伊豆天城 浄蓮の滝そばのわさび沢
公開日: 2015年7月3日 | 最終更新日 2022年10月14日
刺し身や寿司、蕎麦など、日本料理には欠かせないワサビ。綺麗な水がないと育たないことで知られ、東京近郊ならば奥多摩の沢沿い、長野県の安曇野、島根、山口、広島などの中国山地の渓流沿い、山梨県、奈良県、岩手県などの、ワサビの名産地として知られる場所は、いずれも清らかな水の流れる美しい自然に囲まれているのは自明の理だ。
「わさび漬け」発祥の地とされる静岡県もわさびの名産地。特に、静岡駅から安倍川沿いに30キロメートルほど北上した山間部にある静岡市葵区の有東木(うとうぎ)は、人の手によるわさび栽培が広く普及する最初の地とされている。
その有東木から、わさびの苗を持ち帰り、伊豆でワサビ栽培を始めたのが、天城湯ヶ島(現伊豆市)で山守を務めていた板垣勘四郎という人物。彼は、椎茸栽培を有東木の住民に教えにいった際、ワサビ栽培を天城でも行いたいと思い立ち、ワサビの苗を譲り受けたのだという。
当時、有東木のワサビは、駿府城に居た家康に献上され、その味を絶賛され、わさびの葉の形が徳川家の家紋「葵」に通じるとして幕府より庇護されており、栽培技術を他所へ教えることや、ワサビの苗を外に持ち出すことは禁じられていた。しかし、椎茸栽培を教えてくれた板垣に、有東木の住民は禁を犯して、ワサビの苗を持たせたのであった。
その村人たちの思いを受けて、板垣は努力と研究を重ね、天城でワサビ栽培に成功、今では国内有数の産地となっている。
写真は、そんな天城にある浄蓮の滝のすぐそばで出会ったワサビ沢の様子。一面に広がるわさびの青々とした葉が美しい。
こちらで栽培されているわさびはすぐそばにある売店で購入することができる。わさびの辛味とアイスクリームを一緒に楽しむ「わさびアイス」もおすすめだ。