お金持ちになれる? 光り輝く虫 「タマムシ」
伊豆半島の西側を車で走っていた時の事。
一休みしようとある場所で車をとめ、身体を伸ばしていると、傍らの石に何かが飛んできたのが目に入った。
緑がかったその物体は光を帯びながら輝いている。近づいてみてみると、それは玉虫(タマムシ)だった。
見る角度によって鮮やかに変わるその色はどうだろう。精巧に作られたおもちゃだといわれても納得してしまう金属的な光沢。羽は勿論、足の先まで、微妙な色合いで変化しながら輝いている。
国内におよそ200種いるといわれるタマムシは、古くからその輝きが人々を魅了し、その色は「玉虫色」と呼ばれて珍重されてきた。今からおよそ1400年前に作られたとされる法隆寺の「玉虫厨子」もこのタマムシの羽2600匹分が装飾に用いられている。今のように、人工的な光や色が溢れかえっていなかった時代、この複雑な光沢を持った色が、人々を魅了したであろうことは想像に難くない。
もちろん、当の本人にとっては、光り輝く羽を持って生まれたことは、もしかしたら厄災であったかもしれない。色が変わるものを嫌う鳥類に食べられないようにと、この玉虫色に進化したともされるが、その色の為に、かえって人から狙われてしまったのだから。
その見た目の美しさから、タンスの中に入れておくと着物が増える、お金持ちになる、幸せになるという言い伝えや、鏡台に入れておくと好きな人に会える、という俗信も持つタマムシ。そんな人間達の思いをよそに、1000年を経てもその輝きが失われることはないといわれる羽を広げタマムシは飛んでいく。ひと夏しか生きられない、その命を輝かせながら。