北海道の郷土料理

北海道の料理・食文化

「食」、特に「郷土料理」という観点から見ると、北海道は日本のその他の地域と比較すると些か特殊なところだ。現在の北海道はその大部分が、元々アイヌの人々が生活していた地に後から本州などの外の人々が入って出来上がった所。ゆえに、北海道内で数百年以上に渡って食され、伝えられてきた固有の食文化、郷土料理やそのルーツという意味では厳密にはアイヌの人々の料理となる。鮭や鹿などを使った「オハウ」という汁物、サヨと呼ばれる粥、ラタシケプという野草の煮物や和え物、そして干し肉や干し魚など。今の北海道料理はそれに「江戸時代中頃より松前や函館を基点に次第に増えた日本各地から移ってきた人々の、それぞれの出身地域の様々な食文化」が融合したもの、ミクスチャーという事になる。

チェプオハウ

「チェプオハウ(魚の塩汁)」

サッチェプ

「サッチェプ(干し鮭)」

アイヌの食文化と、道外からやってきた各人、各家庭の出身地域の食文化、食習慣、郷土料理、それらが次第に合わさり、今の北海道の食文化、郷土料理が出来上がったという訳。北海道の郷土料理に、アイヌ語の名がついた食べ物や、「日本各地の郷土料理に似ているもの」が数多くあるのもそういった理由だ。

ちなみに「日本各地から入ったそれぞれの郷土の文化」に関して、非常に興味深いのは、現在も出身地に住む人々の間よりも北海道に渡った人々の間で、それらの文化、習慣がより濃く息づき、今に至るまで残っているケースも少なくないということ。現在の日本に住む人々よりも、南米などに移り住んだ移民の人々のほうが、日本伝統の文化をより大切にしている傾向がある、というのに似ているのかもしれない。

自然の中に暮らし、自然と共に生きてきたアイヌの人々の伝統的な食文化と、日本各地の多種多様な食文化が様々に混ざりあって出来上がった魅力的な北海道の食文化。例えば、上記のアイヌの汁料理「オハウ」がその原点といわれる三平汁や石狩鍋。ルイベに代表される名前も受け継いでいる食べ物。また例えば、東北各地にも見られる飯寿司。シソ巻きや各種の漬物など。枚挙に暇が無いほどに、様々に交じり合い、交差し、影響しあって出来上がっているのが今の北海道の郷土料理なのだ。海に囲まれた広い大地、豊かな食資源に恵まれている北海道の郷土料理、家庭料理、そして北海道らしさ溢れるご当地グルメの数々。その一端を見てみよう。

北海道の料理の素材

近海で取れる豊富なにしんやしゃけ、タラ、カニ、昆布等の魚介類、そして筋子やたらこ、数の子、塩引き鮭等の魚介加工品と、肥沃な大地で育つ野菜や豆類などを使った料理が北海道の食事の真髄。干し魚や汁物などアイヌの人々の食文化と、日本各地から開墾などで入ってきた「内地」(北海道の人は主に北海道外の人をこう呼ぶ)の食文化、及び明治に外国からやってきた人々の洋食文化が入り混じって、豊かな食文化を形成している。主な名産品は、昆布、ジャガイモ、鮭、ウニ、ホタテ、とうもろこしや米、コムギ等の穀物豆類、鮭、すじこ、毛がに、花咲きがに、タラバガニ、ほっき貝、タラ、ホッケ、ししゃも、コマイなどなど。

鮭貝類
タラバガニ毛ガニ
笹竹

三平汁

三平汁

塩鮭の身や頭、アラと大根やニンジン、ジャガイモなどの野菜がたっぷり入った汁物が三平汁だ。しっかりと昆布でひいた出汁に鮭の旨みと野菜の甘みが溶け出して、じんわりほっこりと温まる汁物になる。汁の塩味も基本、鮭から滲みだしたものだ。見た目も荒々しく、作り方もざっかけながら、深みのある味わいが特徴だ。今では鮭を使う家庭が多いが、昔は鰊の糠漬けがよく使われていた。秋から冬にかけて食べられる事の多い「北海道の海の幸と大地の恵みがたっぷり詰まった汁物」それが三平汁なのだ。

