
島は不思議だ。島には他にはない独特の魅力がある。周りを海に囲まれているがゆえの限定的空間。その中で、形成される独自の文化。食習慣や祭礼、歌や踊り、服装に言語。例えば、宮古島近辺の島々では、島ごとに言葉が異なるという。沖縄県外の人は、沖縄本島も、石垣島も、宮古島も同じように言葉を話しているイメージがある。しかし、実際には、沖縄本島の人が、宮古島に行くと、何を話しているか判らない時があるほど、言葉が違うという。さらに、その周辺の島々で、また言葉が違うというのだ。宗教的儀式の独自性も見逃せない。例えば、トカラ列島の悪石島の仮面神「ボゼ」。インドネシアあたりの神を髣髴とさせるその姿はトカラ列島の中でもこの島でしかみられないものだ。また島内に多くの部外者立ち入り禁止の聖域を持つ大神島のような島も少なくはない。島という環境ならではの、「交通の限定」と「情報の限定」が、このように島独自の文化を生んで来たのである。
一方、島という環境は、見方を変えれば、閉鎖的、排他的な部分もある。島民以外を中々受け入れない。観光客はおろか、移住してきた人でもすぐには受け入れない。ある島で出会った人がこう語っていたことがある。「この島に移住してきて、20年以上になる。表向きは、皆明るく親切で、仲良くしてくれるが、どこかで、決定的に受け入れてもらえない部分がある・・・。」と。考えてみれば、それも当然のことなのかもしれない。島民以外の人間がいつ何時(なんどき)平和な暮らしにトラブルを持ち込むか判らないのだ。その警戒心は、外部から来て何年も島に住んでいる人に対してさえも、簡単にとけるものではない。島という場所の特性上、そしてそれが小さければ小さい島であるほど、きっと部外者に対して、簡単に心を許せるものではないのだ。必然的に保守的にならざるを得ないのである。
あのムーミンの作者トーベ・ヤンソンも、30年以上に渡って創作の場としていたバルト海の小さな離れ小島「クルーヴ・ハル島」の生活を、「島に船が着くたびに、独特の緊張感に包まれたものだ」と回想している。そう、島の人々にとっては、海を渡ってやってくる人々は完全な部外者でしかない。闖入者でしかないのだ。それは観光でもっている島であっても同じこと。周囲を海に囲まれている「島」という陸は、そのものが一つの聖域みたいなものなのだ。
だからこそきっと、外部から島を訪れる人間は、島の人々の生活を尊重し、その文化に敬意を払い、気持ちを汲み取り、自分達が思うよりも少し余計に気を使う必要がある。誰だって自分の家に知らない人がずかずか入ってきたら嫌な気がするだろう。島の人々にとっては、島全体が家のようなもの。それを尊重しなくてはいけない。しかし、逆にその基本的な部分さえ押さえれば、島の人々は温かい笑顔で迎えてくれる。全てを受け入れてくれることはなくとも、きっと都会よりは遙かに温かく受け入れてくれるだろう。そして、島で、今までに無い経験をすることが出来るだろう。見たこともない食べ物や、デザインや、花や虫や、聞いたことの無い言葉や唄や風。そんなものに他よりも出会える可能性の大きい場所、それが島でもあるのだ。そして、そんな島の魅力に一度嵌ってしまったら、そう簡単に抜け出せるものではない。何度でも通いたくなってしまう。未知なる他の島に行きたくなってしまう。さらなる魅力を求めて、さらなる感動を求めて。そうして島に嵌ってゆく。まさにそれこそが島の魔力。抗えない魅力。島の保守的、排他的、閉鎖的な感覚と、目には見えない緊張感の上に成り立つ絶妙なバランス、そして島の人々が持っている優しさと温かさと素朴さと頑なさ、それらがあわさって島の大きな魅力になっているのである。
そもそも「島」とはなんだろう。単なる岩や岩礁、珊瑚礁と島との違いとは?
