昆布〆
公開日: 2008年11月12日 | 最終更新日 2019年6月12日
富山名物 白えび昆布締め
北前船がもたらした富山の郷土料理
昆布消費量日本一の県はどこかご存知だろうか。出汁をとるのに使用するのみならず、炒め物などにして昆布そのものを食べる沖縄県や青森県の昆布消費量も多いのだが、現在の昆布消費量トップの県は富山県だ。全国平均の二倍にせまろうかという消費量だというから驚きだ。
その富山県には昆布〆め(昆布締め)というものがある。昆布〆め(こんぶじめ・こぶじめ)とは読んで字のごとく、魚やエビ等を昆布で〆た(昆布で挟んで暫らく置く)もので、富山に昔から伝わる郷土料理だ。飲食店のみならず、家庭でも広く作られ食されている。使用する魚は白身のタイやヒラメ、スズキの他、ブリ、さす(カジキマグロ)、富山名産のシロエビや甘エビ、ガスエビ(能登エビ)、アオリイカなどなど。
富山県の他、北海道でも昆布〆は食べられており、タラや鮭、はたまたタラコや白子までも昆布〆にして食べる。富山と北海道。1000キロ離れた場所に同じような料理、食べ方が存在するのである。そもそも沖縄に昆布が広まったのも、富山の薬売りが、琉球の生薬や琉球が中国から輸入していた漢方薬の原料と交換するために当時の琉球国に昆布を持ち込んだのがきっかけとも言われている。当然、その昆布は北海道から渡ってきたものだ。まさに海産物を運んだ北前船によって繋がれた昆布を巡る点と点。
現在では飛行機でひとっ飛びだが、北前船は嵐などで沈没や座礁し命を落とすことも少なくなかったという。その分、莫大な富も生み出した。その北前船により、海産物が各地へ広がり、それと共に、様々な料理も双方向的に広がっていき、各地に根付いていったのだ。昆布をほとんど産出しない富山に伝わる「昆布〆」もきっとそんな料理の一つである。命がけで海を渡った当時の人々の夢とロマンの偲ばれる食べ物、それが「昆布〆」なのだ。
昆布〆の効果
乾いた昆布は水分を吸収するという性質を持つ。昆布で〆ることによって、包み込んだ魚介の水分が昆布に吸収されて適度に抜け、保存が効くようになる上に、包んだ魚介の身に昆布の旨みが加わり、さらに食感も増すという、現在の様な冷蔵庫や高速の流通手段のない時代に、人々の智慧が生み出した品なのである。
昆布〆の食べ方
昆布を剥がして、通常の刺身の様に切ってわさび醤油やしょうが醤油で頂く。昆布の旨みが移っているので、醤油をつけずともそのままでも十分美味しい。その他、ご飯の上に乗せて、醤油を一たらし、白ゴマと海苔をふって熱々の出汁をかけてお茶漬けにするのも最高だ。