太田市 さざえ堂
公開日: 2015年6月5日 | 最終更新日 2015年6月22日
さざえ堂(栄螺堂)とは、名前の通り外部や内部構造が「さざえ」の様な不思議な形をしたお堂のことで、主に江戸時代に関東地方から東北地方にかけての地域で多く建築された建物。正式には、三匝堂(さんそうどう)といい、建物の内部がらせん構造の回廊になっており、入り口から傾斜のある廊下を上がっていくと、最上階まで行くことができ、今度はそのまま下っていくと同じ回廊を通らずに一階の出口にまで至ることができる、という構造となっている。回廊には、百観音や三十三観音などが安置してあり、かつて実際に諸国をめぐって三十三観音参りなどをすることが中々叶わない庶民でも、簡単に三十三観音参りができるようになっていた。
福島県会津若松市にあるさざえ堂(旧正宗寺 三匝堂)のように表から見てわかるような形をしているお堂もあれば、群馬県太田市にある曹源寺本堂のさざえ堂(写真)のように外見からはわからないが、内部に入ると回廊となっている建物もある。
曹源寺本堂のさざえ堂は、日本にあるさざえ堂の中でも最大といわれるさざえ堂で、境内には百の霊場の砂が埋められているといい、その上を歩くことにより、「四国三十三観音霊場」「坂東三十三観音霊場」「秩父三十四観音霊場」の計百の日本百観音霊場巡りをした、ということになるのだという。浅草「ほおずき市」の「7月10日にお参りすると、4万6千日お参りしたのと同じご利益がある」というのと同様、江戸時代の人達は、どうも、「~をすれば、~と同じ効果」という風が好きだったようだ。それは、今ほど旅や遠くへの移動が簡単ではなかった、という理由もあるだろうし、粋でせっかちで合理的なものを好んだ江戸時代の一部の人達の気風によるものなのかもしれない。理由はどうあれ、そのおかげで、世界的に見ても特異な構造の建物が出来上がったのかもしれないと思えば、何とも面白いのだ。
◆現存するそのほかの栄螺堂
弘前禅林街の栄螺堂(青森県弘前市)
長禅寺 三世堂(茨城県取手市)
成身院 百体観音堂(埼玉県児玉町)
總持寺(西新井大師)三匝堂(東京都足立区)