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蕪島神社とうみねこたち

蕪島とウミネコ

その場所を初めて訪れる映画ファンなら、まずヒッチコックの「鳥」を思い出すに違いない。見渡す限り、ウミネコで埋め尽くされている。その圧倒的な数は、まさに恐怖でさえある。一羽一羽見ればかわいい鳥も、ある程度の数を越してしまえば、かわいさなんて吹き飛んでしまうのだ。くちばしや目の鋭さ。上から落ちてくる糞。とはいえ、やっぱりよく見れば愛らしくもある。特によちよちと歩く雛はキュートだ。この場所では、そんな「キュート」と「怖さ」が行ったり来たりする。

青森県八戸市鮫町にある島「蕪島」は、昔からウミネコの繁殖地として知られるところで、面積約1.8ヘクタールあまりの島(とはいっても埋め立てられて地続きになっている)に、およそ4万羽のウミネコが生息している。ウミネコは春の訪れを告げる鳥として知られ、蕪島には2月の末頃やってきて、8月の中頃まで営巣し、子育てをして暮らしている。

ウミネコは、通常断崖絶壁などに巣を作る事が殆どで、巣を間近で観察できるのは珍しくこの蕪島は国内でも唯一の場所といわれる所。観光ガイドにも載っているので、遠方からも観光客がやってくるが、車やタクシーでやってくる観光客たちも車を降りる際、そのあまりにも異様な光景に一瞬、二瞬、たじろいでいる。そして、意を決したように車から出ると早歩きで階段を上っていくのだが、皆肩をすぼめ、頭をかがめている。ウミネコたちは、車の屋根に乗ったり、地面にずらりと並んだりやりたい放題だ。でも、よく見ればかわいい。心は揺れる。

なぜ、この蕪島にこれほどの数のウミネコがやってくるようになったのかはわかっていないというが、ウミネコは魚の居場所を教えてくれる鳥として地元の漁師に大切にされており、島には神社が建てられ篤く信仰されている。

ちなみに誰が置いたか、階段のそばにビニール傘がありやはりそれを広げていくと少し安心する。訪れる際は、糞で汚れても気にしない格好で行くか、置き傘がないことも考慮して、自前の傘を持っていくと心強い。

撮影場所

Japan Web Magazine 編集部

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