コラム・雑記・雑感

日本にある老舗の数は世界一?老舗を守るために私たちにできること

老舗って?

よく聞く話しの一つとして、東京では創業100年はおろか創業50年でも「老舗」といわれることがある一方、京都では最低でも創業200年以上でないと「老舗」とはいわない、ということ。

これはもちろん、多少の誇張や人による価値観の相違があるとしても、長い歴史と格式と文化を持つ京都の人々の自信と自負の表れであり、実際に創業何百年の「老舗」がゴロゴロしているという事実から来るものでもあるのでしょう。なんせ「応仁の乱が起きた1467年以降に京都に住み着いた人はよそ者として扱われる」なんていう、嘘かほんとかわからない話しまであるほどで、良くも悪くも長い歴史と伝統を持った京都ならではのエピソードなのかもしれません。


創業1000年以上の京都・今宮神社前の元祖正本家 一文字屋和助(一和)

それはさておき、やはりどんな分野でも「老舗」と呼ばれる店や宿や企業は、特別な印象がありますよね。何十年、何百年と続いてきたという事実は、それだけで信頼感や安心感があり、「歴史がある」=「(場合によっては半分盲目的に)すごい!」と思わされてしまう感覚があります。

辞書で「老舗」という言葉をあらためてみてみると、「先祖代々の家業を受けつぎ、守り、その商売や経営をする上で信頼、信用を得て、繁盛している店や商売のこと」といった表現がされています。具体的に何年以上営業しているとか、創業何年以上という記述はなさそうですが、とにかく、先祖代々の家業を守り次の世代へ受け継いでいっているのが「老舗」であり、商品やサービスの素晴らしさに加え、そこにある「たゆまぬ努力」や「創意工夫」「血と涙の結晶」のようなものが老舗を老舗たらしめているのかもしれません。

金沢の石黒商店江戸時代初期創業といわれる金沢の石黒商店(薬局)

実際に、後継者問題や技術の衰退、文化の廃れ、世の中の流れの中で需要がなくなるなどの理由で、なくなっていってしまう老舗の話しを聞くこともあり、ニュースとしては寂しく残念に思う一方で、老舗を続けていくことの大変さを想像したりもします。

仮に自分がもし何百年も続いている老舗の跡継ぎに生まれたとしたら・・・、それが例え、商売繁盛で近隣や顧客からも信用と信頼があり、何の経営の問題なども抱えていない優良な「老舗」の跡継ぎであったとしても、後継者としての躾や教育を小さな頃からされ、自分が好きな勉強をしたり好きな職業につきたいという願いも却下され、選択の自由はなく期待と重責がある身分であることは、想像以上に大変であろうなと思います。

もちろん、中には別の兄弟が継いでくれるから自分には自由と経済的な余裕があったり、何の職業に就くか悩まなくていいので楽であったり、自分が大きな努力をしなくてもその家に生まれたことで自動的に後からついてくる「家名」という名の名誉や信頼、信用、実績などの恩恵を享受できたりする部分もなくはないのかもしれませんが、そうであっても一般の人が知りえない大変さは多かれ少なかれ必ずあるのだろうと思います。

「老舗の和菓子店」「老舗の呉服屋さん」「老舗の旅館」、音だけ聞くと素敵だなと思いますが、その陰には数えきれない人々の想いや願いや悩みや苦しみなどもあり、それらもすべて内包しての「老舗」だと思えば、やはり凄みさえ感じてしまうのです。

赤福
1707年創業の伊勢・赤福

日本にある老舗の数

ところで、日本や世界には「老舗」とよばれる店や企業は一体どれくらいあるのでしょうか?

ジャンルなどによっても「老舗」と呼ばれる店や企業は異なるかもしれませんが、例えば創業200年以上の企業の数でみてみると、ドイツには800社以上、オランダには200社以上、フランスには200社前後あるそうです。そして我が日本にはというと、その数実に3000社以上。300ではないですよ。3000です。あらためて驚きですね。

創業100年以上の企業であれば、その数は3万以上ともいわれるそうです。

日本の老舗 一覧

バブル崩壊やリーマンショック、そしてコロナと、様々な苦難の中でやむを得ず暖簾を下ろし店をたたんでしまった老舗も多く、とくに2021年~2022年にかけては、例えば出雲大社近くの創業200年以上を誇る和菓子店が閉店するなど、創業数十年~数百年の店が相次いで廃業したというニュースが世間を騒がせましたが、それでもまだ何百、何千という企業やお店や旅館などが数十年~数百年の長きにわたり、経営・商売をし、人々の信頼と信用を勝ち得ているのは素晴らしいことだなと感じます。

老舗を守るためにできること

同時に、「老舗を守り続けていく」企業側、お店側の努力もさることながら、客側である私たちが「老舗を守る」ためにできること、特に和菓子店など生活に比較的密着している老舗店を守るために、できることは何か今一度考えてみなければとも思います。

例えば3回に1回、もしくは5回に1回でも、大きなメーカーの菓子やスイーツを買う代わりに町のお店の菓子やスイーツを購入するなど、一人一人の些細な行動、ちょっとしたことで大きな変化が起きるかもしれません。そこまでしなくても、SNS全盛の現代、情報を発信共有するだけであれば、コストもかかりませんし、時間もほとんどかかりません。でもその「一押し」「一いいね」がお店の存続にとって大きな助けにつながるのであれば、とても意味があると思うのです。

「世の中の需要と供給の関係や、企業努力の不足などで潰れてしまうのは仕方ないこと、自分には関係ない」と切り捨ててしまうのは簡単かもしれないですが、どんなにお金を積んでも決して買うことのできない「時間」「歴史」を持った老舗は、文字通り一朝一夕には作り上げることのできない存在であり、私たちにとってはいわば共通の「宝」のようなもの。そうした存在を守っていくために、私たちにもっとできることはないか、あらためて考えてみる必要があると思うのです。

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JAPAN WEB MAGAZINE HikoZa

温泉と海と甘いものと辛い物を好みます。映画は年に100本ほど。

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