室戸岬灯台と4つの弾痕

室戸岬灯台

雲一つない青空と、太平洋の大海原を背に凛々しく立つ真っ白な室戸岬灯台(むろとざきとうだい)。夕方の光を浴びて輝く白亜の灯台は眩いばかりだが、この灯台が本領を発揮するのはもちろん、もう少し暗くなってから。太陽が西の空の彼方へと去り、周囲に夜の帳が下りる頃、今度は太陽の代わりに自らがまばゆい光を放つ存在となって、海を照らし出すのだ。日本一の光達距離26.5海里(約49km)を誇る明るさで、付近の海を行き来する船の大切な道しるべとなる。

その明るさが、その存在が、いかにありがたいものか、一度でも真っ暗な夜の海に小さな船で出たことがある人ならわかるだろう。

大海原は、場合によっては昼間の明るい時間帯でも、数百メートル下の海の底に飲み込まれてしまいそうな怖さを感じる時があるが、夜の海の怖さはその比ではない。漆黒の闇の中、波音だけが鳴り響く。薄い船底の木一枚その下は、圧倒的な質量と堆積をもった水の塊。人間はそこにおいて、初めて自分の小ささに気づくのだ。自分の無力さを、これでもかというくらいはっきりと思い知らされるのである。自分を取り囲む世界は闇。そこにおいて自らの存在は、無に等しい。

そんな時、まさに文字通り、暗闇に光が差すのだ。煌々とした直線的な輝きが、進むべき道を標してくれるのだ。その安心感。その存在感。それは例えるならば、どっしりとした父性とおおらかで優しい母性を合わせたようなもの。1899年(明治32年)に初点灯されて以来、室戸崎灯台は、そうして付近を通る船を導いてきた。

ところでこの室戸岬灯台には弾痕がある。なぜに、この灯台にそんな物騒なものが?と思われるかもしれない。これは、戦争中に、米軍の空母から飛来した艦載機から機銃掃射を受けた痕だ。今では中々信じがたいことだが、室戸岬に立つ灯台に機銃が向けられた、そんな時代があった。

それから70年。白亜の灯台は、今日も沖合をゆく船の為に光を放ち続ける。

撮影場所

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