りの餅に餡を巻いたもの)とススキ(ススキには魔よけの力があるとされた)、御神酒などを「お月様」に供える風習が出来上がっていく。渡来人や大陸から帰朝した人々により宮中に伝わった雅な観月の行事はこうして一般の人々にも広まっていった。

さらに日本独特の風習として「十三夜」がある。これは旧暦の九月十三日に観月をする風習で、栗や豆を供える事も多く「栗名月」や「豆名月」などとも呼ばれるもの。由来には諸説あるが、有力なのが平安時代の天皇である宇多天皇が旧暦九月十三日の月を愛でこれを賞したことが始まりというもの。また、もう少し後の醍醐天皇の時代に開かれた「観月の宴」が次第に風習化したものだという説もある。

月光の降る風景をフルスクリーンで見る

月光

神奈川県横須賀市

月の様々な呼び名

望月(ぼうげつ・もちづき)・・・満月の事。藤原道長の「この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしとおもえば」は有名。

盈月(えいげつ)・・・盈とは、「みちる・みたす・いっぱいになる。」の意。すなわち満月の事。

新月(しんげつ)1日頃・・・太陽と月が同じ方向になって見えない状態。

繊月(せんげつ)2日頃・・・線の様に細い月。日没後の残照淡い西空に見える。

三日月 (みかづき)3日頃・・・一般的に最初に見える月。始めに見えることから、初月(ういづき)・若月 (わかづき)などの名も。また眉月 (まゆづき)・蛾眉(がび)などとも呼ばれる。古来信仰の対象であった。

上弦の月(じょうげんのつき)7日頃・・・その形から、弓に見立てて弦が上に来るというので上弦の月。夕方西の空に見える。その他、七日月 (なのかづき)・弦月 (ゆみはりづき)とも。

十日夜の月(とおかんやのつき)10日頃・・・上弦の月よりも若干ふくらんだ状態の月。

十三夜月(じゅうさんやづき)13日頃・・・後の月 (のちのつき)。満月に次いで美しいとされる。特に旧暦の十三夜を栗名月 (くりめいげつ)・豆名月 (まめめいげつ)と呼ぶ。

小望月(こもちづき)14日頃・・・満月の前の夜の月。十四日月 (じゅうよっかづき)。幾望(きぼう)ともいう。

満月(まんげつ)15日頃・・・三五の月 (さんごのつき)。十五夜 (じゅうごや)。太陽とちょうど反対の位置にいる状態。影ができずに丸く見える。特に旧暦の八月十五夜 を、芋(里芋)を供えたことから芋名月とも。中秋の名月の「中秋」は旧暦九月が、旧暦の暦の上での秋である七月、八月、九月の真ん中であることから。

十六夜(いざよい)16日頃・・・不知夜月(いざよいづき)などともいう。一晩中月が出ているので、夜を知らないことから名づけられたとも。また「いざよい」とは、迷いためらうの意味も。満月よりも遅い月の出から、月がためらっているとして名づけられたといわれる。

立待月(たちまちづき)17日頃・・・月の出を立って待った事から。

居待月(いまちづき)18日頃・・・この「居」は座るの意。立って待つには遅い月の出を座って待った事から。

寝待月(ねまちづき)19日頃・・・臥待月(ふしまちづき)とも。さらに遅い月の出は寝て待たなくてはいけないことから。

更待月(ふけまちづき)20日頃・・・亥中の月 (いなかのつき)。夜更けに出てくることから。現在の午後22時頃。

下弦の月(かげんのつき)23日頃・・・上弦の月と反対の状態。二十三夜 (にじゅうさんや)。三日月待ち、十三夜待ち、十六夜待ちなどと並ぶ月待ち信仰の対象。月待ちとは、ある形の月が出てくるのを待つ風習で、供え物をしたり、拝んだりする。子宝を願ったり、子育ての無事を願う女性が集うことが多いという。

有明月(ありあけづき)26日頃・・・夜が明ける頃(有明)に出る月。残月 (ざんげつ)。

三十日月(みそかづき)30日頃・・晦日の月 (みそかのつき)。その月の最後の月の事。新月の頃。月が姿を見せず隠れることを月がこもるとし、「つきごもり」。それが転じて晦日(つごもり)となった。

月光

和歌山県東牟婁郡串本町「橋杭岩」

月光

東京都奥多摩町

「木の間よりもりくる月のかげ見れば心づくしの秋は来にけり」

月光

長野県諏訪市「諏訪湖」

   
    

    

月光

秋田県「田沢湖畔」

それはまるで真夜中の太陽の様に、周囲を明るく照らす。世界はただ静かに息を呑む。

月光

神奈川県鎌倉市「鶴岡八幡宮」

昼間は多くの観光客でごったがえす鎌倉の町も静けさに包まれて、
月がこうこうと輝き、八幡様の「二の鳥居」を照らしていた。

   
    

月光

まるで「月へと続く道」の様に、道路は月にむかってまっすぐ延びる。

   
    

月光

日本一の山の頂上を目指す人々を見守るかのように、
山小屋には優しく燈が灯る。
そして上空には雲間から顔を出したお月様。

月光

長崎県島原市「島原城」

東の空が少しずつ明るみ始め、お城の木々のシルエットが浮かび上がる。
目を凝らすと、木々の合間に有明の月が輝いていた。

月光

京都府京都市東山区「法観寺・八坂の塔」

美しさの前に言葉は要らない。ただ静かに佇んで眺めるだけでいい。
時にはそっと目を閉じて月の光が降りてくるのを身体で感じてみるのもいい。

月光

熊本県阿蘇郡小国町

残照輝く西の空に、月美しく。

   

月光

神奈川県藤沢市

夜明け前に、月は一際赤くなった。少しずつ夜は明けて、釣り人たちは静かに佇む。

   

月光

和歌山県東牟婁郡「紀伊大島」

月光

千葉県銚子市

   

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Japan Web Magazine 編集部

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