ウニ

北海道のウニ

ご存知の様に、ウニは日本各地の海で獲れ、食べられている。アカウニ、ムラサキウニ、バフンウニなど地域によってよく獲れるウニも違い、勿論、どこのウニのどの種類もそれぞれ美味しいが、「ウニ」といえばやはり北海道産をイメージする人も少なくないだろう。ウニは意外に雑食性で与えれば野菜なども食べてしまうというが、やはり海藻、特に昆布が大好物。そう、出汁をとる為の昆布を沢山食べてウニは育つのだ。良質の昆布を産出する北海道のウニが美味しくないわけがない。それは、羅臼や利尻、日高、積丹、恵山などの名だたる昆布の名産地が、ウニの名産地でもあることからも判るだろう。北海道に生息するうには主に「エゾバフンウニ」と「ムラサキウニ」。どちらが美味しいかは好みによって分かれるところだ。鮮度がよく質の良いものならあまり間違いは無いが、出来れば産地にまでこだわりたい。

ウニウニウニ
北海道のウニ

北海道の市場では塩水に漬けただけの「塩水ウニ」も売られている。ミョウバンなど余計なものが一切入っていないその味は、「幸せ」そのもの。

ウニ丼

北海道のウニ丼

そのウニを惜しげもなくたっぷりとご飯にのせて食べるのが、うに丼。ウニをそのまま醤油をつけて食べても美味しいが、ほかほかご飯にのせることで、少しだけ温まってとろみを増したウニの甘みがご飯の甘みと合わさり波状攻撃のように口の中に押し寄せる。ウニとご飯を噛み締めながら、知らず知らず幸せまでも噛み締めている瞬間なのだ。

ウニご飯

ウニご飯

さらに、その生で食べても美味しいウニを贅沢にもたっぷりと炊いて、ご飯にのせて食べるのがウニご飯。これも全国各地に同様の食べ方があるが、北海道のウニで作るウニご飯も素晴らしい。生とは又異なる食感と甘み、ぽってりとした食べ応え。あっという間に器は空になること必至だ。

カスベ(かすべ・カスペ)

カスベは「ガンギエイ」というエイの一種。地域によっては「かすぺ(Kasupe)」とも呼ぶ。北海道ではこのヒレが普通のスーパーに売られており、カレイと同じように煮付けて食べる。カスベは北海道以外でも青森、秋田、山形などでも食べられていて、それ以外の地域でも徐々にスーパーなどで見かけることも多くなってきたが、まだまだあまり馴染みのない素材だろう。「エイ」だけに、時に独特の香りが強い場合もあるが、ぷりぷり、とろとろっとした食感で、骨(軟骨)まで食べられるので、大好物の人も多い。そのとろけるような食感は、まさにコラーゲンたっぷり、という感じなのだ。カスベは煮付け以外にも新鮮なものはお刺身として、またから揚げや和え物、煮こごり、みそ焼きなどにしても食べる。北海道にはカズベの専門店もあるほどだ。

カスベ(カスペ)
カスベの煮付け

カスペの煮付け

シソ巻き

シソ巻

シソ巻きは味噌をシソの葉で巻き、揚げたり焼いたりしたもの。北海道の他、福島県、宮城県、岩手県などの東北地方および静岡県西部でよく食べられている食べ物だ。北海道ではエンドウを味噌で炒め、それをシソで巻いて揚げることが多い。味噌の香ばしさと甘み、シソの香りが合わさってご飯にも酒にも合う一品となる。

   

じゃがバター

じゃがバター

    

ジャガイモの産地であり、酪農王国でもある北海道の、まさに北海道らしい食べ物じゃがバター。その名の通り、ジャガイモにバターをのせただけのシンプルな食べ物だが、これがすこぶる美味い。地域によっては、大鍋に湯を沸かし、大量のじゃが芋を茹で、それにバターをつけて昼食とする。バターの代わりに、イカの塩辛をのせても美味い。じゃがバターは、今では全国各地の夜店などで普通に見かける食べ物で、珍しくもなんともないが、北海道で食べるじゃがバターはまた格別なのである。ちなみに、現在のようなバターの製造が日本で始まったのは、明治時代の頃。明治5年(1872)に東京麻布の北海道開拓第3官園実習農場で試験的に作られたのが最初と言われる。初期の頃の日本人はバターに馴染めず、ひどい場合には匂いを嗅いだだけでもどしてしまった、という話もあるが、明治初期に外国から沢山やって来たお抱え外国人らの食習慣は次第に庶民の間にも広まり、バターもまた市民権を得ていったのだろう。やがて、北海道が一大生産拠点となるのだ。

