福江島

福江島

祈りの島 花の国

「五島へと皆行きたがる。五島やさしや、土地までも」~(五島の俗謡)

人々は平安の地を求めてその島を目指した。ただ祈りをささげるその為に。

福江島はその日、厚い雲に覆われていた。時折ぱらつく雨が飛行機の窓に当たる。出発予定時刻を遅れること一時間。空港を飛び立って一眠りもしないうちに飛行機は高度を下げはじめた。ニュースは台風の襲来を告げていた。灰色の世界。どこまでも沈みゆく倦怠が世界を支配しているような色だ。気だるさが肩の後ろに張り付いて数秒。ゆっくりとした諦めが、じわりと全てを包みこんでゆくような錯覚を覚える。空は静かに重く澱んでいる。

ぼんやり外を眺めていると、雲の切れ間から島影が見えてきた。福江島だろうか。それとも五百九十四もあるという長崎県の島のどれかだろうか。うち五百あまりは無人島だという。目に映るのは人が住む島か。鳥が住む島か。

機体は高度をさらに下げながら機首を少しもたげた。エンジンの出力を上げる音が腹を揺るがせる。

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ウラジオストックの空港を思い出させるようなこじんまりとした空港に降り立つと、俄かに雨が激しくなった。生暖かい風が吹き抜ける。しばし空を仰ぎ見る。

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空港そばの店で五島ウドンとサバ寿司を頬張ってから、車で町に出た。雨は降ったりやんだりを繰り返す。地面は黒くぬれている。

数分も走ると石田城(福江城)の石垣が見えてきた。完成までに十五年を要したという日本唯一の海城の城址。今は門と石垣が残るのみで、当時の面影はないが、立派な石積みの城壁と堀がその存在を証する。城のすぐそばには、武家屋敷通りがある。かつての五島藩士たちが暮らした場所だ。独特の形状をした石垣が今も残る。

石田城址
武家屋敷通り
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福江島

地形と歴史

福江島を高いところから見るとその山がちの地形がまず目に入る。地図で見ても東側には平野が広がっているのだが海岸線を除いて大部分が山地であることがわかる。人口およそ四万八千人。東西45キロ南北30キロ、日本では11番目に大きい島だ。

140余りの島々からなる五島列島最大の島である福江島は長崎からおよそ百キロ西の海上にある。古くは遣唐使の寄港地として、また明との貿易の拠点として重要な役割を担ってきた。

そんな歴史のある島ゆえだろう。かの空海ゆかりの場所もある。空海が明け方に吉兆をみたという明星院がそれだ。遠く、飛鳥時代作といわれる像もある。

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食べ物

また福江島とその周辺海域は、九州の人達の間ではとにかく魚が美味しいことで有名だという。釣りをする為に福江島を訪れる人も多い。あご(トビウオ)を始めとした様々な魚が水揚げされ、漁業はこの島の主産業の一つになっている。

そのほか豊かな自然の中で育てられる五島牛や日本三大うどんにも数えられる五島うどん、サツマイモを切ってゆで、天日に干した「カンコロ」を使って作るカンコロもち、珍味カラスミ、かつおの生節、海水のにがり成分を使って作られる潮豆腐、ぶりにするめにきびなごと、まさに食の宝庫である。

福江島及び五島列島の食べ物

五島列島 
五島うどん | 五島牛かルビ(タレ) | 飛魚の刺身 | 飛魚の塩焼き | 五島牛カルビ(塩)
| あご丸干し | かんころもち

福江島福江島

島とキリシタン

十八世紀の終わり頃、五島には大村藩から移住する人々が多くいた。耕地が少なく、人手が余っていた大村に、耕地はあるが人手のない五島が移民の申し入れをしたのである。大村や外海には隠れキリシタンが多数いて、比較的迫害の緩いといわれていた五島に移住を希望する人たちが後を絶たなかったそうである。その数は三千とも言われ、彼らの子孫が現在福江島を始めとする五島列島の各所に存在する教会を守っている。

今日、五島列島にはおよそ五十の教会が存在する。

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島の西北部、三井楽。そこに遣唐使が立ち寄ったという浜がある。
海岸線の細い道。
流れ着いたブイが転がる。

訪れる観光客もあまりいないであろう、渺茫とした景色が広がっていた。その海岸沿いの道から、少し上がった丘の上に、ひっそりとキリシタン墓地があった。アジサイの花が咲き、十字の形をした墓石が静かに海を見つめている。それはとても静かで、とても穏やかな光景。艱難辛苦のかけらもなく、海はただただ鳴いていた。

人はいつか死んでしまう。それを素直に受け入れる受け入れざるとにかかわらず。時間は流れ、記憶もいつしか薄まっていく。人が物を忘れなければ生きてはいけないように、時間は容赦なく歴史を消していってしまう。後には塵の一握りも残りはしない。ただ、時の狭間に引っかかったような優しい切なさが残るだけだ。温かい哀しみが残るだけだ。それでも、人の想いは完全には消えないのだろう。どこかに少しずつたまって波に洗われて、磨耗しながらまろびながら、それはやがて輝いて、はじけ飛んでゆく。

潮の引いた磯を歩いていると、突如、分厚く空を覆っていた雲が割れ、燦然と日の光が差し込んだ。見る間に雲は晴れ、青空さえ顔を見せる。

それは、夢幻の事だった。
見る間に空はかきくもり、また悲しげに涙を流した。
その神々しい光景は、息をするのを忘れるほどだった。
全てを忘れ、
呆然とただ立ち尽くすのに、
十分な美しさだった。

福江島

自然豊かな美しい島。青い海と白い雲。夏になれば、海水浴客で賑わうビーチも点在する。美味溢れ、魅力尽きせぬ島である。

憂いを知らぬ人が、深みに欠けるように、悲哀の歴史と痛みをその懐に抱えているからこそ、簡単には忘れえぬ魅力を持つ地であるのかもしれない。

人々の優しさと温かさ
色淡い可憐な花
草いきれ 木のぬくもり
道路をとことことカニが渡ってゆく

存在はやがて潰えても
人の想いは消えはせぬ
寄せては返す波だけが
全てを静かに見つめている
悲しみも全部飲み込んで
美しさをただ携えて

福江島
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