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柿田川湧水 心洗われる清らかな絶景

柿田川湧水

富士山の雪解け水の息遣い感じる「東洋一の湧水」

透き通った川の底から力強く砂を巻き上げてまるで呼吸をしているかの様に次々に水が湧いてくる
その「わき間」(水の湧き出している場所)に、湧水の息遣いを聞いた気分になった
柿田川湧水

およそ900平方キロメートル(大阪府の約半分の面積)もの表面積を持つ富士山に降る雨や雪は年間約25億トンにも及ぶといいます。これらは玄武岩溶岩と火山砂礫で出来ている富士山の地中に浸み込み、地下水(伏流水)となって流れ、やがて湧き水として地表に現れてくるのです。

「白糸の滝」や、「羽衣の湧水」「忍野八海」「桂川」「芝川」「湧玉池」「上小泉八幡宮の湧水」「出水不動尊の湧水」「楽寿園の小浜池」など、富士山周辺には富士の水が湧き出る場所が沢山あるのですが、中でも最大の湧出量を誇るのがここ「柿田川湧水群」です。

1日に湧き出す水は、実に70万トンとも100万トン(25メートルプール約2000杯分)ともいわれ、その規模は東洋一。数ヶ月から数十年の時をかけて、地中に浸み込み、集まり流れてきた水が、日々こんこんと湧き出しているのです。「四万十川」「長良川」と並ぶ「日本三大清流」にも数えられる「柿田川」はそんな富士の湧水のみで出来上がった川なのです。

湧水のメカニズム

富士山に降った雨や雪は時間をかけてゆっくりと地中に浸み込んでいきます。地中に浸み込んだ水は伏流水となって不透水層(水を通さない層)である粘土や溶岩層の上を通って少しずつ流下していきます。こうして長い年月(数ヶ月から数十年)をかけてしみこみ、集まり、流れた水は、滝や池、湧き水、川となって地表に姿を現すほか、井戸などで汲み上げられて鱒の養殖や工業用水、農業用水などに使われているのです。

湧水のメカニズム(イメージ図)

湧水のメカニズム(イメージ図)

陣馬の滝忍野八海白糸の滝湧玉池

富士山の湧水。左上から時計回りに、陣馬の滝(静岡県富士宮市)、忍野八海(山梨県忍野村)、湧玉池(静岡県富士宮市)、白糸の滝(静岡県富士宮市)。

柿田川の風景

柿田川湧水

柿田川湧水は三島溶岩流の間を通って地表に湧出します。時間をかけて砂礫の中を通り抜けてきた水は、いわば何重もの天然のフィルターをくぐりぬけて来たようなもの。どこまでも澄みきって、透明なのです。

柿田川湧水

年間を通して15度前後の一定した水温と、そのまま飲むことの出来る水質で、柿田川湧水は三島や沼津エリアの市民の飲料水としても利用されています。環境庁の「名水百選」(1985年)、森林文化協会「21世紀に残したい日本の自然百選」(1983年)に認定されているほか、「地質鉱物」枠で国の天然記念物に、また日本の秘境100選にも選ばれているのです。

柿田川湧水

水の湧き出す上流部が柿田川公園として整備され、遊歩道の上から水の湧き上がる様子を見られるようになっています。マンホールのように丸く囲われてある場所(かつての工場の井戸の跡地)のほか、大小様々、川のそこかしこから灰黒色の砂地を巻き上げ、勢い良く水が湧き上がっているのを見ることが出来ます。

かつてこの柿田川流域には、豊富な水を求めて工場が進出。垂れ流された排水で川の水が汚れ、一時は魚も住めないような状態になったのですが、地元有志の活動で次第に水質は復活。カワセミやヤマセミ、アオハダトンボ、ゲンジボタルなども棲息する場所によみがえりました。

現在、この美しさを保つための活動をしているのが、地元住民で組織されている「柿田川湧水保全の会」や、「柿田川みどりのトラスト」「柿田川・東富士の湧水を守る連絡会」など。六月にはホタル鑑賞会、八月の第一週には湧水まつりも行われます。

柿田川湧水
柿田川湧水
柿田川湧水

   

