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じゃっぱ汁

じゃっぱ汁

極寒の季節の滋味

知らない人にとっては、耳慣れない響きの言葉「じゃっぱ」。津軽弁で雑把(ざっぱ)のことだ。雑把とは「雑にまとめられた一まとまりのもの」。普段、大雑把(おおざっぱ)などと使われるアレである。転じて、屑や残り物、不要なものなどの意もある。魚をおろして身を取った後の頭や内臓、骨など、いわゆる「アラ」のこともこう呼ぶ。「じゃっぱ汁」とはその名の通り、「じゃっぱ」を使って作った「汁もの」のこと。魚、特に鱈や鮭のアラで作った汁の事だ。この「じゃっぱ汁」こそ、津軽の冬を代表する味覚なのである。

じゃっぱ汁

強烈なまでに濃厚な旨みと甘みとコク。じんわりほっこり身体に染み渡る。温かさと幸せが胃から全身に広がりじわじわと充満していく。深みのある強い味わい。うっかりすると負けてしまいそうになる。そんな「じゃっぱ汁」のキモは、(シャレではないが)魚の肝(きも)を汁に溶かし込む事。これが、じゃっぱ汁のただならぬコクと旨みを生み出す元となる。特に脂ののった冬のマダラの肝。もちろん新鮮なものだ。これが溶かし込まれた「じゃっぱ汁」のねっとりと絡みつくような濃厚さはときに官能的ですらある。そのエキスたっぷりの汁に入れる具はシンプルでいい。根菜と葱。それだけ。当然、本来はざっかけな家庭の食べ物だから、それぞれの家、それぞれの味があり、具材がある。これは各人の好みだ。店で頂く場合には、アラだけではなく、魚の身も入っているだろう。そして。じゃっぱ汁に欠かせないもの。是非とも入っていて欲しい物。それはやはり何といっても、とれとれ新鮮な「タヅ」(白子)。濃厚な汁に濃厚なタヅ。どろっとした汁に、とろりとした白子。もう最高である。至福である。絶頂である。きゅっと地酒を流し込んだなら、「うーむ」と唸ったまま、言葉も出ないだろう。血液に喜びは流れ込み、細胞は快楽へと邁進し、脳幹がしばし震える。厳しい北国の冬の寒さを吹き飛ばすには、まさにこの目くるめく「歓喜」が必要なのだ。

    

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Japan Web Magazine 編集部

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