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田島神社

田島神社

海の見える神社

新鮮な海産物が並べられ多くの人で賑わう「呼子の朝市」で知られる佐賀県唐津市呼子町。その呼子の対岸にあるのが加部島(かべしま)だ。面積2.72平方キロメートル、周囲約8キロメートル、人口僅か542人(取材時)の小さな島だ。

この加部島はかつて、壁島とも呼ばれていたといい、その名は周囲を断崖絶壁に囲まれ、まるで壁のように見えるという島の形状に由来するという。玄界灘の荒波から呼子の港を守る壁のようにどっしりと存在する島は、現在では全長727メートルの呼子大橋で本土(呼子)と繋がっている。

地図で見ると、その島の東側、海岸線が大きく入り込み、素人目に見てもいかにも漁港に最適な地形となっている場所がある。実際、そこは加部島漁港と呼ばれる港になっているが、その港に面した斜面に、港を見守るように建っているのが田島神社だ。

田島神社

呼子大橋を渡り、加部島にたどり着いたのはお昼を少し回った頃。対岸の呼子の賑わいとは対照的に、静かでのんびりとした島だ。

穏やかな風、柔らかな光。ネコがてくてくと歩いていく。島のネコは平和だ。餌が豊富にあり、人々も穏健だからだろう。道端には白い花が咲き乱れ、風に揺れている。島の特産は呼子と同じくイカ、それに甘夏。自家用だろうか、庭に植えている家も少なくない。島を走っていてもすれ違う人も車も殆どない。ごくたまにすれ違うのは、白い軽トラック。健康的に日に焼けた頑健そうな親父さんが運転している。日本の港町、日本の島、どこでも見かけるよく似た光景。

目指す田島神社はこんもりと茂る木々を背に、港に面して建っていた。山がちの島ゆえだろうか。車を止める場所があまりない。敷地の脇、ぎりぎりに他の車や人の邪魔にならぬよう駐車して参詣する。車を降りた瞬間、潮を含んだ海の香りが全身をふわり包み込む。

田島神社

やはり海に面した場所にある神社には独特の雰囲気がある。緑に囲まれた杜の中にある(海に面していない場所にある)神社が概して、神秘的で重厚、透明でいながらも地面の力を感じさせられるような力強い雰囲気に満ちているのに対し、目の前に海がある神社には、大らかで開放的で明るく親しみやすい雰囲気がある。景観、環境が開けているのだから当然といえば当然なのだが、なんというのだろう、景色云々ではなく、「気」というか「波」というかそんなものが開けているような感じを受ける。明るく柔らかな威厳に包まれている、とでも言えばいいだろうか。神秘的重厚さに守られた安心感に対し、開放的優しさに慰められる安堵感と言おうか。そこにいるだけで柔らかく優しい気分になるのだ。

この田島神社、創建年代ははっきりとわからないほど古いという。一説には肥前の国(現在の佐賀、長崎一帯)で最古の神社とも言われ、延長5年(927年)にまとめられた延喜式神名帳(えんぎしき じんみょうちょう)にも「肥前国松浦郡 田嶋坐神社」としてその名が記載されている。境内には源頼光が肥前守として都より下向した際に寄進したと伝えられる頼光鳥居もあり、これも佐賀県下最古と言われるものだ。

しかし、そんな格式や歴史の重みを感じさせないほどに、境内は爽やかで明るい雰囲気に包まれている。腕のよい職人が決して威張らずにニコニコしているような、そんな感じだろうか。港に面した門の間に額縁の中の絵の様に海が切り取られて見える。漁船が一艘通り過ぎていく。この後の目的地は決まっていない。さて、これからどこに向おうか。予定のない旅もたまには悪くない。

田島神社
田島神社
田島神社
田島神社
田島神社

   
    

田島神社
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田島神社
田島神社

出征する恋人、大伴狭手彦(おおとものさでひこ)との別れの悲しみのあまりに死んでしまったという長者の娘、佐用姫の悲恋伝説にまつわる神社、佐與姫神社(佐用姫神社)も境内にある。(右側、朱色の社。)恋愛成就の神として名高い。

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海上安全の神としての他、商売繁盛の神として崇敬を受けている。

田島神社

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