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森吉山へ「スノーモンスター」に会いに行く! 秋田の冬の絶景

冬の森吉山 冬の秋田

秋田北部の山 森吉山

秋田県の北部に森吉山(もりよしざん)と呼ばれる山があります。標高1454メートルほどの山で、地元の人々には「秋田山」とも呼ばれて親しまれてきたという山です。明治生まれの小説家・随筆家であり登山家であった深田久弥が、標高が選定の基準に少し満たなかったために「百名山」には選ばなかったものの、宮城県と山形県の県境にそびえる「船形山」や、岩手県盛岡市にそびえる「姫神山」とともに「良い山である」と記している山であり、GPSなどがまだなかった江戸時代には「北前船」の航路の目印としても用いられていたともいわれます。

森吉山は、標高こそ1500メートルに満たない山ですが、東北地方にあるため、6月~9月頃には、本州の中部では2000メートルクラスの山でよく見かけるようなチングルマやイワカガミ、キスゲ、ヒナザクラ、シラネアオイといった高山植物・深山の植物を観察できる山としても知られています。また9月の中頃になるとダケカンバやミネカエデの紅葉が始まり、10月下旬頃にかけて色鮮やかなブナやナナカマド、タカネザクラ(ミネザクラ)、ミヤマナラなどの紅葉も楽しめるのです。

そんな森吉山が本領を発揮するのは冬。ゴールデンカムイで一躍その存在が広く一般に知られるようになった「またぎ」の里として知られる「阿仁(あに)」は日本でも有数の「豪雪地帯」として知られますが、その阿仁にそびえる森吉山は当然のごとく冬になると深い雪に覆われます。そして、そんな雪深い森吉山では蔵王、八甲田山と共に「日本三大」の一つにも数えられる巨大な「スノーモンスター」に出会うことができるのです。

森吉山の樹氷 高さ5メートルの「スノーモンスター」

「スノーモンスター」とはその見た目から名づけられた名称でその正体は「樹氷」。「樹木」に雪や氷が付着したのが「樹氷」ですが、「スノーモンスター」はただの「樹氷」ではありません。まさに読んで字のごとく「モンスター」にも見えるような大きくてインパクトのある特別な存在なのです。

木があって雪が深い山であればどこでも「樹氷」は見られると思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、「スノーモンスター」クラスの樹氷となると様々な条件が必要となるのです。

八甲田山のスノーモンスター八甲田山のスノーモンスター

例えばそれは「風」。ある程度の強さの風が一定方向から吹き付けることにより樹氷が形成されていきますが、いくら風量が強くともただの風ではだめで、木に付着して樹氷を形成するための元になる多量の「過冷却水滴」および雪が含まれていることが必要です。また気温が高いとすぐ溶けてしまうので気温が低い(マイナス5度以下といわれます)ことも条件の一つ。そして当然、樹氷の元になる樹木も必要ですが、ブナなどの落葉広葉樹ではなく、着氷・着雪しやすい木として常緑針葉樹であるオオシラビソ(オモリトドマツ)が自生している必要があります。また、雪が多すぎると樹木そのものが雪に埋もれてしまうので、あまりに雪が積もりすぎないというのも大切な条件。

それらの条件を満たしている場所(山)は世界にもまれであり、八甲田山や蔵王連峰のほか八幡平、吾妻山など、東北地方の奥羽山脈の一部エリアに限定されるのです。そして、森吉山はそんな条件を満たしている山の中でも、八甲田山、蔵王連峰と並び、日本三大スノーモンスターを観賞できる地として知られています。

蔵王のスノーモンスター蔵王のスノーモンスター

スノーモンスターそのものの迫力もさることながら、森吉山がスノーモンスターを観賞できる場所として優れているのは、アクセスの手軽さにあります。森吉山には「森吉山阿仁スキー場」があるのですが、そのスキー場のゴンドラを利用することにより、スキーヤーやスノーボーダー、冬山登山者でなくとも手軽に気軽に「スノーモンスター」を鑑賞できる場所まで上がることができるのです。

