北海道風景

花のある風景

花のある風景

五月の風に揺れる花々

北海道余市郡仁木町大江

ニッカウヰスキーの創業地として知られる余市の町から車でのんびり走ること20分。ある小さな町の一画に差し掛かったとき、ふと前方左手の風景が突如目に飛び込んできた。それはまるですうっと両目が吸い込まれるような不思議な感覚だった。それまでも道の両側には、北海道らしいのどかで美しい風景はずっと広がっていたのだが、その一画はことさらに平和で静かな美しさを放ち、それでいて一切の押し付けがましさのない穏やかで心地よい雰囲気に包まれていた。

風にゆらゆら揺れる赤や黄色のチューリップ。その周囲を取り囲むようにして、咲き乱れるエゾタンポポ。そのむこうに淡い赤色と水色の屋根の木造校舎が見える。広い校庭で遊ぶ数人の子供たちの声。冗談みたいに低い校門と錆びかかった柵。鯉のぼりを外されたポールの矢車がからからと回っている音がする。

それは、いつかどこかで見た夢の光景に似ていた。光と風と物質と世界が、完璧なバランスとタイミングでもってそこにあった。

花のある風景
花のある風景
花のある風景

気持ちよい五月の光を全身に浴びながら、風にその身を揺らす花々は、長くて寒い季節をじっと耐え抜いたもののみが持つ小さな躍動感に満ち満ちていた。それは命のほとばしり。生命の歓喜。あっという間に過ぎ去ってしまう北国の夏の序章。

一瞬の鮮烈なるイメージが、続いていく人生の糧になる。だから人は旅に出る。

Memo

山口県からの入植者、21戸、86人によって始まったといわれる仁木町大江。集落の名前は、毛利氏の祖先とされる大江広元にちなむとか。仁木町の人口は約3,600人。現在は、さくらんぼ、ぶどうなどの果樹栽培が盛んな町だ。記事内の小学校「大江小学校」は羊蹄国道(国道5号線)沿い、余市市街から走ると進行方向左手にある。(大江小学校は平成23年3月、118年の歴史をもって閉校。)

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大江小学校

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周辺の観光・見所

フルーツパークにき

沢山の果実を全国に出荷する仁木町で、自然と果物にふれながら過ごせる場所として誕生した国内でも珍しい果物をテーマにした農村公園。広大な敷地内には仁木町の特産品を扱う売店、カフェ・レストラン、コテージ、ドッグラン、展望ジャンボ滑り台等がある。

ふれあい遊トピア公園

子供からお年寄りまで楽しめるスポーツ施設がアウトドアスポーツエリア。バーベキュー施設完備、パークゴルフに野球場、アスレチック等、充実の施設で、子供からお年寄まで楽しめる。

北明山仁玄寺

明治39年開基の高野山真言宗派の寺院。北海道三十三観音霊場6番札所。

余市川

北限の鮎釣りが楽しめる。シーズンには多くの釣り人が雄大な自然の中で釣りを楽しんでいる。鮎釣りのほか、ウグイ、カワガレイ、ヤツメウナギ、コイ、ヤマメ、イワナ、ニジマス等の釣りも楽しめる。秋の鮎見橋周辺では数千~数万という鮭が溯上、川を埋め尽くす様子は圧巻。

ニッカウヰスキー 余市蒸溜所

ニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝がウイスキー作りの理想の地を追い求めてたどり着いたのが、ここ余市。蒸留所の開設は1934年。ジャパニーズウイスキーの聖地の一つだ。蒸留所内は無料で見学可。見学後は、シングルモルト余市10年・鶴17年・アップルワインを各1杯ずつ合計一人3杯まで試飲ができる。

JAPAN WEB MAGAZINE Tomo Oi

浅草在住。ウニとホヤと山と日本酒をこよなく愛しています。落語好き。

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