いかゴロルイベ

イカごろのルイベ

しゃりっと刺激的な冷たさが口の中にやって来て数秒後、口の中一杯に広がるイカの身のぽってりした甘みとゴロ(内臓)のこってりした旨み。食べる前に想像した生臭さは殆ど無く、むしろ塩辛よりもいっそ食べやすい。普段、刺身や塩辛で食べるのとは一味も二味も違う、その舌触り、食べ応え。口の中に入ったゴロとイカの身が体温でじわり融けて、旨みがあふれ出す。「冷たさ」も食感の大事な要素の一つだとしみじみ気づかされる瞬間だ。

「ルイベ」とは通常、鮭やマスを生のまま冷凍し、完全に解凍する前に食べる食べ物だが、イカごろルイベとは、まさに読んで字のごとく、イカのゴロ(内臓)を凍らせて作るルイベだ。鮮度が落ちたから冷凍するのではない。新鮮なイカでこそ作られる。内臓が凍らされることにより、水分が抜けて旨みがぎゅっと凝縮される。酒飲みにとっては、これは、酒がないとなんとも始まらない。ワサビ醤油にちょんとつけてその濃厚な旨みを味わい、辛口の酒をきゅっとやる、その瞬間、ほかに何がいるだろうか。

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イカの刺身

イカの刺身
イカの刺身

日本ではアオリイカ、ヤリイカ、スミイカ、剣先イカ、ホタルイカ、モンゴイカなど様々な種類のイカが獲れ、また食されているが、食用にされるイカの7割以上はスルメイカ。そのスルメイカの一大産地が北海道の近海だ。焼いたり、乾燥させたり、煮たりと多種多様に調理されるが、やはりダイレクトにその美味しさを堪能しようと思ったら、刺身だろう。北海道以外の地域ではワサビ醤油で食べる場所が多いが、北海道では生姜醤油で食べるのが主流。獲れてから一日経った少し柔らかくなったイカの刺身を好む人もいるが、やはり産地でなくては中々食べる事のできない獲れたての鮮度抜群のイカの刺身、特にその日の朝獲れたイカをその日の朝食で食べることができたなら、その透き通ったこりこりっとした身のえもいわれぬ甘みの応酬に身もだえするに違いない。

イカソーメン

イカソーメン

イカの身を長めに切り、醤油や麺ツユにつけてまるでソーメンのように食べるのがイカソーメン。新鮮なイカが沢山獲れる北海道、特に函館の名物だ。ソーメンとは呼ぶものの、実際多くは細身のうどんほどの太さだが、通常の刺身とはまた一味違った歯ごたえと喉越し、つるりとしたその味わいは中々乙なもの。

イカ飯

イカ飯

米の不足していた戦時中に「少しでも米を節約することができて尚且つ美味しく食べられるもの」を、という事で当時大豊漁だったスルメイカを使って作る料理として考案された、という逸話を持つ「イカ飯」は北海道の渡島地方の名物として有名な食べ物。ゲソ(足)を外したイカの胴体に、米とゲソを刻んだものなどを詰めて楊枝で止め、醤油や酒などと共に炊き込んで作る。イカの胴内でふっくらと炊き上がったご飯にイカの旨みと調味料が浸み込んで、何とも言えぬ美味しさだ。北海道以外では、青森などでも比較的良く食べられている。おかずにも、おやつにもぴったりな料理、それが「イカ飯」なのだ。

酢イカ

酢イカ

秋も終わりの頃の肉厚のイカを使い、中にニンジンなどの野菜をつめ、一煮立ちさせた酢につける保存食。柔らかな酸味とイカの旨みが交じり合って、くせになる味だ。お酒にとてもよく合う。

