室戸岬灯台と4つの弾痕
公開日: 2015年9月11日 | 最終更新日 2023年8月11日
雲一つない青空と、太平洋の大海原を背に凛々しく立つ真っ白な室戸岬灯台(むろとざきとうだい)。夕方の光を浴びて輝く白亜の灯台は眩いばかりだが、この灯台が本領を発揮するのはもちろん、もう少し暗くなってから。太陽が西の空の彼方へと去り、周囲に夜の帳が下りる頃、今度は太陽の代わりに自らがまばゆい光を放つ存在となって、海を照らし出すのだ。日本一の光達距離「26.5海里(約49キロメートル)」を誇る明るさで、付近の海を行き来する船舶の大切な道しるべとなる。
その明るさが、その存在が、いかにありがたいものか、一度でも真っ暗な夜の海に小さな船で出たことがある人ならわかるだろう。
大海原は、場合によっては昼間の明るい時間帯でも、数百メートル下の海の底に飲み込まれてしまいそうな怖さを感じる時があるが、夜の海の怖さはその比ではない。漆黒の闇の中、波音だけが鳴り響く。薄い船底の木一枚その下は、圧倒的な質量と堆積をもった水の塊。人間はそこにおいて、初めて自分の小ささに気づくのだ。自分の無力さを、これでもかというくらいはっきりと思い知らされるのである。自分を取り囲む世界は闇。そこにおいて自らの存在は、無に等しい。
そんな時、まさに文字通り、暗闇に光が差すのだ。煌々とした直線的な輝きが、進むべき道を標してくれるのだ。その安心感。その存在感。それは例えるならば、どっしりとした父性とおおらかで優しい母性を合わせたようなもの。1899年(明治32年)に初点灯されて以来、室戸崎灯台は、そうして付近を通る船を導いてきた。
ところで、この室戸岬灯台には「弾痕」がある。なぜに、この灯台にそんな物騒なものが?と思われるかもしれない。これは、戦争中に、米軍の空母から飛来した艦載機から機銃掃射を受けた痕だ。今では中々信じがたいことだが、室戸岬に立つ灯台に機銃が向けられた、そんな時代があった。
それから70年。白亜の灯台は、今日も沖合をゆく船の為に光を放ち続ける。
室戸岬灯台 詳細データ
室戸岬灯台(むろとみさきとうだい) DATA
- 場所: 高知県室戸市室戸岬町
- 交通(公共交通機関で): 土佐くろしお鉄道奈半利駅下車、高知東部交通バス「室戸世界ジオパークセンター・甲浦行き」に乗換え約50分「室戸岬」下車 徒歩約20~30分。
- 交通(車で): 高知自動車道南国ICから約2時間
- 駐車場: あり 無料
- 期間: 通年
- 時間: 見学自由(外観)
- 休み: なし
- 料金: 無料
- 問い合わせ: 室戸市観光協会 0887-22-0574