平林寺
公開日: 2011年12月29日 | 最終更新日 2023年6月7日
武蔵野の自然が残る境内
東京都立川市の玉川上水から埼玉県新座市を通り、新河岸川に流れ込む「野火止用水」。高度成長期には水質汚染が進み、暗渠化されるなどして存亡の危機に陥ったものの、その後改善が進んで現在は鯉が泳ぐほどまでに清らかな水に戻ったこの野火止用水は、江戸時代、水の乏しい地域であった現在の新座、志木、朝霞周辺に水を引くための用水路として作られたものです。
中心人物は古今の名相と謳われた、幕府の老中で上水道の工事を取り仕切っていた川越藩主・松平信綱。信綱の命を受けた家臣の安松金右衛門と小畠助左衛門が指揮を取り、玉川用水から分水して作ったこの野火止用水のお陰で周辺地域の開墾が進み、新田開発が盛んに行われたことによって庶民の暮らしは楽になったといいます。それに感謝して、人々はこの野火止用水を、松平信綱の武家官位であった伊豆守にちなみ、「伊豆殿堀」(いずどのぼり)とも呼んだとか。
その野火止用水が境内を流れ、用水の開削功労者である松平信綱や、安松金右衛門、小畠助左衛門の墓所もある寺院が臨済宗妙心寺派の「平林寺」です。
創建は1375年(永和元年)。岩槻城の北西、金重村(今のさいたま市岩槻区)に、大田備州沙弥蘊沢(うんたく)によって臨済宗の建長寺派の寺院として建立されました。その後、大徳寺派を経て妙心寺派の寺院となり、現在の野火止の地に移ったのは1663年(寛文3年)のこと。信綱は、用地開発に伴い、菩提寺の平林寺を岩槻から所領であった野火止村に移転させることを望んだが果たせず、死後、信綱の遺志をうけて子の輝綱が伽藍から墓石に至るまで現在の地に移建し、改葬しました。
約56ヘクタールにも及ぶ広大な敷地の境内には、本堂の周りにスギやヒノキを主体とする針葉樹林、さらにその外側を囲うようにクヌギ、コナラ、イヌシデ、エゴノキを主体とする落葉広葉樹林が生えており、一寺院の境内と思えないほどの豊かな自然に圧倒されます。その様相は、かつて周辺地域を覆っていたであろう、広大な武蔵野の雑木林を彷彿とさせるもの。
境内林のすべてが、武蔵野の面影を残す雑木林として国指定の天然記念物となっています。禅宗様式で本堂まで一直線に配置された総門・山門・仏殿・中門の景観も印象的。総門・山門・仏殿・中門の4棟はいずれも埼玉県指定の有形文化財です。
1664年(寛文4年)建立の木造、茅葺の山門。左右に金剛力士像、楼上に釈迦・文殊・普賢の三尊像及び、十六羅漢像が安置されています。
単層入母屋造の茅葺の仏殿。中央の須弥檀には南北朝時代の釈迦如来坐像と室町時代の阿難・迦葉の三尊像が安置されています。
平林寺へのアクセス
平林寺へは東武東上線の朝霞台駅南口からバス「東久留米駅(北口)行き」又は「福祉センター入口行き」に乗り「平林寺」下車。または志木駅南口からバス「ひばりヶ丘駅(北口)行き」又は「新座営業所行き」に乗り「平林寺」で下車徒歩すぐです。
いずれもバスの乗車時間は約15分ほど。西武池袋線の東久留米駅からもアクセス可能です。北口からバス「朝霞台駅(南口)行き」又は「新座市役所行き」で約15分、「平林寺」下車となります。健脚の方はJR武蔵野線の新座駅から徒歩でも行くことも可能です。時間にして30~40分、距離にして約2.5キロメートル程です。
2月から3月上旬の梅、3月下旬のしだれ桜、5月から6月の新緑、11月中旬から12月上旬の紅葉、12月から3月に時折見られる雪景色と、四季折々の美しさを見せる平林寺。広大な境内をのんびりと散策しながら、コゲラ、エナガ、シジュウカラ、メジロ等30種類以上生息するという野鳥の声に耳を傾けたり、その姿を観察するのもオススメです。
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平林寺(へいりんじ) DATA
- 場所: 埼玉県新座市野火止3-1-1
- 交通(公共交通機関で): 東武東上線「朝霞台駅」南口からバス「東久留米駅(北口)行」又は「福祉センター入口行」で15分、平林寺下車徒歩すぐ。 / 西武池袋線「東久留米駅」北口からバス「朝霞台駅(南口)行」又は「新座市役所行」で15分、平林寺下車徒歩すぐ。 / JR武蔵野線「新座駅」南口より徒歩40分。
- 交通(車で): 東京方面から国道254号線を川越方面へ。交差点「新座警察署前」を左折後、約1km。 / 関越自動車道所沢ICから県道463号線をさいたま市方面へ約1km、英橋インターから国道254号線へ入り、東京(池袋)方面へ約2.5km、交差点「新座警察署前」を右折後約1km。
- 駐車場: あり(160台程度駐車可能、普通車1日500円、2輪車200円)問い合わせ先:048-477-1102 ひるねの森 駐車場
- 時間: 9:00~15:50(入山は15:30まで)
- 休み: 2月1日~末日 12月31日(除夜の鐘の一般開放無) 不定期の入山不可、または入山制限あり
- 料金: 大人(中学生以上)500円 子人(小学生)200円
- 御朱印: 別紙にて用意あり。御朱印帳への記帳、御朱印帳の預かり不可。例年11月~2月の間は、御朱印の用意はありません。
- 問い合わせ: 048-477-1242
平林寺