それでは森吉山の「スノーモンスター」へのアクセスをご紹介しましょう。

森吉山阿仁スキー場へ

まずは森吉山にあるスキー場「森吉山阿仁スキー場」を目指します。「阿仁スキー場」へは大館能代空港からおよそ43キロメートル、車で約1時間ほどです。秋田駅から約1時間50分、盛岡駅からだと2時間半くらいです。いずれにしても、道中雪の深いエリアも多いので運転には十分注意してください。雪道に慣れていない場合には公共機関を利用するのもおススメです。JR奥羽本線の鷹ノ巣駅や大館能代空港などから乗ることができる「森吉山周遊乗合タクシー(要予約)」というのもあるのでチェックしてみてください。角館駅から冬の秋田の絶景を見ながら行くことができる秋田内陸縦貫鉄道でのんびりと行くのもおススメです。秋田内陸縦貫鉄道の秋田内陸線阿仁合駅からだと乗合タクシー(要予約)で20分ほどで阿仁スキー場に到着します。

ちなみに阿仁スキー場は標高が高く、上質のパウダースノーが楽しめるスキー場として知られています。全長2,800メートルや全長1,200メートルのコースなど、こぶや新雪を楽しめるコースもあるので時間的な余裕があるのであればぜひ、一滑りしたいところ。また、スキー場であるために、いわゆる山小屋などとは違い、グッズやお土産コーナーなども充実しており、トイレなどもしっかりしていてレストランでは色々な食事が楽しめるのも、山に慣れていない人にとっては嬉しいポイント。さらにはゴンドラの山頂駅ではスノーシューとストック、それに長靴を無料(樹氷観賞期間限定)で貸してくれるのです。山形県の羽黒山に行った際にも長靴とストックの無料レンタルがあって感動しましたが、雪の深い地域ではこうした無料貸し出しサービスがあると、装備を持たない観光客がふらりと遊びに行ってもとても安心感があってうれしいですね。

「阿仁スキー場」に着いたら駐車場のすぐそばにあるゴンドラ乗り場(レストランやお土産コーナーなども併設)の一階でチケットを購入します。ゴンドラの往復券は大人¥2,000、小人¥900(2023年2月15日現在)。支払いにはペイペイも使えます。ゴンドラの営業時間は通常9:00~16:00となりますが、天候や日照時間等によって変更がある場合や強風の時には(晴天でも)運転休止の場合もありますので、事前にチェックすると安心です。

森吉山 阿仁スキー場

森吉山 阿仁スキー場

森吉山 阿仁スキー場のマスコット 秋田犬の「北斗くん」チケット売り場のすぐ横にいる阿仁スキー場のマスコット 秋田犬の「北斗くん」

阿仁スキー場のゴンドラ乗り場

早速ゴンドラに乗り込みます。ロープウェイなどと異なり、空いていれば待ち時間なくどんどん乗れるのがゴンドラの良いところ。この日はとても空いていたのですぐに乗り込むことができました。スキーやスノーボードの板がない状態で冬のゴンドラに乗るのは初めて。そんなちょっとしたこともドキドキ、ワクワクで楽しいのです。

阿仁スキー場

山頂駅までのゴンドラの所要時間は約20分。

とはいえ、360度美しい冬の絶景が広がっていてまったく飽きません。

阿仁スキー場のゴンドラ

阿仁スキー場のゴンドラ
阿仁スキー場のゴンドラ山頂駅

気が付けばあっという間に山頂駅へ。山頂駅のゴンドラ降り場のすぐわきで、書類に氏名と住所を記入した後、ストックとスノーシューをお借りしました。雪の中でも大丈夫な靴を履き、スパッツ(登山時に靴の中に雪などが入らないようにするもの)を持参していたので長靴は借りませんでしたが、スニーカーやヒールなどの場合は長靴を借りたほうが良いと思います。係りの方が親切にスノーシューを靴のサイズに合わせて調節してくれました。