柿田川公園内にある貴船神社柿田川公園内にある貴船神社
岩の隙間から蛇が顔を出した。
柿田川湧水
柿田川湧水
柿田川湧水

これほどまでに美しい風景を見ていると俄かには信じがたいのですが、柿田川湧水群(柿田川公園)は、東西をつなぐ大動脈である東海道、国道1号線沿いにあります。大型トラックの行きかう国道から公園内に一歩足を踏み入れれば、そこは別世界。幹線道路がすぐ近くを通っている事が信じられないほどの溢れんばかりの自然に囲まれており、全長1.2キロメートルほどの柿田川の流域には貴重な生態系が形成されています。

ケヤキ、エノキ、ヤブツバキ、ヤブニッケイ、シイ等の温帯性広葉樹が鬱蒼と生い茂り、トンボや蝶が舞い飛んでいる風景を目にすることができます。

柿田川湧水

朝もやがたちこめる水面は、仙人が出てきそうなほどに幻想的で、そのあえかな白さが透明度の高い水流と木々の緑をさらに美しく照らし出すのです。

ゆらゆらと水流の中で揺れなびく緑は貴重なミシマバイカモを始めとした水草たち。透明度が高い水の中にその形がはっきり見えます。緑の季節には虫たちも多く涼みにやってきます。ミドリシジミ、ミズイロオナガシジミ、アユカケ、アマゴなども棲息しています。

柿田川に生息する生き物たち

カワセミ、ヤマセミ、キセキレイ、ハクセキレイ、ユリカモメ、コサギ、ヒドリガモ、カワウ、マガモ、キンクロハジロなどの鳥類。

アユ、アマゴ、ウグイ、アユカケ(カマキリ)、アブラハヤ、ウツセミカジカ、ルリヨシノボリ、ホトケドジョウ、オイカワ、コイ、ニゴイ、カワムツ、シマヨシノボリ、オオヨシノボリ、スミウキゴリ、ヌマチチブ、ニジマス、ナマズ、ウナギなどの魚類。

サワガニ、モクズガニ、ヒラテテナガエビ、ヌマエビ、ヌカエビ、スジエビ、ヨコエビなどの甲殻類。

ホタルブクロ、ツリフネソウなどの植物や、ミシマバイカモ、エビモ、ヒンジモ、カワヂシャ、コカナダモ、クレソン、オオアカウキクサ、ナガエミクリなどの水生植物。

ゲンジボタル、ベニシジミ、ミドリシジミ、ウラギンシジミ、アオスジアゲハ、アジアイトトンボ、アオハダトンボ、カワトンボ、ヒガシカワトンボ、ヤマサナエ、ダビドサナエ、カワゲラなどの昆虫類。

柿田川湧水

柿田川公園の入り口付近にある第一展望台から見た風景。水が川底から湧き出しているのがはっきりとわかります。

柿田川湧水

第一展望台より少し南に歩くと、第二展望台があります。階段を下りていくと辿り着くその展望台から下を覗きこめるようになっています。深さ数メートルはあるでしょうか。その美しさ。その透明度。あまりの美しさに思わず目を見張り、じっと佇んでしまいます。そのあまりの純度に身体が吸い込まれそうになってしまうほど。水底から滾々と湧き出る水。ここだけ違う湧水ではないかと思うほどの碧い色が神秘的です。このわき間の主のような魚がゆうゆうと泳いでいました。

柿田川湧水

柿田川湧水 まとめ

静岡県駿東郡清水町にある清らかな「柿田川湧水」をご紹介しました。国道を走っていると、すぐそばにこれほどまでに美しい水の流れる清らかな風景が広がっているなんて想像できないほどに、異次元に美しい柿田川。

時速60キロメートルで車の流れに乗って走っていると中々「立ち寄り」「寄り道」というのは面倒だったり、手間だったりするときもありますが、この柿田川はそうしてでも訪れる価値のある場所です。

観光で家族や友人と訪れるのは勿論、日常に疲れた時に一人でふらりと立ち寄ってみるのもおススメです。清らかな水や風景がこれほどまにで人の心を穏やかにしてくれるのかと驚いてしまうほどに、ささくれだってトゲトゲしていたり、かりかりイライラしている心を穏やかに静めてくれる作用があるようです。人は本当はこういう穏やかで清らかな風景を日々目にしながら生きていくことができたらとても幸せなのかもしれません。少なくとも日に一度、数日に一度、一週間に一度でもこんな場所で心を休めることができたら、とても穏やかに暮らせそうな気がしました。

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JAPAN WEB MAGAZINE Tomo Oi

浅草在住。ウニとホヤと山と日本酒をこよなく愛しています。落語好き。

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