国際的には、海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)第121条で定義される「島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるもの」で、オーストラリアよりも小さな陸地のことを指す。海上保安庁の定義によると「島」とは「周囲を水で囲まれた外周0.1km以上の陸地(埋立地は除外)で、本土と繋がっていても、橋や防波堤以上の広い構造物では繋がっていないもの」、となっている。それに基づいてカウントされた日本の島の総数は6852。
日本の6852ある島のうち、人が住んでいる有人島は421(北海道・本州・四国・九州・沖縄本島を除く)。残りは無人島だ。人が一番多く住んでいる島は、淡路島でおよそ16万人。逆に有人島で人口の少ない島はというと、沖縄県の外離島の1人(2000年現在)。そのほか1985年ごろのデータだが、宮城県金華山島4名、岡山県鶴島2名、黒島6名、大久野島7名、猪子島2名、山口県仙島4名、香川県牛首ヶ島6名、家島4名、愛媛県豊島4名、比岐島7名、大分県黒島8名、長崎県妻ヶ島2名、熊本県瀬島1名、沖縄県由布島6名という数字がある。人が生きていくためには、最低限の食料と水の確保が不可欠で、小さい島になればなるほど、その確保は困難になる。人口減少などで、インフラが絶たれてしまっては、生きていかれず、島の人々は島を離れるしかない。小さな島の生活は想像以上に大変なのだ。
北海道・本州・四国・九州・沖縄島を除いた日本の島の人口top10
(1997年当時のデータ)
北海道・本州・四国・九州を除いた日本の島の面積top20
沖縄本島をはじめとして奄美大島や屋久島、佐渡島など、大きな島には空港があり定期便も飛んでいる。しかし、島への交通として最も一般的なのはフェリーだろう。島の人々の生活に密着しているのもフェリー。生活必需品など島への物資が運ばれるのもフェリーであることが多い。大海原を近くに感じながら物思いに耽るのも一興。何かと忙しい現代、たまにはゆっくりと移動するのもオススメだ。また、種子島や屋久島、福江島、佐渡島などへはジェットフォイルと呼ばれる水上を飛ぶようにして行く高速船が結んでおり、料金は通常のフェリーに比べ割高ながら、渡航時間を短縮する事が出来る。定期船の他、二次離島と呼ばれる「離島の離島」へは地元の漁師やツアー会社などが出す数人乗りのチャーター便もある。いずれにせよ、島毎によって事情は異なるので、(特に小さな島に出かける際には)事前に情報を得るのは必須。さらに、船は(小さな島では特に)本数も多くなく、天候次第では欠航になる事も多い。場合によっては数日足止めを食ってしまう事もある。スケジュールには余裕をもたせたい。
比較的大きな島へは車ごと船で行く事が出来る。運賃はそれなりにかかってしまうが、島内での移動の自由度が格段にあがる事はいうまでもない。その他大きな島ならば、大手レンタカーの営業所、比較的小さな島でも地元のレンタカーがある場合も多い。宿に予約を入れている場合は、かなりの割合で港に迎えに来てくれる。また本数はそれほど多くない可能性もあるが、フェリーの出入港にあわせてバスが運行している場合も。その他、レンタバイク、レンタサイクル、タクシーなどを臨機応変に使うと効率よく移動する事が出来る。小さな島ならば勿論徒歩で。
面積も大きく人口も多い沖縄本島や佐渡島、淡路島、小豆島、屋久島、奄美大島などは例外として、離島にはATMは勿論銀行がないところも少なくない。当然コンビニもない。かといって多額の現金を持ち歩くのも無用心。そんな時におすすめなのが郵便局だ。銀行がなくとも人の住んでいる島ならば、郵便局がある場合が多く、現金の引き出しに使える。
人口の多い島なら、コンビニやスーパーが普通にあり、生鮮食料品も特に問題なく手に入れることが出来る。が、人口が1000人を切るような島では随分と事情が異なるので、事前に調べておきたい。島の役場の観光課や宿に聞けば、色々と教えてくれるだろう。
大きな島は別として、島はあまり水事情がよくないことが多い。特に南方の島では、その地で生まれ育った人には平気でも、外部から訪れた人には、飲み水に限らず、シャワーや洗顔など水が文字通り肌に合わないこともあるという。永住するつもりで島に移り住んで、人や食べものはすぐに慣れたのだが、どうにも水が合わずに引き払ったという話も。旅行者にはあまり関係のない話かもしれないが、一応頭の片隅に入れておくといいだろう。
島は、外界から閉ざされているというその環境ゆえ、独自の文化を持っていることが多く、食文化についても同様の事が言える。初めて訪れた島では、今までに見た事もない食べ物や飲み物に出会う事も多々あるだろう。海産物、野菜、果物そして飲み物。島ならではの素材、島ならではの味。そんな未知なる物への好奇心をより自由に解放できる人、見知らぬものへの探究心溢れる人のほうが島での滞在を楽しむことが出来るのは言うまでもない。
島寿司
亀の煮込み(左)と刺身(右)
リゾート開発されている島や観光客の多く訪れる島には大型のホテルもあるが、小さな島では民宿や旅館が一般的。「観光ホテル」と名がついていても、平屋の10部屋ほどの建物である場合もある。小さくて設備も整っていない事もあるかもしれないが、それすらも旅の醍醐味として楽しめるとステキだ。都会の人には不自由な事も島では当たり前の事もある。郷に入っては郷に従え、ではないが、過度の期待や要求をせず、その地に溶け込み馴染もうとする心も大切。現地の人々の生活スタイルを尊重する心を持てば、おのずと温かいもてなしや心遣いに触れる機会も増えるだろう。また、島の自然環境や人々の生活を守る為にも、島外から持ち込んだ物はゴミになっても持ち帰る気持ちが粋。
宿の食事は、一泊二食付きならば、島で獲れた新鮮な素材を使った料理を期待したいところ。見慣れない食材を使った品が出たら、旅もさらに盛り上がるだろう。それが美味しかったならなおさらのこと。小さな島では、高級旅館を除いて、部屋食はあまりなく食堂で宿泊客揃って食べるスタイルが殆ど。行きずりの旅人と話をしながらお酒を飲むのもまた楽しい。
素泊まりの場合、自炊するのでなければ外に食べに行く事になるだろう。しかし、島では(小さな島では特に顕著だが)驚くほどに飲食店が少なく、満席では入れなかったり、食べたいものがなくなっていたりする場合も少なくない。また本やインターネットで情報を持っていても、急な休みだったり、早仕舞いだったりと、最悪ひもじい思いをしたまま眠りにつかなくてはいけない可能性もある。是非とも明るいうちに店のめぼしを付け、店に直接、または地元の人などに聞くなど間接的にでも確認を取っておいたほうが無難。繰り返しになるが小さな離島にはコンビニなんてないのだ。いざ、飲食店がどこもやっていなくても(宿などに雑貨店が併設されてでも居ない限り)必要なものも翌日まで購入できないのだ。飲み物も含めた、いざという時の食料もある程度の余裕をもって確保しておきたい。