富士宮焼きそば

富士宮焼きそば

富士の麓のご当地グルメ

少し透明感がある麺が投入され炒められていくうちに、しっとりとした美味しそうな色へと変わっていく。鉄板ではすでに熱せられたラードで肉かす(ラードをしぽった後の残滓)が香りを引き出され、それでキャベツが炒められている。じゅージュワー、もわもわん。威勢のいい音と、芳ばしい香りがあたりを包む。なぜ、こうも食材に火が入れられている時の音は幸せに感じるのだろう。特に大きな鉄板で何かが焼かれたり炒められている時の音。肉しかり。お好み焼きしかり。もんじゃ焼きしかり。「音の後には美味しい幸せが来る」と小さな頃から刷り込まれてきたからなのか。それとも食材が焼ける音は幸せの音として脳の何処かに生まれながらにしてしみこんでいるものなのか。

生の食べ物も大好きである。発酵食品も堪らない。だけど、火の力はやはりすごい。加熱される事でタンパク質や炭水化物が変化する。水分と脂分が適度に抜け、香りが加わり、食感も変化する。旨みが閉じ込められたり、旨みが引き出されたり。加熱しなければ、決して生まれないであろう、素敵な変化がそこにはある。火は偉い。初めて火で調理した人、偉い!

やはり、野火や落雷、噴火などで火事がおき、それで焼かれた動物をおそるおそる食べてみた事から始まったのだろうか。よくよく勇気のある人だ。食べてみて、生も悪くないけど、焼けたのも悪くないなとでも思ったのだろうか。自然の火で始まった調理が、焚き火になり、薪や石焼きになり、鍋が作られ、鉄板が作られ、オーブンやら電子レンジ、電磁調理器まで発明された。人の食べ物に対する探究心はすごい。料理の進化も原始時代に比べたら、すごいものだ。衣がつけられ、ソースが作られ、漬けられ、揚げられ、煮られ、干され、様々な調理方法で食材は料理となる。今では液体窒素なんかまで使われてしまう。でも、やはりシンプルに火を通しただけのものは旨いよなぁ・・・。炭火で焼く肉。魚。そういえば子供の頃、よく河原で焚き火をして買ってきたイワシを木を削って作った串で焼いて食べたっけ。ポルトガルの片田舎の町でもイワシを炭火で焼いておっちゃんがうまそうに食べてたなぁ・・・。

カンっカンッ。ヘラが鉄板にあたって出る小気味のよい音で目が覚める。そうだった。自分は今、仮に一日三食で80まで生きたとしてもあと5万回弱しかない「食べ物が出来上がるのを待つ」という幸せな時間にいるんだった。それも香りと音で演出された幸せの空間で。空想してる場合じゃない。しゃっしゃっ。かっ、カッ。目の前で調理する店員のヘラの使い方、動作に無駄がない。切ったり、混ぜたり、返したり。リズムに乗って、鉄板の上の「食材」がみるみる「料理」へと変化していく。

じゅわじゅわー。ジャージャー。シャァー。ごくり。思わず唾を飲む。程なくして、出来上がった焼きそばが皿に盛られ目の前に置かれた。つやつやで美味しそうだ。んー、いい香り!さ、魔法の粉をかけて頂こう。

富士宮焼きそばの歴史

いわゆる「粉物」と呼ばれるお好み焼きやもんじゃ焼きなどと同じように、手軽な食べ物、おやつとして鉄板焼き店や駄菓子屋などで供されていた「焼きそば」が富士宮焼きそばの始まり。特に学校帰りの子供達の気軽なおやつとして人気があったという。また、家庭でもよく作られ食べられていた。地元の人々に取っては、駄菓子屋のおばちゃんやお母さんが作ってくれた子供の頃の懐かしい味、家庭の味それが「富士宮焼きそば」なのだ。子供達のおやつだった焼きそばだが、勿論大人たちが食べないわけがない。酒宴の〆に、お昼に、軽食に。好きな人は、月に何度どころではなく、週に何度も食べたりもする。日常的に食べるごくごく気軽で美味しくお腹も膨れる食べ物として人々に愛されてきたのだ。当然、地元の人々はいちいち頭に「富士宮」などとつけて呼ぶことはない。「焼きそば」である。「富士宮」の名前が冠される様になったのは、1999年頃から。当時、市の有志が町おこしについて話し合っている際に、地元ならではの食べ物(焼きそばの消費量も日本一であった)という事で着目、富士宮市の町おこしのツールとして「富士宮焼きそば」と命名された。それが次第に注目されるようになり、2001年ゴールデンウィークの第一次ブームを経て、2006年にB-1グランプリに出場、翌年もあわせ二年連続グランプリを取った事で、大変話題となり今ではすっかり有名に。地元の人々のみならず、多くの観光客が訪れ食する、富士宮の定番人気メニューとなったのだ。ちなみにこの富士宮焼きそばの経済効果は、店舗の売り上げ増、麺やその他の材料の売り上げ増、観光客増加等、6年間で217億円と試算されている。まさに驚くべき効果だ。

