古遠部温泉

古遠部温泉

古遠部温泉

碇ヶ関山あいの名湯

青森県平川市は2006年(平成18年)1月1日、南津軽の三町村が合併して誕生した市だ。そのうちの一つが碇ヶ関村。その名の通り、かつて弘前藩が設けた関所があった場所だ。碇ヶ関の町自体は静かで穏やかな所だが、すぐそばに東北道、奥羽本線、羽州街道が通っている事もあり、道の駅いかりがせき「関の庄」などは地元の人及び近隣を訪れる多くの観光客で賑わっている。その碇ヶ関南部の山あいにひっそりとある温泉が温泉好きの間では有名な「古遠部温泉」だ。碇ヶ関からなら、5分ほど羽州街道を南下し、羽州街道と国道282号線が分岐する地点を左方向(国道282号線)へと進みさらに3キロ程、林道の入り口があるのでそこを左折、5~6分進んだ場所にある。

地元の人々にも人気の温泉で、普段は平日でも混雑しているとのことだが、この日はなぜか人っ子一人おらずひっそりと静まり返っていた。人気の秘密は何と言ってもたっぷりとしたそのお湯。毎分800リットルの湧出量を誇るというお湯はかけ流しというよりもむしろ溢れかえっているという印象。さらに成分の強さによるのだろう、浴室の床一面が茶色に染まっているばかりか、外へ流れ出たお湯が建物が建っている右側(正面から見て)の斜面一面をも茶色に染め上げているという有様。当然、白いタオルは一瞬で茶色へと変わる。しかし、この湯のたっぷりとした加減と成分の強さこそが、この温泉の人気の理由なのだ。

古遠部温泉古遠部温泉

車を止めて、ガラガラと入り口の引き戸を開けると館内には気持ちよいひなびた感じが漂っている。古い家の陽だまりの心地よさとでも言おうか。平和でほっとする感じだ。人の気配は感じない。しんとしている。ちょうど人と人が訪れる合間のスポット的時間だったのだろうか、お客どころか、係りの人もおらず、鈴を鳴らして待つ。ほどなくして女性が応対に出た。日帰り入浴をしたいと告げると、料金は280円だという。なんと良心的な値段だろう。お金を支払って、階段を下りて浴室へとむかう。建物は決して新しいとかおしゃれとかではない。むしろそれとは対極をなしている。質実剛健。いたってシンプル。しかし、それがいい。田舎のおばあちゃんちに帰って来た感覚といおうか、なんかほっとするのだ。安心する。それに掃除が行き届いているのだろう。清潔感がある。

    

古遠部温泉古遠部温泉
古遠部温泉

浴室の戸を開けるとやはり誰もいない。ここの日帰り入浴可能な時間は朝9時から夜の8時までと他所と比較すると長い。さらに湯治の為に長期で滞在する客も少なくないので、宿泊したお客でも中々お風呂を独り占めすることは難しいと言われている。なのに、この人気(ひとけ)のない雰囲気。思わず、「注文の多い料理店」を思い出してしまう。裸になって浴室へと入るとそこは日光がさんさんと差し込む明るくて和やかな空間だ。お湯に入る前からすでに気持ちいい。浴槽からあふれたお湯は浴室の床を洪水の様に濡らし、そして壁にあけられた穴から外へと流れ出している。足を踏み入れると、床にあふれ出したお湯でじんと熱い。かけ湯をする。当然熱い。それも結構熱い。何杯か身体にかけてから、浴槽へ。かなり熱いが刺すような感じではない。柔らかく密度がある感じだ。浴槽の端、日光が差し込んでいる場所に行って目をつむる。う~ん極楽。至福。このまま、お湯に溶け込んでいってもいいと思えてしまう瞬間。午後の平和な時間は流れていく。溢れ出るお湯の様にさらさらと。

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Japan Web Magazine 編集部

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