準備を整え、ストックをもって歩き出します。

山麓駅では比較的青空も見えて天気が良いかなと思っていたのですが、この日は山頂付近は風も強く視界も中々に悪い状態。寒いし顔が痛い!という状況でしたが、それを上回るワクワク感。冬の雪山の高揚感でアドレナリン大サービス。ザクザクと登っていきます。目指すスノーモンスターの鑑賞コース入口まではゴンドラ山頂駅から歩いて5分~10分ほど。鑑賞コースはゆっくり歩くと一周30~40分ほどです。

阿仁スキー場 リフト乗り場

阿仁スキー場のスノーモンスター

阿仁スキー場のスノーモンスター

鑑賞コースの入口の脇に、さっそく巨大で立派なスノーモンスター。その立ち姿は一種異様な雰囲気もありながらも、美しくて素敵です。透明感にあふれるモンスターとでもいいましょうか。寒さもあってどんどんと皮膚の感覚がマヒしながらも心は温かくなっていく不思議な感じです。時折、吹き付ける強烈な風と雪つぶての痛さにしばし顔を覆ったり肩をすくめたりしながら、結局一時間以上うろうろと歩き回ってしまいました。

森吉山のスノーモンスター

森吉山のスノーモンスター

森吉山のスノーモンスター

森吉山のスノーモンスター

森吉山のスノーモンスター

森吉山のスノーモンスター

森吉山スノーモンスターのまとめ

スキーやスノーボードなどのウインタースポーツをする人、もしくは冬山登山をする人ではない一般の観光客でも手軽に見ることのできる、秋田県北部の山「森吉山」の「スノーモンスター」。冬の秋田観光のハイライトの一つになること請け合いの、エキサイティングなスポットです。天候にかなり左右されるので、「運」も大きな要素の一つにはなりますが、ゴンドラが強風で動かない、というケースさえ免れれば、青空の下で見る美しさと迫力が同居した「スノーモンスター」はもちろんのこと、多少天候が悪くとも、それこそ吹きすさぶ雪の中で見る「スノーモンスター」でも、それはとても記憶に残る体験です。むしろ、視界が遮られるほどの強い風雪の中で見るスノーモンスターこそ、自然の脅威と力強さと美しさと不思議さを身をもって体験できる、素晴らしい時間になるかもしれません。(寒さと雪の痛さには耐えなければなりませんが。)

飛ばされてくる雪や氷が目の前で次々と付着しているような状況は、「スノーモンスター」が今まさにどんどん成長していっているようなワクワク感さえ覚えます。吹雪でもなければ(強風だとゴンドラがそもそも動かないのですが、ゴンドラで山頂駅に上がった後、天候が急変することもあり、さっきまで青空が見えていたのにあっという間に吹雪のような状態になることもあります。)、特に雪のない地域に暮らす子供たちにとって最高の体験になりそうです。スノーシューや「わかん」などを履かないとずぼっと埋もれてしまうほどの雪の中を歩き、スノーモンスターの目の前に立つ感動は、ぜひ味わってみていただきたいものです。

肝心の装備ですが、スノーシューやストック、長靴などを貸してくれるとはいえ、完全防寒の恰好が望ましいのは言うまでもありません。特に1月~2月の厳冬期には山頂駅付近は風が吹けば体感温度でマイナス10度以下になることも珍しくなく、表に出ている部分はもちろん手袋をしていても薄い手袋であればあっという間に指先がやられてしまうほど寒い時もあります。バラクラバまでは必要ないにしても、帽子や顔を隠すフードがあると便利ですし、手袋も伸びる手袋などではなく、温かな手袋があると安心です。気温が低く、風の強い日などは、耳なども表に出していると「しもやけ」に近い状況になる可能性もないともいえないので、できるだけ覆ってあると安心です。

ゴンドラの中も比較的寒い(暑かったら外の空気を入れることもできます。)ので、車を降りる段階(もしくはゴンドラに乗る前の段階)で温かな格好になっていると良いでしょう。ぜひ冬の森吉山で特別な体験、してみてくださいね。

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Japan Web Magazine 編集部

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