富士宮焼きそばの特徴

富士宮焼きそばの特徴はコシのある麺。炒める前の生の状態を見ると、通常のものより随分と硬く、見た目もまるでゴムを髣髴とさせる特徴的な色をしている。これは麺の開発に当たり、まだ冷蔵保存、輸送状況の貧弱だった時代に、いかに長持ちさせ、美味しさも損なわないようにと様々な試行錯誤を重ね出来上がったものという。具体的に言うと、一般的な焼きそばが小麦粉と水で練り上げて作った麺を蒸した後茹でるのに対し、富士宮焼きそばの麺は、蒸した後強制的に冷却し、さらにそれを油で表面をコーティングして作られる。油でコーティングする事によって保存性が飛躍的に増すのである。しかし、増すのは保存性だけではない。この製造法は麺に独特のコシも与えるのだ。この先人達の苦労と工夫の賜物こそが、「富士宮焼きそば」を他の追随を許さない独自の食感を持った美味しい焼きそばたらしめ、今では多くの人々に広く認知され愛される品となったのである。さらに富士宮焼きそばの特徴として挙げられるのが肉かすの使用と魔法の粉「ダシ粉」のふりかけ。肉かすに関しては、元々は天かすを使って作っていたものを、市内の老舗「さの萬」が肉かすを使用し始めたのを期に定着していったものという。そして、ダシ粉(削り粉)。通常焼きそばやお好み焼きにかけるのはカツオ節だが、富士宮焼きそばにはこのイワシの粉。店によってはサバ節粉をブレンドしたりさらに青海苔も入っていたりもするが、この「イワシの粉」が富士宮焼きそばを語る上で外せない。終戦直後から食べられていた富士宮焼きそば。値段の高かったカツオ節の代わりにイワシで作った粉を使い始めたという。このダシ粉の香りは、戦前戦後を生き延びてきた歴史の片香、逞しさを内包した香りなのだ。いつしかそれは定着し、今では「富士宮焼きそば」の大事な香り付けとして不可欠な存在となった。それがダシ粉(削り粉)なのである。

富士宮焼きそばのレシピ

家庭でも簡単に作れる富士宮焼きそば。その作り方の一例をご紹介しよう。

用意するもの

野菜・・・キャベツ(その他お好みで長ネギ、もやし、たまねぎなど)

その他の具材・・・お好みで豚ばら肉、イカなどを入れると味、食感ともグレードアップ!

肉かす・・・これも富士宮焼きそばには欠かせない。「肉かす」とは元々はラードを作る際に出来た副産物。ぶたカス、ラードかすなどとも呼ばれる。商品名「焼きそばの友」「天背脂(てんせし)」など。入手可能箇所は同上。麺、肉かす、ソース、ダシ粉などがパックされた便利なセットもある。

ダシ粉(削り粉)・・・イワシ、煮干の削り粉。

ラード(なければサラダオイル)・・・適量。

・・・コシがある麺が富士宮焼きそばの特徴。手に入るならマルモ、曽我めんなど富士宮の麺を。富士宮市内の主なスーパー、道の駅、富士川SAの他最近は都市部の大きなスーパーなら置いてある所も。

富士宮焼きそばの麺

 

作り方

1.フライパンを熱してラードを入れ、5ミリほどに切った肉かすを炒めしっかりと脂を出して香りを引き出す。

2.そこに一口大に切ったキャベツ(1センチ程度の短冊切り)を入れさらに炒める。

3.2を一度皿にあけ、麺を炒める。麺をフライパンにほぐしながら入れ、水を少量(入れすぎるとふにゃふにゃになるので注意)注ぎ、炒める。この際、お湯を加えるとフライパンの温度が下がらずに美味しく出来上がる。

4. 麺が炒まったら、皿にあけておいた肉かすとキャベツを麺の上にかぶせるようにして乗せ、麺を蒸す。

5. 水分が適度になくなったら、ソースを絡めて一気に炒め上げる。皿に盛り、ダシ粉をかけて出来上がり。

塩味の富士宮焼きそばの作り方

フルスクリーンで見る富士宮焼きそば(静岡の食べ物特集Pt.1)

富士宮焼きそば
富士宮焼きそば
富士宮焼きそば

富士宮やきそば おすすめの店

富士宮市内で富士宮焼きそばを提供するお店は、富士宮焼きそば学会のHPに掲載されているだけでも約180軒ほどある。古くから営業している店、新しくできたお店、使用している麺や炒め方、味付けなど、各店各様の特徴があるので、何店か食べ歩いて、好みの店を見つけてみるのもおすすめだ。

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