岩国城から見る風景
岩国城は、1601年(慶長6年)に、毛利氏家臣で周防岩国領初代領主・吉川広家により築城された城だ。岩国市にある標高約216メートルの横山の山頂に、約8年の月日を費やして築かれたものの、完成からわずか7年後の1615年(元和元年)に出された「一国一城令」により天守が破却され、その後は、「御土居」と呼ばれる山麓の館が岩国の行政の中心となった。現在、山の上に立つ城は、1962年(昭和37年)に、本来天守があった場所よりも南側の場所に復興天守として再建されたもので、高さは約19.5メートル。建物自体は、鉄筋コンクリート構造であることもあり、上階がその下の階よりも大きな造りとなっている南蛮造(唐造)と呼ばれる外観以外は取り立てて特徴はないのだが、この復興天守の展望台からみる景観が特別なのだ。
視点の高さこそ、横山の標高と城の高さを丸々足しても約236メートルと、例えば東京スカイツリーの高さ634メートルの半分にも満たない高さではあるが、眼下には、日本三名橋の一つである「錦帯橋」と、ゆったりと流れゆく錦川、豊かな緑に包まれた家々と岩国の町並みが見え、その向こうには無数の小島が点在する美しい瀬戸内海が広がっている。その雄大かつ穏やかな風景は、日がな一日眺めていても飽きることのなさそうな、まさに「絶景」と呼ぶにふさわしい風景なのだ。