日本の秋風景

日本の秋

日本の秋

「手の平に ひらりもみじが 舞い降りる」

日本各地の秋の風景

日本人は古の昔から秋を愛でて来た。秋の音、秋の光、秋の風・・・暑い夏が終わった後の安堵感と一抹の寂しさ。秋に誰しもが感じる寂寥感は、これから来る寒くて長い冬を身体のどこかが憂いてのものか、はたまた過ぎ去ってしまったものたちへの郷愁の念か。

赤や黄色に色づいた木々達は風に揺れ、カラフルな折り紙のような葉は、はらはらと舞い落ちる。まるで錦の反物を広げたように世界は色とりどりに染まっていく。華やかで明るい春とはまた違った、趣のある落ち着いた美。そして、儚さ。日本の美しい情景はここに極まる。JWMセレクション・・・「日本の秋の風景」

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モミジ

十一月  東京奥多摩

落ち葉の中に、露に濡れて艶やかに光るモミジの葉っぱを発見。てっきりそれも落ち葉だと思ったら、しっかり地面に根を生やしていた。今夏に芽を出したばかりなのだろうか。こんなに小さくても健気に色づいて秋の訪れを告げていた。

「わらぼっち」

十月  岩手

稲を刈り取った後、藁を束ねて逆さまにし三角形にして、刈り取った後の田んぼに干す。「わらぼっち」のほか「とや立て」や「わら立て」とも呼ばれる藁の三角形がずらっと並んでいる様は中々壮観だ。乾燥させた藁は、俵や筵(むしろ)、縄などを作るために使われる。

「あけび」

十月  長野

薄紫色のあけびの実は山の恵みの味。種の周りの果肉は甘く、子供たちのおやつに、ほろ苦い外側の皮は詰め物をして山菜料理の具材となる。蔓は籠を編むのに使われ、茎は生薬となる。山に分け入る人々は、あますことなくこの植物の可能性を引き出すのだ。

「小豆島」

十月  香川

瀬戸内にある小豆島の中ほどに棚田が広がっている場所がある。いったいどうやって作ったのだろうと思うほどの場所に、段差をつけて田んぼはある。昔の人々の労苦は並大抵のものではなかっただろう。刈り取られた後の稲株が曲線を描きながら続いていた。

「花貫」

十月  茨城

小さな小さな川のほとりに座って、さらさらと流れゆく清水を見ていた。右手側は水溜りになっていて、もみじの葉が一枚、その美しさの最大の時に、そのまま固められてしまったかのように水底に沈んでいた。左手前には様々な色をしたもみじの葉が折り重なったり手をつないだりしながら並んでいる。対岸に生える木々の、まるで線で引いたようなすっとした幹影が美しい。ぽちゃんと投げ込んだ石は、水面に綺麗な波紋を描く。それは音もなく広がっていき、すうっと消えていった。

「稲干し」

十月  熊本

灌漑用水確保の為に造られた通潤橋は難工事の末江戸時代に完成した。肥後の石工の高い技術と近隣農民達の労働の結晶は百五十年経った今も現役として活躍している。運ばれた水で潤う大地に実った稲が刈り取られて太陽の光を浴びていた。

「紅葉」

十一月  京都

春の桜と並んで、「もののあわれ」を具現化する秋の紅葉。もし、日本の木々が秋になっても全くもって緑のままであったなら、「源氏物語」を始めとする数々の名作は生まれなかったのではないだろうか。自然は形を変え色を変え人々の心に何かを残してゆく。季節の風を謳いながら。

「宝匡院」

十一月  京都

街中の喧騒はここには届いてこない。静けさにほっとして、畳の上に一人座ってみる。窓の外に広がる美しい庭園。色づいた木々が風に揺れている。赤にはこんなにも色々な色があることを初めて知った瞬間。

「蔵王」

十月  山形・宮城

下界よりも一足早く、蔵王の山々は美しく色づいていた。軽やかな色をしたススキが夕日を浴びて輝きながら、優雅に風に揺られている。その秋色の風は、なぜか、懐かしい子供の頃の記憶を運んできた。

「柿」

十一月  福島

表に出てふと見上げると、穏やかな陽光を浴びて柿たちが優しい色で並んでいた。想いはそこに届かなくても、いつか何かが変わるだろう。なぜか突然そう思えた。ぴぴぴぴぴっと小鳥が囀る。秋の午後は静かに過ぎていく。

日本各地の秋の風景




































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