松前漬

松前漬

北海道以外でもこれを特にお正月用の一品として食べる地域も少なくは無いだろう、するめや昆布を細切りにし、数の子を入れて醤油と酒で漬け込んだ、漬物と呼ぶには少し豪華で贅沢な食べ物が「松前漬け」だ。その名の通り、北海道の渡島半島の西部、松前藩(現在の松前)発祥の郷土料理。鰊が豊富に取れ、数の子が手に入りやすかった地ならではの品だ。スルメと昆布の旨み、昆布から出た粘り気が醤油や酒と絶妙に相まって、数の子にとろり絡み合い、風味豊かで品のある、かつ安心できる美味しさを醸し出す、酒のつまみにもごはんのおかずにもぴったりの品となる。勿論、買うのもよいが、材料が手に入ったなら是非一度手作りする事をおすすめする。子供の時分によく作るのを手伝わされた事を思い出してみても、松前漬けの作り方は非常に簡単だからだ。スルメイカと昆布を乾燥した状態のまま、適宜(好みの細さに)細切りにし、そこにこれまた適宜塩抜きした数の子を入れ、醤油と煮切った酒を入れるだけ。後は冷蔵庫に保管して、日に何度かかき混ぜれば、3,4日後から一週間後くらいには熟れて食べ頃となる。ニンジンや生姜などを入れる地域もあるが、本来の松前漬けといえば、「スルメイカと昆布と数の子」。このトリオが織り成す味の舞踊こそが本場北海道松前の「松前漬け」なのだ。

子持ちのニシン

腹にたっぷり数の子が詰まった鰊

身欠きにしん

身欠きにしん

氷頭なます(ひずなます)

氷頭なます

氷頭なます。馴染みのない人には、これは一体なんだ、と想像もつかないだろう。字面を見ても、音を聞いても、実物を見ても何か判明しないかもしれない。氷頭(ひず)とは、鮭の頭の先っぽ、鼻先から目にかけての部分の軟骨のことだ。こりこりっとした独特の食感と、氷の様な透き通った見た目を持つ珍味。北海道以外でも、鮭の獲れる青森県や新潟県、および岩手県の沿岸部で食べられている。なますの他、片栗粉をまぶして揚げても美味しい。

ホタテの刺身

ホタテの刺身
ホタテの刺身

煮ても焼いても美味しいホタテだがやはり刺身で味わうあの甘さは格別だ。北海道のものは貝柱も大きく身がぷりぷりとして、食べ応えがある。サロマ湖や岩内湾、内浦湾などで養殖されているほか、北海道道東では小型の底引き網で捕獲もされている。

ホタテの干貝柱

ホタテの干貝柱

青森と並ぶ帆立貝の一大産地である北海道は、干貝柱の生産も盛ん。刺身で食べられる新鮮なホタテのプリッとした大粒の貝柱を天日でじっくり手間隙かけて乾燥させて、ホタテの干貝柱は出来上がる。天日に干される事で、旨みがぐっと増した帆立の貝柱はそのままを少しずつほぐして食べれば、もう堪らない酒のつまみとなる。じわりと滲みだす天然の旨み成分。口の中に広がる潮の香り。「天日で乾燥させる工程」を調理法の一つと考えるならば、これほどまでにシンプルながらも自然の旨みを引き出す調理法も無いだろう。まさに自然の恵みに満ち満ちた品だ。中華料理でも干貝柱は干アワビなどに次ぐ高級な素材の一つでもあるのはご存知の通り。水に戻してやれば、戻し汁は極上のスープとなる。

帆立のフライ

北海道の帆立の名産地の一つ「猿払」の帆立のフライ

帆立の刺身

猿払産の帆立の刺身

ホッケ(ほっけ)

ホッケ

今や、道外の居酒屋でも普通に見かけるようになったホッケだが、やはり本場北海道で味わうホッケは最高だ。しっかりと脂がのり、独特の旨み甘みを備え持つ。三十センチはあろうかと思われるホッケがどんと運ばれてくるとそれだけで感動してしまうほどだ。味にうるさい沿岸部の漁師は、岬一つ越えただけで獲れるホッケの味が違うという。新鮮で脂ののったホッケは焼いて食べるほかに、煮付け、また刺身などにしても食べる。

ホッケホッケ

炉端焼き

炉端焼き

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ゴッコ汁(ごっこじる)

ゴッコ汁

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飯寿司・飯鮓

飯寿司

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めんめ

メンメ

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そい・北釧サバ

そい・北釧サバ

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北海道のラーメン

広大な面積を持つ北海道には札幌の味噌ラーメン、函館の塩ラーメン、旭川の醤油ラーメンを筆頭に、釧路、上川など各地にそれぞれ特色のあるラーメンがある。さらには毛ガニが一杯どんと入ったものやタラバガニの足が丼の上に横たわって出てくるものなど、産地ならではのご当地ラーメンも。

カニ入りラーメン
カニ入りラーメン
旭川ラーメン
塩ラーメン
カニラーメン
サッポロ味噌ラーメン
旭川ラーメン
塩ラーメン

札幌ラーメン | 旭川ラーメン | 函館ラーメン | 知床のカニラーメン

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