伊那市高遠町の春の風景
公開日: 2015年4月25日 | 最終更新日 2022年10月14日
国道152号線、通称「杖突街道」は、茅野から高遠へ抜ける道で、高遠町と茅野市の境界にある峠「杖突峠(つえつきとうげ)」を越えていく。現在は道路も舗装されて、車で簡単に行かれてしまうが、直線距離で3kmほどでありながら高低差400mを越える標高差、その傾斜とくねくね具合は、「杖突峠」という名の通り、その昔は杖を突いてようやく山を越えていくような大変な道であったろうことは想像に難くない。
とはいいながら、「杖突峠」とはその大変さを表したものではなく、当地で古くからおこなわれている神降しの神事で、降りてきた神が始めに杖を突くのがこの峠であることからその名が起こったというから、面白い。ちなみに「杖突峠」は信州三景観の一つにも数えられているほど眺望がよく、諏訪湖、八ヶ岳を始め、天気が良ければ、美ヶ原、霧ヶ峰、北アルプスの山々などが一望できる。
「杖突峠」のくねくね道を越えてしまえば、その先の高遠方面へは山間を抜けていく道ながらも比較的平たんで、所々に蔵があるような家が点在する美しい南信州の風景の中、走りやすい道が続く。
今日の写真は、そんな杖突街道のすぐそばで出会った風景。春のきらきらとまぶしい陽光の中、立ち並ぶ石碑と茅葺の建物に美しい桜が文字通り華を添えていた。何とも穏やかで優しい風景。100年前、200年前、300年前にも、同じような風景を見ていた人がいたのかもしれないことを思うと、「時」の不思議を感じずにはいられない。