朝日にきらめく温根沼
公開日: 2015年10月8日 | 最終更新日 2022年10月18日
根室半島の付け根部分にある温根沼(おんねとう)は、面積約5.7平方キロメートル、周囲長約15キロメートルの沼。周囲にエゾマツ・アカエゾマツが生える豊かな自然環境の中、数多くの野鳥が飛来する場所として知られ、秋から春にかけてはハクチョウの姿を目にすることもできる。
北海道には、オコタンペ湖、東雲湖と共に「北海道三大秘湖」の一つに数えられるオンネトー(足寄町の東部)や、根室市牧の内にある温根沼など、同音の「オンネトー」があるが、いずれもアイヌ語で「大きな」「年老いた」を意味する「オンネ」と「湖や沼」を意味する「トー」が合わさってできた呼び名だ。
ところで、皆さんは、湖、沼、池の違いはご存じだろうか。実際には、「湖」「沼」「池」という言葉に厳密な定義はなく、あいまいな部分もあるのだが、大まかにいうと、湖は水深5メートル以上で植物が生えていない部分(中央の深い部分等)があるもの、沼は水深が浅く、最深部にいたるまでほぼ全体に渡って植物が生えているもの、池は天然(不忍池、神の子池など)または人工(満濃池など)で地面にできたくぼみに湧水や地下水、雨水などがたまったもので、湖沼よりも小さく浅いもの、というような定義がされている。「池」とつくものとしては日本最大の広さを持つ鳥取県の湖山池など、学問上の分類と呼び名が違うものもあるが、大抵はこれらの定義にあてはめられている。
写真の温根沼も、ぱっと見は「入り江」にも見えるほどの大きさを持ち、「沼」と呼ぶには多少の違和感を伴うが、流入するオンネベツ川の水の流れによる「みお筋」(最深部7.3メートル)はあるものの、全体的に浅く、一番深い所でも水深が1.8メートルほどしかない。よって「沼」が正解というわけだ。
「沼」ではあるものの温根沼には海水が流入する汽水域がある上、水深が浅い為に潮が引くと広大な干潟があらわれ、そこではアサリや北寄貝などを獲ることもできる。また、カレイ、カキ、ホッカイシマエビが獲れる豊かな漁場でもあるのだ。
今日の一枚は、そんな温根沼を、国道44号線、通称「根釧国道」から見た風景。朝日を浴びて温根沼の水がきらきらと煌めく。北海道の夏の素晴らしさや冬の美しさは知られているが、秋の魅力もまた素晴らしくおすすめだ。観光客がぐっと減って比較的静かになった秋の一日、つかの間ではあるものの一際鮮やかな紅葉を見せる山々や、こんな風景を目にしながら、一人ドライブするのもまた楽しい。